机の上ではコンパクト、そしてCPU性能はトップクラス――現代のスリムPC「LUV MACHINES Slim」レビュー(1/3 ページ)

» 2019年01月25日 06時00分 公開
[石川ひさよしITmedia]

 マウスコンピューターのLUV MACHINESといえば、スタンダードなデスクトップPCのラインアップだ。その中でも今回はSlimシリーズにフォーカスを当てる。

 スリムデスクトップPCは、家庭向けよりもビジネス寄りのイメージが強いが、設置面積が小さくデスクの上に置いても勉強や仕事をするスペースが確保できるのがメリットだ。また、ノートPCに比べてCPUの選択肢やメモリスロットの数、拡張性などで優位性がある。コストパフォーマンスを考慮すれば家庭内のプライベートPCとしてなかなか魅力のあるフォームファクターだ。ここではLUV MACHINES Slimシリーズの「LM-iHS430HD」を評価し、スリムPCの魅力に迫る。

統合GPUを利用するのがスタンダードな使い方

 まずはスリムPCの立ち位置をもう少し明確にしておこう。デスクトップPCにおいて、主流と言えばミドルタワーやミニタワーなど「タワー」モデルである。タワーモデルの魅力は、標準規格の拡張カードを搭載できることによる拡張性の高さがまず1つ。例えば、グラフィックスカードだ。

 標準的なグラフィックスカードは、いわゆる「フルハイト」と呼ばれる高さと、2スロット分の厚みのあるクーラーを搭載する。そのため、強力なGPUを使うなら一般的にはタワーモデルが適している。そしてグラフィックスカードを装着した際に、その他に何本カードが搭載できるのか、という余裕がミドルタワーかミニタワーかで変わってくる。ここがスリムPCと大きく異なる点だ。

マウスコンピューターのLUV MACHINES Slim LM-iHS430HD。この形状はスリムタワー、スリムブックなどと呼ばれているが、この記事ではスリムとして統一する

 一方、スリムPCに搭載できる拡張カードは、主流で言えば、フルハイトカードよりも高さを抑えたロープロファイルと呼ばれるフォームファクターになる。ロープロファイルでは、特にグラフィックスカードの選択肢が大きく制限され、熱量の小さいローエンド〜ミドルレンジGPUしか製品化されていない。

 その他のインタフェースカードはそれなりに選択肢も豊富だが、グラフィックスカードだけはこうした制限があり、GPUがPCのパフォーマンスに大きく関わるコンポーネントであることから、あらかじめスリムPCの用途を明確にしておく必要はある。例えば、最新ゲームタイトルを高解像度で楽しみたい、という用途には向かないということだ。

背面の拡張カードのブラケットを見れば一目瞭然、スリムな幅に合わせたロープロファイル仕様となっている。ただしスロットは4本あるので、意外と拡張性はある

 とはいえ、スリムPCであってもロープロファイルのグラフィックスカードなら搭載できる。マウスコンピューターの「iGS430」シリーズは、スリムPCながらGeForce GTX 1050を搭載したモデルが用意されており、比較的負荷の軽いゲームなら1920×1080ピクセルの高画質でプレイするポテンシャルを持つ。ゲームも楽しみたいと考えている方は、そちらを検討するとよい。

 ただ、今回触れるのはグラフィックスカードを搭載しないモデル、iHS430シリーズだ。スリムPCとしてはこちらのタイプが一般的で、つまりCPUに内蔵されたGPU機能を利用する、非ゲーム用途が中心のPCになる。

CPUは最新世代のCore i7。ストレージ系は驚きの拡張性

 LM-iHS430HDの第一のポイントはCPUだ。搭載するCore i7-9700Kは現在最新の第9世代Core。同世代ではCore i9が登場したためCore i7はトップから1つ下のグレードとなるが、CPUコア数は8コアに増強されており、ハイエンドである点は変わらない。8コア・8スレッド対応となり、Hyper-Threadingには対応していないが、第7世代までのCore i7が4コア・8スレッドだった点を考えれば、実コア数で8コアに増強された分、パフォーマンスが向上している。その向上幅は後ほどベンチマークで紹介しよう。

CPU-Zから見たCore i7-9700K(画面=左)とタスクマネージャー上から見た8コア・8スレッド動作(画面=右)

 なお、本製品は統合GPU機能を利用するのでそちらにも触れておこう。GPU機能の名称はIntel UHD Graphics 630である。これ自体は第7世代のCore i7-7700Kから変わっていないが、当時と比べると統合GPUが利用するメインメモリがDDR4-2400からDDR4-2666へとサポート上限が引き上げられており、またGPUクロック自体も引き上げられているので、CPUコア側ほどではないがパフォーマンスが向上している。

GPU-Zから見た統合GPU機能のIntel UHD Graphics 630。注意して見てほしいのはメモリの1200MHz、バス幅の64bitという点。LM-iHS430HDのベースモデルは価格メリットも重視しており、メインメモリがサポート上限から1つ下のDDR4-2400で、シングルチャンネルモードとなっている

 2つ目のポイントは光学ドライブを搭載しているところだろう。昨今のPCではそこまで重視されなくなってきているが、旧PCでアプリケーションのインストールに光学ドライブを用いていた人は、搭載されていた方が便利なはずだ。

前面、上寄りにはフロントインタフェースとスリム光学ドライブ(DVDスーパーマルチ)を搭載する

 そして最後のポイントは(ポイントになるのか微妙なところだが)、HDD搭載モデルである点だ。筆者の立場から正直に言わせてもらえば、もはやどのような用途であってもメインのストレージはSSDを選ぶべきである。ただ、iHS430シリーズはスリムPCのコンパクトケースに3.5インチHDDベイを搭載している。

 実際には、iHS430シリーズもSSDを搭載でき、HDDとのデュアルドライブも選べるので、そうした点は購入時にモデルを選んでいただくとして、HDDのみのモデルでより低価格に購入できるといった意味で評価いただきたい。

内部、前方下寄りには3.5インチシャドーベイが2基ある。1基は標準搭載のもので使用済み

 iHS430シリーズのストレージは、HDDモデルのLM-iHS430HDや「LM-iHS430SD」、SSD搭載モデルとして「LM-iHS430SD-S2」、SSD+HDD搭載モデル「LM-iHS430HD-SH2」と、選択肢が用意されている。これに加えて個々のモデルからカスタマイズも可能だ。

 LM-iHS430HDのストレージ関連のカスタマイズ項目を見ると、最大でM.2 NVMe SSD×2基(最大1TB×2基)、SSD×1基(最大2TB)、HDD×1基(最大8TB)といった組み合わせができる。そして内部を見ると、M.2スロットが2基、2.5インチシャドーベイが2基、3.5インチシャドーベイが2基確認できる。

 これは、昨今シャドーベイの数が減る傾向にある自作PC用ケースのトレンドに対して、それにあらがうかのように豊富だ。NASや外付けHDDにデータを逃がすのではなく、あくまでもPC本体内にストレージを集約したいといった方は、意外と本製品がマッチしているのかもしれない。

内部を見ると、光学ドライブと並列に2.5インチシャドーベイが2基ある
マザーボード上にもM.2スロットが2本あり、ここにもSSDを搭載できることを考えると、ストレージの拡張性はかなり充実している
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