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» 2012年11月09日 13時00分 UPDATE

キーワード解説:風力発電の成否を左右する「風況」

風力発電機はどこに設置しても良いというものではない。ある程度の風が吹くと期待できるところに設置しないと、ほとんど発電しない。年間平均風速など、発電量を左右する要素は色々ある。これらの要素をまとめて「風況」と呼ぶ。

[笹田仁,スマートジャパン]

 風況とは、簡単に言うと特定の場所の風の吹き方を意味する。風速や風向の変わり方、最大瞬間風速といった要素によって、風力発電機の稼働効率が大きく変わる。風力発電機を建設する際には発電機の性能を可能な限り引き出すため、周囲の風の吹き方、つまり風況を調べる必要がある。独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合研究所(NEDO)がまとめた「風力発電導入ガイドブック」によると、風況を調べるときは、四季を通じて1年以上のデータを収集することが望ましいとしている。

 風況を計測する際には、建設を予定している風力発電機の風車の中心(ハブ)の高さで計測する。一般には鉄柱をハブの高さまで伸ばして立てて、その先に風力を測る風車や風向を測る風向計などを設置する。巨大な風力発電機を建設することを予定している場合は、ハブの高さで風況を計測できないこともある。このような場合でも、なるべくハブの高さに近いところで計測すべきである。

 NEDOの風力発電導入ガイドブックによると、風況を調べる際には平均風速、平均風向、最大瞬間風速、風速の標準偏差の4種類のデータを取得すべきとある。取得したデータは解析し、平均風速、風速出現率、風向出現率、風向別平均風速、風向別風速出現率、風速の時間的変動、乱れ強度、風速の鉛直分布の8種類のデータを算出すべきともしている。

 風力発電に適している土地は、平均風速が高く、風向が安定しており、乱れが少ない土地と言える。例えば年間平均風速が毎秒6m以上であれば、事業化へのハードルを1つクリアしたことになる。ほかに、風車を向ける方向に風が吹く時間が年間で60%以上であること、地形の影響を受けて風が大きく乱れることがないことといった条件を満たせば、その土地は風力発電の事業化に向いていると判断できる。

 以上で説明した風況の計測法と算出すべきデータは、あくまでも一般的なものである。崖がそばにあるなどの地理的条件で風が乱れるといったことや、風力発電機の風車が大きな騒音を発するという問題、地盤が巨大な風車を支えられるかどうか、落雷が頻発しないかといったさまざまな条件を1つ1つ考慮して、最終的な建設計画を決める必要がある。

 ちなみにNEDOは日本全国の陸地の大まかな風況データを計測し、Webサイトで公開している。まず、このデータを見て建設予定地を絞り込み、その土地で実際に風況を計測してから発電機建設というのが一般的な流れになる。

関連記事:これを読めば「風況」がさらによく分かる!

風力発電が太陽光に続く、小型システムは企業や家庭にも

太陽光発電に続いて風力発電の取り組みが活発になってきた。小型の風力発電は買取価格が55円/kWhで最高額に設定されている。建設費が高いためだが、適した場所を選べば企業や家庭でも設置できる。大型の風車を使った大規模な風力発電所も東北や北海道で増加中だ。


30億円を投じても元は取れる、風力発電所2カ所を買収

大阪ガスの100%子会社で、再生可能エネルギーによる発電事業を手掛けるガスアンドパワーは、日本風力発電が保有している風力発電所2件を買収する。大阪ガスはおよそ30億円の費用がかかると見積もっているが、売電収入で十分採算は取れると判断した。


日本でも洋上風力発電は実力を発揮できるか、実証研究が始まる

千葉県銚子市沖に日本最大の洋上風力発電設備が完成した。同じ規模の設備が今年度中に福岡県北九州市沖にも完成する予定だ。ヨーロッパではかなりの実績を残しているが、日本で実用化までこぎつけるには、まだ調査しなければならないことが多いようだ。


太平洋岸に風力発電所の集積地、洋上にも続々と建設中

茨城県の太平洋岸に大規模な風力発電所が増加中だ。10〜20MW級の発電所だけでも5か所で稼働しており、今後の拡大が期待される洋上の風力発電も本格的に始まった。一方で内陸部ではバイオマス発電が活発に進み、その発電量は全国で第2位の規模に成長している。


風力発電2000MW計画を推進、洋上で世界初の大規模な試み

震災の被害を大きく受けた福島県は2012年3月に「再生可能エネルギー推進ビジョン」の改訂版を発表し、震災前よりも再生可能エネルギーの導入量を大幅に増やす方針を打ち出した。2020年までに風力発電を2000MWに拡大する計画で、世界初の大規模な浮体式の風力発電にも挑む。


蓄電池を併設した風力発電所、25MWで2017年に運転開始へ

地域の再生可能エネルギーを拡大するために、自治体みずからが大規模な風力発電所の建設に乗り出す。岩手県は風速による変動を蓄電池で緩和する新しい風力発電所を2017年に稼働させる計画だ。115億円をかけた大型プロジェクトで、近く東北電力との間で電力受給の仮契約を締結する。


国内で最大規模の洋上風力発電所、2016年春に稼働開始

国内でも数カ所で洋上風力発電所の計画が持ち上がっているが、どの計画も稼働開始まで長い時間がかかることになっている。前田建設工業は2016年春に稼働開始することを目指して、大規模な洋上風力発電所を建設する。


風力発電の好適地に大型風力発電所、出力は28.8MW

住友商事の100%子会社が秋田県男鹿市に大規模風力発電所を建設する。一般に北海道と東北地方は、風力発電に適していると言われるが、男鹿市は年間平均風速が6m/秒を超える場所が多く、特に風力発電に適している。


200MWまでの風力発電を連係、北海道から東京へ送電可能に

広大な土地を有する北海道で風力発電所の建設計画が相次いでいる。ただし風力による発電量は大きく変動するため、電力会社の送配電ネットワークで許容できなくなる可能性がある。北海道電力は東京電力と共同で、風力の余剰電力を北海道から東京へ送電する実証実験を開始する。


北海道にも28MWの風力発電所、加速するJ-POWERの建設計画

先ごろ愛媛に20MWの風力発電所を建設すると発表したばかりのJ-POWERが、北海道にも28MWの大規模な風力発電所を建設する。運転開始は1年半後の2014年3月と早い。J-POWERの風力発電所は全国で20か所になり、発電規模は400MWを超える。


風力発電所で四国最大級の20MW、2年後に愛媛で運転開始へ

電力会社並みの強力な発電設備を持つJ-POWER(電源開発)が3年ぶりに大規模な風力発電所の建設を開始する。愛媛県の宇和島市に9基の大型風力発電機を設置して、合計20MWの風力発電を可能にする計画だ。運転開始は2年後の2014年9月を予定している。


洋上風力発電を7社が事業化へ、10年後に数百MWの発電所を建設

東芝や日本気象協会など7社が共同で、洋上風力発電の事業化を大規模に展開するプロジェクトに乗り出した。現時点で建設しやすい「着床式」に加えて、今後の拡大が期待される「浮体式」の開発と実験も進める。2012年度中に有力地域を選定して、風力などの観測を開始する予定だ。


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