復活の「iPhone SE」が2020年に最も売れるiPhoneになる理由本田雅一のクロスオーバーデジタル

» 2020年04月16日 00時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 米Appleは2016年に発売していた「iPhone SE」の第2世代モデルを4月15日(現地時間)に発表した。4月17日に予約受付を開始し、24日に消費者の手元に届く予定だ。米国での価格は第1世代モデルと同じ399ドルから。カラーはブラック、ホワイト、(PRODUCT)REDの3色展開で、日本での価格は64GB版が4万4800円からと、大きく5万円を割り込む価格に設定された。

iphonese 4月24日発売の第2世代「iPhone SE」。カラーはブラック、ホワイト、(PRODUCT)REDの3色

 本体とケースの価格は以下の通りだ(いずれも税別)。

  • 64GB:4万4800円
  • 128GB:4万9800円
  • 256GB:6万800円
  • レザーケース:5800円
  • シリコンケース:3800円

 今回の発表で一番驚かされたのは、新しいSEが「廉価版」ではなかったことだ。廉価版には、体験の質を落とすなどの妥協の意味が少なからず含まれていると感じる人が多いだろう。今回は事前に「iPhone 8と同じデザイン」という情報が流れていたこともあり、割り切ってコストを下げた廉価版と予想していた人も多かっただろう。

 ところが発表された新しいiPhone SEは、見た目こそiPhone 8と同様だがメインプロセッサ(SoC)の「A13 Bionic」や搭載するアウトカメラを含め、iPhone 11・11Proシリーズが提供している最新のiPhoneに近いシステムだった。

 確かに価格は安価なのだが、廉価版というよりは「iPhone 11シリーズのバリエーション展開」といった位置付けになっている。

iphonese ディスプレイは4.7型、ホームボタンは指紋センサーの「Touch ID」搭載。背面には1200万画素のシングルカメラを備えている

見た目はiPhone 8、体験の質はiPhone 11級

 とても乱暴な紹介の仕方だが、新しいiPhone SEはiPhone 8の中身をiPhone 11級へと入れ替えた製品ともいえる。

 形状やサイズはもちろん、前面・背面のガラス形状も含めてiPhone 8と全く同じ。ケースや保護ガラスなどはiPhone 8用のものがそのまま使用できる。ホームボタンを兼ねる指紋センサーの「Touch ID」も引き続き利用できる。これは外出時のマスク着用が必須になっている世相にはプラスともいえる部分だ。

 超広角カメラこそ搭載されていないものの、28mm相当の広角カメラのスペックは同じだ。画質面でもA13 Bionicが搭載されているため、セマンティックレンダリング、スマートHDRといったiPhone 11世代のカメラが備える要素が盛り込まれている。搭載される4.7型ディスプレイもiPhone 8に採用されたものと同スペックであり、64GBモデルが4万4800円という低価格とは裏腹に、極めて高性能なスマートフォンである。

 基本的にはホームボタン付きiPhoneとしては最終形態となっていたiPhone 8を、あらゆる面で“最新へと更新”しており、質を落としているところは見受けられない。

iphonese
iphonese ボディーデザインは「iPhone 8」がベース。上がブラック、下がホワイトのカラー

“11との違い”はどこにあるのか?

 iPhone 8との違いは、例えば「3D Touch」がHaptic Touch(触覚タッチ)に変更されるなどの調整はあるものの、繰り返しになるが佇まいは同じだ。

 ワイヤレス充電に対応する他、18Wの高速充電器に対応。搭載するA13 Bionicは初代iPhone SEが搭載していた「A9」に比べて2.4倍、iPhone 8搭載の「A11 Fusion」よりも40%高速で、グラフィクスに至ってはそれぞれ3倍と2倍の能力がある。

 では、現在市場で最も人気が高いスマートフォンであるiPhone 11との違いはどこにあるのだろうか。もちろん、搭載するバッテリーやカメラの数、顔認証機能「Face ID」の有無、ディスプレイサイズ、カラーバリエーションなどは大きく違うところだ。

 細かく掘り下げると、iPhone SEのカメラにはナイトモードが存在しない。また、Face IDが利用できないことからも分かる通り、インカメラに3Dセンサーがないため、「アニ文字」などの形状を把握する必要がある機能も使えない。

 これらのことから想像されるのは、iPhone SEの搭載メモリ(RAM)の量がiPhone 11の4GBよりも少なく、「iPhone XR」と同等レベル(3GB)かもしれないということだろうか。ナイトモードは多くの撮像データを合成する必要があるため、メモリを多く使うと予想されるからだ。

 実際のところ細かなスペックは公表されていないため、どの程度の違いがあるかは分からないが、iPhoneは伝統的に長期間のiOSアップデートが行われてきたこともあり、もしXRと同等のメモリ量ならば、消費者が気にするレベルではない。

iphonese iPhoneの新ラインアップ。左からiPhone SE(4.7型)、iPhone 11(6.1型)、iPhone 11 Pro Max(6.5型)、iPhone 11 Pro(5.8型)

今年最も売れるiPhoneに

 iPhone SEと同じ外観を持つiPhone 8は、価格が安いこともあってiPhone 11が発売される直前までは、日本で販売されるiPhoneの4割を占めていた。しかし、コストパフォーマンスに優れたiPhone 11の登場で状況は一変。その後、実質価格が下げられたこともあって、iPhone 11、11 Proに次ぐ3番目に売れるモデルとなっていた。

 第2世代のiPhone SEは、そのiPhone 8をiPhone 11レベルにまで引き上げ、さらにはiPhone 6以降、最も低価格で入手できるiPhoneでもある。

 2020年末の発表では5Gモデム搭載の可能性が高いと予想される最上位のiPhoneだが、この価格設定やパフォーマンスレベルの高さを考慮するなら、年末に振り返って「最も売れたiPhone」はiPhone SEになる可能性が高そうだ。

iphonese 2016年3月発売のiPhone SE初代モデル。「iPhone 5s」ベースの4型ディスプレイ搭載ボディーを採用していた

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