わたしが「家でも立ち読み」する理由あなたの不安、見積もります

よく「どうやってそんなにたくさんの本を読んでいるのですか?」と聞かれます。なかなか答えるのが難しい質問なのですが、そもそも、わたしはそれほどたくさんは読んでいないのです。

» 2009年10月22日 09時12分 公開
[佐々木正悟,Business Media 誠]

 職業柄か、本をたくさん読んでいると思われているようです。しかも、速読術を解説した書籍などが一時期流行したせいか、速読もできるに違いない、などとも思われているようです。先日もこんな質問をいただきました。

ビジネスパーソンの不安ポイント

 佐々木さんはどうやって大量の本を読んでいるのですか? わたしも情報のインプットを増やしたいと思ってはいるのですが、通勤時間に読書をするくらいで、なかなかそれ以上の時間を確保できません。仕事で帰りが遅くなることが多いので、帰宅後は本を読む気力もなく、倒れるように寝てしまう毎日です……。


 この質問への答えはとても難しいのです。実際は、あまりたくさんの本を読んでいないのですが、そう言っても納得してはもらえません。また、確かにある種の人(わたしの母など)に比べれば、わたしは非常にたくさんの本を読んでいますが、ある種の人(例えば父など)に言わせれば、わたしの読書量は「まったく足りない」のです。要するに、相対的な問題なのです。

 ですがやはり職業柄、多少は本を読まねばなりません。ときには、必ずしも読みたい本でないのに、ページをめくらなければならないこともあります。そんなときには「速読できたら……」などと考えてしまいがちですが、実際にはわたしくらいの読書量であれば速読技術は不要です。

 参考までに、「わたし程度の読書量」の中身を紹介しておきますと、

  • 週に1冊のビジネス書(1日に25分弱)
  • 古典的な心理学書を1日に25分読む(読み直しも含めるので分量はその日によってまちまち)
  • 心理学の英語記事を1日にざっと流して1記事か、または2ページ程度(疲れによる)
  • 一般書を好きなだけ(就寝前などに。マンガ・雑誌を含む)

 最後の「一般書」を除くと、わたしが1日の読書にかける時間は1時間程度であることが分かるでしょう。「ひと月で10冊いくかどうか」程度の読書量であることも分かるはずです。

 もちろん、ブログを書きながら、あるいは原稿を書きながら参考資料を読み飛ばしていく分は、ここには含みません。それらを入れれば、ひと月に20〜30冊くらいになるでしょうが、それらは読んだうちに入りません。

 わたしのように、「本読みというほどではないが、本を読む必要があって、ある程度は本が好きである」という程度の人間には、二通りの読書があると思っています。「立ち読み」と「座り読み」です。

 「立ち読み」というのは、書店でよくやるあれですが、特別な書店でない限り、書店で「座って読む」ことは不可能です。「立ち読み」でけっこう読めるものだということを、書店巡りが好きな人はよく知っているでしょう。

 だからわたしは、「家でも立ち読み」しています。これで読み進められる分量はそこそこになるのです。書棚の前で本を読み始めたら、そのままの姿勢で読み続けます。立っているだけに、つまらない個所は読み飛ばすなど、本に対して基準が厳しくなるので良いのです。わたしは電車でも、本を読むときは立っています。

 「座り読み」は、「読み込む」ためにする読書ですが、わたしはこれを、古典心理学書など、よほど読み込みたい理由がない限りあまりやりません。「読書家」の人たちを見ていると、同じ姿勢でいつまでも本を読んでいられますが、わたしはそんなことをしていると眠くなってきます。そこであまり読書家のようなまねはせず、時間を区切って、よほど読みたい本だけを座って読むことにしているわけです。

 「速読」もできず、「座って読むと寝てしまう」ように活字が苦手にもかかわらず、なお「本をたくさん読みたい」という困った事情をお持ちの方は、わたしのように立ち読みの量を増やしてみてはいかがでしょうか? 変な話ですが、座ってじっくり読み込もうとしなければ、本は存外読むことができるものです。

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筆者:佐々木正悟

 心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。著書に、『スピードハックス』『チームハックス』のほか『ブレインハックス』、『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』、『やる気ハックス』などがある。「シゴタノ!−仕事を楽しくする研究日誌」にて「心理ハック」を連載中。ブログ「ライフハックス心理学」主宰。


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