スマートフォンが急速に普及する中、コンテンツやサイトのスマートフォン対応を検討する企業が増えている。これまではiPhoneへの対応を検討すればよかったが、Android端末の普及が加速している昨今では、マルチデバイス展開を念頭においた対応が不可欠だ。
請負・アルバイトの求人情報サイトを運営するディップも、マルチデバイス展開を意識してサイトのスマートフォン対応を進めた企業の1社。まずはiPhone向けサイトとアプリを公開し、各キャリアから多数のAndroid端末が登場するとみられる秋以降、Android対応を進める計画だ。そのため、iPhoneアプリの開発にあたっては、一からObjective-Cで開発するより安価で納期も短く、他のプラットフォームへの展開がしやすい方法を採用したという。
低コスト、短納期、マルチデバイス対応を目指した同社のスマートフォン対応について、ディップの開発チームに聞いた。
求人情報サービスをネット専業で展開する企業。アルバイト求人情報サービスの「バイトルドットコム」、派遣求人情報サービスの「はたらこねっと」、中途・正社員領域の「ジョブエンジン」、看護師に特化した「ナースではたらこ」の4サイトをメインに展開している。
求人メディアは多くが情報誌とWebサイトを組み合わせて展開しているが、ディップは創業時からネット専業で事業を展開。新たにiPhoneに対応するバイトルドットコムは、全国規模のネット専業アルバイト求人情報サイトの中では最大手に位置付けられている。
ITmedia 数あるディップの求人サイトの中で、まず、アルバイト情報を提供する「バイトルドットコム」をiPhoneに対応させたいきさつを教えてください。
ディップ 執行役員常務 商品開発本部 本部長の植木克己氏 バイトルドットコムは、ケータイとPC向けにサイトを展開していますが、アルバイト情報を提供するサイトなので若年層のユーザーが多く、ケータイサイトが非常に強いサービスです。スマートフォンからのアクセスはまだ少ないのですが、昨今の出荷台数の伸びやターゲット層とモバイルとの親和性の高さ、アーリーアダプタ層がスマートフォンを使い始めているという状況を考慮して、iPhoneへの対応を決めました。
ITmedia バイトルドットコムのサービスをスマートフォンに最適化させるときに、重視したポイントは。
植木氏 スマートフォンは、PCなみのWebブラウジングができる側面と、携帯電話の側面を併せ持っています。我々のサイトはケータイ利用者が多いので、ケータイの特性と高性能なWebブラウジング機能の両方を生かそうと考えました。
例えばバイトルドットコムのケータイ版には、GPSを活用して現在地付近のアルバイト先を探せる機能があります。これは競合他社に対して優位性がある機能なので、iPhoneアプリにも実装しています。
また、iPhoneは携帯電話に比べてディスプレイが大きいので、表示にも気を使いました。既存のサイトには、募集中のアルバイトに対する応募状況をリアルタイムに5段階で表示する「応募進捗バロメーター」という機能があるのですが、こうした紙の情報誌では実現できない機能を、大きな画面で見やすく表示するところにはこだわっています。
ITmedia 今回のiPhone対応にあたっては、Webとアプリを同時に公開しています。Web版とアプリ版とで機能は異なるのでしょうか。
ディップ システム開発部 システム運用課 チーフの亀田重幸氏 Safariからアクセスした場合には普通の検索しかできませんが、アプリでは気になるバイト情報をキープしておく機能があります。さらにアプリでは、あらかじめ保存したプロフィールを応募のときにすぐ呼び出すことができます。ボタン1つで情報を呼び出せるので、2つのステップで簡単に応募できるのです。閲覧できる情報はWeb版もアプリ版も同じですが、機能はアプリの方が充実しています。
ITmedia 操作面で気を配ったところは。
ディップ バイトルドットコムメディアプロデュース部 企画課 チーフの梶川雄太氏 バイト情報へのたどり着きやすさは、今回、力を入れて開発したところです。アルバイトを探すときは、自分がやりたい仕事にどれだけ速くアクセスできるかが重要です。そこで、モバイルサイトでは、なるべく画面の遷移数を少なくするようにしています。スマートフォンでは画面を横スクロールさせて、選択肢を見やすくするとともに、検索もしやすくするよう意識しました。
GPSを使った検索では、現在地から任意の半径を設定して仕事を探せます。表示された地図では、仕事のある場所にピンがドロップされ、別の場所を探したいときには、地図をスクロールして探せます。
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