多くのベンチャー企業が経営に苦労しているようですが、まず“商売選び”ができていないんだと思います。「少ない資本で立ち上げられて、利益率の高い商売をやりなさい」というのが僕の提言。僕自身はマネーゲームに勝つことよりも、未知なる分野に挑戦して、世界を一変させるようなムーブメントをつくり上げるプロセスに注力したいですね。
この連載は書籍『まな板の上の鯉、正論を吐く』から抜粋、再編集したものです。最高裁の判決を待つ身ながらも活発に発言を続ける彼の頭の中に去来する思い。「クビにしないように採るのも企業の責任」「僕の経験上、返済できる金利の上限は5%」「今の日本は国家が借金したお金でGDPを支えている」「核武装して周囲に摩擦を生むくらいなら今のままで十分」――。その一部をご紹介します。堀江流思考のストレッチをお楽しみください。
まず“商売選び”ができていないんだと思います。「少ない資本で立ち上げられて、利益率の高い商売をやりなさい」というのが僕の提言なのですが、そこができていないことが多い。そして、できればマーケットが今後大きく拡がっていく商売をやった方がいいと言うこともあります。
この基本を押さえていればまず問題はないはずです。しかし、ベンチャー企業を立ち上げる人の多くは「このベンチャー企業そのものを成功させたい」という思いが強く、「成功するベンチャーを見分ける」と言うことが視野に入っていない場合が多い。例えば「こういった社会問題を解決したい」とか、「自分の趣味はこうだからこういうものがやりたい」とか「子供のころから夢だった」とか、さまざまなものがごちゃ混ぜになっていて、シンプルに考えられていない。
もちろん夢を実現することは大事だし、社会問題を解決したいという気持ちも分かりますが、そこからスタートして起業すると、規模も小さいまま――つまり、結果として社会にほとんど影響を与えずに終わってしまうことが多いのです。ただ単に自己満足をしたいのであればそれでもいいと思うのですが、そうではなく本当に夢を実現したいのであれば、その確率を高めていくことが大事。そのために、まずは事業の成功を第一に考えなければなりません。
事業を成功させて、ある程度お金を稼がなければ、夢も理想も実現できない。こういういい方をすると非常に反発を受けるのですが、それでも会社が大きくなって企業がある程度回るようになり、優秀な社員を数多く雇っている方が明らかに夢は実現しやすくなる。
ところが、世の中というものは理想を持って成功した一握りの人たちを称賛するので、みんながその一握りになろうとしてしまう。喩えるならば、子供たちがみんなプロ野球選手を目指すようなもの。現実にはプロ野球選手になれなかった人がごまんと出てしまうのに、世論がそれを推奨しているなんて僕は変だと思います。繰り返しますが、何よりも大切なのは成功するための“商売選び”です。インターネットの商売は資本も人手もいらないので、比較的ローリスクで始められるし、工夫次第で儲けることができる商売だと思います。
僕はマネーゲームに勝つことよりも、未知なる分野に挑戦して、世界を一変させるようなムーブメントをつくり上げるプロセスが好きなんです。ライブドア時代に取り組んだインターネット事業はまさにそうでしたし、今取り組んでいる宇宙ロケットの事業に関しても同じことがいえます。
最初は「そんなことはできるはずがない」とバカにしていたり、注目せずに通り過ぎていた人たちが、「本当に実現させたのか!!」と目を見張る姿を見るのは、非常に痛快なことです。ライブドア時代は、会社を拡大し、メディアでアピールを続けることによって、インターネットを一般に浸透させることができました。
ロケット事業に関しても、僕はアピールを続けます。このことで新たなプレイヤーが登場し、競争が生まれるのが望ましい。そして最終的に、誰もが気軽に「宇宙旅行」が可能な世の中を実現させるのは、必ずしも自分である必要はないと考えています。一番重要なのは、社会に対して積極的な影響を与え、そうした時代をつくることです。
1972年、福岡県生まれ。1991年、東京大学教養学部文科三類入学。1996年、東京大学在学中に資本金600万円で「有限会社オン・ザ・エッヂ」を設立。2002年、経営破綻した旧ライブドアから営業権を取得し、2004年、「株式会社ライブドア」に社名変更。同年6月、経営難に陥っていた大阪近鉄バファローズ(現・オリックスバファローズ)の買収を申し出たことにより、ライブドアとホリエモンの名前は一躍全国区に。2005年2月、ライブドアがニッポン放送の株主となり、フジテレビとの間でニッポン放送の経営権争奪戦が起こるが、4月には両者で和解。フジテレビはライブドアから1400億円でニッポン放送株を買い取った。2005年8月、広島六区から衆議院選挙に出馬し、亀井静香と一騎打ちになるも落選。2006年1月、証券取引法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕・起訴される。2007年3月、東京地裁で2年6カ月の実刑判決を受け、即日控訴。2008年7月、東京高裁は控訴を棄却。即日上告し、現在最高裁判決を待つ。現在、ロケット開発を手がけるSNS株式会社のファウンダー。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.