LTE-Advancedに向けた研究など、KDDI研究所が最新技術を公開(1/2 ページ)

» 2013年05月24日 20時58分 公開
[佐野正弘,ITmedia]

 KDDIは5月23日、埼玉県ふじみ野市にあるKDDI研究所にて、現在手掛けている最新技術を報道関係者向けに公開した。LTE-Advancedの導入に向けた技術開発など、KDDI研究所で進められているさまざまな取り組みが紹介された。

「Advanced MIMO」などLTE-Advancedに向けた技術を開発

photo KDDI研究所の中島康之氏

 当日は、KDDI研究所の代表取締役所長である中島康之氏がKDDI研究所の概要について説明を行った。同研究所はKDDIの前身の1つである国際電信電話(KDD)の研究部として1953年に発足。1998年に同社の子会社として株式会社KDD研究所が設立された。その後、2001年のKDDI発足にともなって京セラDDI未来通信研究所と合併し、現在の組織に至っている。

 研究拠点はふじみ野市だが、ほかには技術の商用化に向けた取り組みをする開発センターが東京・飯田橋のKDDI本社内に、無線系の実験に使用する施設を横須賀リサーチパーク(YRP)に用意。全体で約300人が研究開発に携わっているという。

 最新の研究の中でも注目を集めるのが、主力のモバイル通信の分野である。現在は主に、LTEの次の世代となる通信方式「LTE-Advanced」に向けた技術の研究・開発が進められている。

 その1つが「Advanced MIMO」だ。MIMOは、基地局と端末、それぞれに複数のアンテナを搭載し、それぞれ別々の情報を送ることで高速化を実現する技術。現在展開されているLTEサービスでは、基地局、端末共に2本のアンテナを備えて通信する2×2のMIMOが実装されている。

photophoto Advanced MIMOの解説。アンテナを増やすだけでなく、独自の圧縮技術を用いて端末側の情報送信量を抑えることで、電波端末の干渉を防ぎつつMIMO通信できる端末を増やせる(写真=左)。Advanced MIMOの実験設備。現在は有線での実験がなされている段階とのこと(写真=右)

 Advanced MIMOは、基地局により多くのアンテナを搭載することで、複数の端末と同時にMIMOによる通信を実施、高速通信を実現しながら基地局の通信容量を増やすというもの。今回披露された実験設備では、有線ではあるが4台の端末と同時に通信できる環境を実現している。

 この仕組みを実現する上で問題となるのは、単に基地局から電波を発するだけでは、“Aさん”の端末向けの電波と、“Bさん”の端末向け電波が混じり合い、干渉してしまうこと。正確に電波を送るには、あらかじめ端末の状況を基地局側に送信する必要があるのだが、同時に通信できる端末が増えれば増えるほど、基地局側に多くの情報を送る必要があり、上りのトラフィックが増えてしまう。そこで独自の圧縮技術を用いることでトラフィックを減らし、干渉を減らしつつ多くの端末を対象としたMIMOを可能にするのだという。

photo 周波数の利用効率を示す、周波数当たりの通信速度(bit/sec/Hz)。LTEはこの値が7.5程度だが、実験設備では20を超える値を示し、効率が大幅に高まっていることが分かる

 このAdvanced MIMO技術は、LTEの将来的な規格「Release 13」に提言することを検討しており、他社とすり合わせの後で標準化後される見通し。ゆえに「実際の導入は、2018年頃になるのでは」(KDDI研究所)とのことだ。

将来を見据えアンテナの小型化や端末評価の取り組みも

 もう1つ、LTE-Advancedの導入に向けて整備が進められているのが「無線機内蔵小型アンテナ」だ。携帯電話の基地局は、電波を送受信するアンテナと、アンテナで受けた電波を処理して実際の通信をする無線機で成り立っているが、複数の周波数帯への対応や、MIMOの実装などにより、基地局に設置するアンテナの数が増えている。

 そこでKDDI研究所では、現在送受信が一緒になっているアンテナを、送信用と受信用に分離。さらにアンテナの素子と、無線機に入っているデュプレクサ(1つのアンテナで送信される信号と受信する信号を分離する装置)やアンプなどを1つにまとめることで、大幅な小型化を実現するアンテナを開発。現在屋外でのテストがなされている段階とのことだが、実際にこのアンテナが導入されれば、単に小型化を実現するだけでなく、無線機の設置が必要なくなり配線も不要となるので、設備費や工事費、消費電力などがそれぞれ5割以上削減できるそうだ。

photophoto 試作中の無線機内蔵小型アンテナ。実際はこの3倍の長さになるが、無線機が内蔵されるため大幅な小型化が実現されることとなる(写真=左)。アンテナの中には、アンテナ素子と無線機の回路が一体になったものを複数配置。スマートフォン等に用いる汎用的な部品で作られるなど、コストも抑えられている(写真=右)

 無線機内蔵小型アンテナは既存の通信方式にも対応できるが、実用化のタイミングなどを考慮すると、導入はLTE-Advancedのサービス実施時になるのではないか、とのことであった。なお現在開発しているのは2GHz帯に対応したもののみであるため、今後は2GHz帯と800MHz帯に対応したものの開発を進めていきたいとしている。

 将来に向けた取り組みとしてもう1つ、「電波無響室」での性能評価についても紹介がなされている。電波無響室とは、無線機器の性能を試験するための施設のこと。電波が外部に漏れず、しかもカーボン加工を施したトゲ状のスポンジを多数設置することで、電波を吸収して壁で反射しない仕組みとなっている。

photo 電波無響室での性能評価。人間と同じ電波特性を持つ“ファントム”に端末を持たせ、それをアンテナで囲むことにより、さまざまな電波環境を作り上げて評価を実施する

 ここでは端末の無線性能評価が実施されているが、より高い周波数帯の割り当てによるアンテナの小型化や、タブレットなど大型端末の増加に伴って、MIMOで伝送速度を上げるためにアンテナ数を増やした端末が今後増加する見込みだ。

 そうすると、多くのアンテナを搭載した端末では、電波の反射によって伝送の性能が大きく変化する。この施設では端末の周囲をアンテナで囲み、送信する電波の強弱などを調整できる「マルチパス生成期」から電波を送出することで、“渋谷の街中”などさまざまな環境を作り上げて無線性能を評価しているのだそうだ。

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