ドコモ「安さ」でも勝負 クラウドで差別化も推進

» 2012年04月28日 12時01分 公開
[山田祐介,ITmedia]
photo NTTドコモ 山田隆持社長

 NTTドコモは4月27日、2011年度の決算を発表した。売上高は前年度比0.4%増の4兆2400億円、営業利益は前年度比3.5%増の8745億円。2003年度以来8期ぶりの増収増益で2011年度を締めくくった。スマートフォンへの移行によるパケット増や、コストの削減が、増収増益を後押しした。

 決算会見では同社の山田隆持社長が2012年度の見通しや取り組みについて説明した。スマートフォンを年間1300万台販売する計画で、このうち6割が「Xi」対応となる見込みだ。夏モデルはスマートフォンの7割をXi対応とし、冬モデルはほとんどのスマートフォンをXi対応にするという。

 また、2012年度は価格競争力も含めた「総合力」で成長を目指す考え。従来2万円〜2万5000円程度だった端末の実質価格を「1万〜1万5000円」程度に抑え、「実質0円」の端末も用意してiPhoneに対抗していく。さらに、機種を問わず便利なサービスを受けられる「ネットワーククラウド」(ドコモの造語)への注力を山田氏はアピールした。自動翻訳をはじめとする高度な処理をクラウド側で行い、ドコモのネットワークならではの付加価値とすることで、他社との差別化を図っていく。こうした取り組みで2012年度は営業利益9000億円突破、2年連続での増収増益を目指す。

スマートフォンは対前年3.5倍の882万台を販売

 2011年度、ドコモは882万台のスマートフォンを販売した。11月、当初600万台としていた通期販売目標を予想以上の“スマホ人気”を受けて850万台へ上方修正した同社だが、対前年にして3.5倍、目標を30万台以上上回る実績を残した。端末の総販売数は前年度を303万台上回る2209万台で、2012年度は2380万台を目指す。

 LTEサービスであるXiの契約も順調に増え、契約数は230万を突破。目標の200万を上回る結果となった。また、スマートフォンの好調などが後押しする形で、パケット収入は前年度比88.8%増の1兆8439億円となった。音声収入は減少し続けているが、パケット収入は2010年度の第4四半期から音声収入を上回っており、2012年度も上昇トレンドは続く見込みだ。

photophoto 2011年度営業利益の主な増減要因(写真=左)と、携帯電話収入のトレンド(写真=右)

2012年度のキーワードは「総合力」 価格面でも競争

photo 2012年度営業利益の増減要因予測。価格競争力を高めるため、月々サポートのコストが大幅に増えている

 2012年度の事業方針には、大きく4つの柱がある。(1)スマートフォン・Xiの販売促進による純増数の拡大、(2)クラウドサービスの提供、(3)総合サービス企業への進化、(4)顧客満足度向上と安心・安全施策の強化、である。端末ラインアップやネットワーク品質だけでなく付加サービスを充実させ、サービスの「総合力」で顧客の支持を得ていく考えだ。

 スマートフォンは年間1300万台の販売を目指す。「アンケートをとると、若い層だけでなく年齢の高い人もスマートフォンを使いたいという意向がある」と山田氏は話し、幅広い層にスマートフォンを販売していく意向を示した。フィーチャーフォンのラインアップは今後さらに縮小し、子供向け端末といったごく一部のみになるという。


photo Xiのエリア展開スケジュール

 Xi対応をスマートフォンのスタンダードにしていく考えも示された。「5月中旬に発表する」という夏モデルでは、スマートフォンの7割がXi対応となる。「冬モデルでは、スマートフォンはXiが“基本”になる」(山田氏)。スマートフォン販売目標の1300万台のうち、6割はXi対応モデルとなる見込みだ。こうした施策により、2012年度中にXi契約数1000万の突破を目指す。2011年度末時点で人口カバー率約30%のXiだが、2012年度末には約70%にまで拡大する見通し。また山田氏は、同年度中に一部地域でLTEのシステムを高速化することも明かした。1.5GHz帯を使った「カテゴリー4」のシステムを導入し、下り最大通信速度を現行の75Mbps(一部地域)から112.5Mbpsに高速化する。対応端末は冬モデルからラインアップする予定だ。

 総合力強化の一環として、端末の価格競争にも乗り出す。機種に応じた一定額を毎月の料金から割り引く「月々サポート」の割り引き額を増やし、端末の実質負担額を「競合他社と同等」にまで下げる考えだ。これまで2万〜2万5000円程度だった端末の実質負担額は今後、1万〜1万5000円程度になるという。さらに、“実質0円”のモデルも存在するiPhoneなどに対抗するためドコモでも実質0円の端末をラインアップしていく。

 価格の「泥沼競争は避けたい」としていた山田氏だが、一方でユーザー流出の主な理由が価格に関連していることも説明。番号ポータビリティの転出ユーザーを対象にした調査では、「iPhoneにしたいと人は20%程度」で、残り80%は「端末の安さやキャッシュバック」が転出の理由だという。2012年度は価格競争力も高め、番号ポータビリティの転出数を前年度の半分となる40万程度に抑えたい考えだ。

事業の多角化、クラウドによる差別化にも注力

 独自のポータルサイト「dメニュー」は、2011年度末で約900社あるコンテンツプロバイダーを2012年度末には1000社以上に増やす考え。サイト数も4600サイトから1万サイト以上へに拡大させる。アプリ・コンテンツ配信の「dマーケット」については、2012年夏にアニメストアの追加を検討しているという。

 総合サービス企業としての取り組みもさらに進める。現在はスマートフォンへの移行などによりパケット収入は増加トレンドにあるが、「2020年ぐらいを考えると、通信料で伸びる業態ではない」と山田氏。スマートフォンシフトが終わった後も収益を伸ばしていくために、総合サービス企業への進化が必要とした。同社は4月1日にスマートフォン向け放送「NOTTV」をスタート。また3月に子会社化したらでぃっしゅぼーやとのシナジーにも取り組んでいく。

 キャリアの「土管化」(ダムパイプ化)を打開する策として、同社が「ネットワーククラウド」と呼ぶクラウドサービスの戦略も説明された。iPhoneには音声エージェント機能「Siri」があるが、これはクラウドを介して音声認識などの高度な処理を実現している。こうしたアプローチにキャリアとして取り組み、“ドコモの回線なら機種を問わず高度なサービスが受けられる”ようにしていく考え。ドコモ版siriともいえる「しゃべってコンシェル」は3月1日の提供開始から157万件(4月25日時点)のダウンロードがあったという。

 試験サービス中の通訳電話機能は、2012年度中に対応言語を3言語から10言語に増やす予定のほか、5月末にはメールの翻訳機能も提供する。「日本語」と「英語・中国語・韓国語」間の翻訳をクラウド処理により実現するという。

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