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» 2011年03月23日 12時00分 UPDATE

固定を廃し、会社の内外線を携帯に――JSOLが手にした「持たない経営」と電話運用の柔軟性 (1/2)

会社の固定電話を原則廃して内外線をケータイに置き換えるという、ユニークな電話システムを4年前から採用しているJSOL――導入当初は戸惑いもあったというが、結果として業務効率化はもちろん、柔軟な設備の刷新が可能になったという。

[日高彰,ITmedia]

 日本総合研究所(日本総研)グループのJSOLは、情報システムのコンサルティングから構築・運用までを行うITのトータル・サービス・プロバイダーで、製造業・医薬業向けの基幹系システムなどに強みを持ちながら、2009年のNTTデータとの業務・資本提携以降はNTTデータおよび同グループ会社と連携し、より広範囲の業種・業務ソリューションを手がけている。またコンサルタントとして自社でも徹底した業務の効率化を図っているのが特徴で、ペーパーレス化やフリーアドレスオフィスの導入などにも比較的早くから積極的に取り組んでいる(例えば、社員400人が働くフロアに、プリンタはたったの4台しか設置されていないという)。

 その同社が、4年前のオフィス移転と同時に実施したのが、社内の固定電話は原則廃止(代表番号など一部を除く)し、内外線の大半を携帯電話に置き換えるという電話システムの刷新だ。さらに、導入から3年後には番号ポータビリティを利用して通信キャリアを変更するなど、常に最適な契約体系で利用できるよう最新の動向を注視している。

 そんな同社における携帯電話利用の変遷について、営業統括本部 金融・公共営業本部長の嶋崎洋氏、経営管理本部リスク統括部長の池田明聡氏、コーポレートビジネス本部総務サービス部の大内由紀子氏に聞いた。

携帯で実現する「ダイレクトコミュニケーション」と「持たない経営」

 同社は2006年7月、日本総研の外販向けITソリューション事業を分社化する形で設立された。そのため、当初は部署によってオフィスが複数の拠点に分散していたが、2007年2月に東京エリアの拠点を統合する形で現在の東京本社へ移転を行った。このとき行われたのが、固定電話を撤廃し、社員全員が携帯電話を持つという新しいワークスタイルへの転換だ。

 狙いは、社内外のコミュニケーションの効率化だ。顧客が同社へ電話をかけるときの多くは、電話の目的の相手が誰か決まっている。まず目的の部署の番号に電話をかけ、出た人に名前を告げて取り次いでもらうよりも、顧客が話したい相手と直接つながったほうがスムーズなのは当然だ。また、携帯電話であればオフィスにいないときでも連絡が取れるので、外出から戻って机のメモを見るまで顧客からの連絡に気づかないといったタイムロスもなくなる。さらに、社内連絡においても、離席中の人をつかまえるためにオフィス内を探し回ったり、何度も内線をかけたりというムダがなくなる。

 そこで、同社では3年契約で全社員1300人(当時)分の携帯電話を新規契約し、新東京本社への移転と同時に配布した。あわせて、大阪、名古屋の事業所でも固定電話から携帯電話への切り替えを行った。

 もちろん導入当初は、社内外で戸惑いが見られた。一部の顧客からは「職階の高い人に直接はかけにくい」「携帯電話への発信は通話料が高くなる」といった声が寄せられ、社内でも、従来は離席中も同じ部署の誰かが電話を取ってくれたのに、携帯電話だと出られないときは留守番電話での応答になってしまうといった反応があった。

 しかし、若干の混乱はあったものの、固定電話の撤廃が受け入れられるまでにそれほどの時間は要さなかったという。一般のビジネスシーンで考えれば分かるが、営業担当者が得意客に自分の携帯電話番号を伝えていたり、名刺に固定・携帯の番号が併記されていたりすることは現在では珍しくない。それが一歩進んで、固定番号がなくなっただけである。電話に出てない時の対応も、留守番電話に録音を残しておけば手が空くと同時に折り返してくれるということが浸透すれば、本人に伝わったかどうか分からないメモよりも実際には確実だった。結果的には固定電話番号が持つ“何となくの安心感”より、話したい相手と直接つながるという利便性が勝ることになったのだ。

 とはいえ、携帯電話を導入している多くの企業では、やはり「プライマリー」の電話番号は固定電話であることがほとんどだ。実は、JSOLが携帯電話への大胆なシフトを行った理由は、コミュニケーションの効率化のほかにもうひとつあった。

photo 嶋崎氏

 4年前に携帯電話導入のプロジェクトを任された嶋崎氏は「会社からは2つの課題が課せられていました。ひとつはダイレクトコミュニケーションですが、もうひとつは社内の電話設備においても『持たない経営』を実現することでした」と語る。固定電話を前提とした内線網の構築には、構内交換機(PBX)を中心とした各種設備が必要だが、問題となるのは、このような設備は耐用年数が10〜15年程度にわたり、一般にリースアップないし減価償却が済むまで使い続けることを前提に導入されるという点である。その間、資産としての会計処理が必要になり固定費を押し上げる要因になるばかりでなく、より効率的なコミュニケーション手段が登場しても「償却期間が残っているから、導入はそれまで待とう」といった具合に、財務上の都合が業務効率化の障害になりかねないというデメリットがある。

 固定から携帯への移行当初、電話にかかるトータルコストは大きくなった。固定電話に比べて高い通話料が原因だった。しかし、携帯電話市場において各キャリアの値下げ競争は激しく、料金は安くなっても高くなることはない。固定と携帯の料金差が縮まる傾向が明らかである中、変化の激しい時代に10年単位の投資が必要となる固定電話を導入するよりも、長くても3年程度で契約を見直していけるフレキシビリティを同社は重視した。

 導入してみると、先に挙げたようなダイレクトコミュニケーションを期待通り実現できただけでなく、電話を受けるために誰かが席にいなければならないといった庶務的な仕事を大幅に削減できたほか、組織変更のたびに内線電話番号をメンテナンスするといった手間も完全になくなった。また、いちいち電話番号を調べなくても電話帳に登録している相手にはすぐに電話をかけられる、電話に出る前に発信者を確認できるといった、携帯電話では当たり前の機能も、実際にビジネスシーンで使ってみると便利だった。デスクの電話をなくして社員ひとりひとりが携帯電話を持つという選択は、大正解だったということができる。

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