HTML5推進派のFinancial Times、ネイティブアプリに回帰したFacebook、それぞれの思惑はOpen Mobile Summit(1/2 ページ)

» 2012年12月04日 15時46分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 ネイティブアプリか、HTML5か、ハイブリッドか――。アプリ開発者たちのあいだで議論が繰り広げられる中、11月上旬に米サンフランシスコで開催されたモバイル関連イベント「Open Mobile Summit」の講演に、対照的な2社のキーパーソンが登場した。

 1社はネイティブアプリからWebアプリへの移行で成功を収めたFinancial Times(以下、FT)。もう1社はHTML5のWebアプリからネイティブアプリにシフトしたFacebook。それぞれが語ったモバイルアプリ戦略はどのようなものだったのだろうか。

HTML5アプリでデジタル有料購読者を増やしたFT

Photo Financial Timesのロブ・グリムショー氏

 FTといえば、ネイティブアプリからWebアプリへの移行で成功を収めた企業の代名詞ともいえる存在だ。iOSアプリへの参入でモバイル戦略をスタートさせた同社は、2011年6月にHTML5を採用したWebアプリ「FT Web App」を公開。8月にはAppleのApp Storeを通じたネイティブアプリの配信から撤退した。同社がHTML5に移行したのは、Appleがアプリ内課金について30%のコミッションを徴収しはじめたためだ。こうしたAppleの施策に同意できないと考えたFTは代替案を探り、「HTML5を利用したWebアプリでサービスを提供する」という結論に行き着いた。

 Webアプリの提供開始から1年以上が経過した現在、ネイティブアプリからの移行が順調に進んでいるだけでなく、この1年で読者が77%増加するなど、モバイル(スマートフォンとタブレット)からの新規購読者の獲得にも成功しているという。「HTML5はFTのビジネスを殺していない。ネイティブ環境にとどまるよりもよい結果となった」(グリムショー氏)

 FTのデジタル有料顧客の数は30万に達し、デジタルの購読者数が既存の新聞購読者の数を上回ったとグリムショー氏。「新聞業界ではまれに見る快挙。モバイルはデジタル有料顧客獲得に大きく貢献している」(同)と、自信を見せた。

Photo デジタル有料顧客は着実に増加している

HTML5でマルチプラットフォーム展開が容易に、9割のコードを共有

 アプリ開発者の注目を集めるHTML5だが、決して楽な選択肢ではないことも事実だ。サービスを提供するためにはユーザーインタフェースの作りこみだけでなく、課金や広告などの収益メカニズム、認証、パーソナライゼーション、コンテンツ管理システム(CMS)、分析などといったさまざまな機能を実装する必要がある。ネイティブアプリの開発環境には、こうした機能があらかじめ用意されているため、開発者が作業に費やす時間は少なくて済む。グリムショー氏は現在のHTML5を(Webサイトを試行錯誤しながら作っていた)「Webの初期の時代に似ている」と説明する。

 中でもHTML5上の広告は「唯一の頭痛の種」(グリムショー氏)とし、広告がきちんと機能するためにさまざまな作業をする必要があったと明かす。印刷物、ラジオ、テレビ、インターネット、モバイルの5つのメディアに費やす時間と広告の支出に関する表を示しながら、「ユーザーはモバイルに移行したが、広告側はこのユーザーに効果的に利用する方法を見いだしていない」と指摘した。

Photo 米国の消費者が印刷物、ラジオ、テレビ、インターネット、モバイルに費やす時間(オレンジ)と広告支出(青)。モバイルは極端に広告が低いことが分かる

 一方、HTML5の強みはマルチプラットフォーム展開がしやすい点だ。FTのAndroidアプリとWindows 8向けアプリは89%がHTML5のコードで構成されており、グリムショー氏は「アプリケーションのメンテナンスに要する作業が大幅に削減され、新機能の開発と実装がシンプルで簡単になった」と話す。

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