日本ではまだ、正社員であれば安心だ、という幻想が根強いと思います。しかし、終身雇用・年功序列という構造が崩れた今、正社員も派遣やフリーターも、大きな差はありません。そもそも、今の時代に「会社」という仕組みに依存して就職する必要があるのでしょうか。
この連載は書籍『まな板の上の鯉、正論を吐く』から抜粋、再編集したものです。最高裁の判決を待つ身ながらも活発に発言を続ける彼の頭の中に去来する思い。「クビにしないように採るのも企業の責任」「僕の経験上、返済できる金利の上限は5%」「今の日本は国家が借金したお金でGDPを支えている」「核武装して周囲に摩擦を生むくらいなら今のままで十分」――。その一部をご紹介します。堀江流思考のストレッチをお楽しみください。
日本ではまだ、正社員であれば安心だ、という幻想が根強いと思います。しかし、終身雇用・年功序列という構造が崩れた今、正社員も派遣やフリーターも、大きな差はありません。手持ちの資金で始められる自営業も選択肢の1つとして、まったく自由に生きればいいのです。そもそも、今の時代に「会社」という仕組みに依存して就職する必要があるのか、と言うことも疑問です。
そのため、ライブドアでは社員の雇用契約を1年ごとに更新し、新卒採用も行わず、給料は毎年変動していました。年功序列も退職金もなく、個人事業主とフリーエージェント的に直接雇用契約を結んでいるような感覚です。会社に勤めることが一般的でなくなると、所得格差はますます広がるかもしれません。しかし、自分の状況に合わせ、好きな時に働き、好きな時に休むという、豊かなライフスタイルが実現できるようになり、人生の選択肢の幅はむしろ広がります。安定的な雇用からの転落におびえるのではなく、選択肢が増えることをポジティブに捉えてもいいのではないでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。もちろん、長年培われてきた企業の文化や、あるいは伝統的価値を否定するものではありません。しかし、企業がマーケットに長く残ること自体が、株主や従業員にとって、また社会全体にとって最善のことなのか、という疑問はあります。
例えば、同じ仕事を延々と続けられる環境であれば、安定だけを求める社員が増え、事業にイノベーションがなくなってしまうかもしれない。株主から利益要求も受ける株式会社においては、安全に長生きすることよりも、リスクを取って攻めることが大事なこともある。株式会社とは、17世紀の東インド会社の時代から、リスクの高い貿易船事業のために考えられた仕組みであり、長く存続させるためのものではないのです。長く続くものだけが良いものとは限らないし、短命でも素晴らしい会社は数多くあります。
モノの値段が下がるデフレ圧力にさらされている昨今ですが、それを有効に利用する人にとっては、不況は逆にチャンスにもなりえます。つまり、「不況の時代だからこそ強い」というビジネスがある。例えば、居抜き物件(内装・備品等を新たな借主が引き継げる物件)専用の不動産サイトは、かなり良い線だと思います。
居抜き物件は、設備がすべて流用のため減価償却費がほぼゼロというのが大きい。最近はこうした物件を借りた飲み屋が増えているし、今後も伸びていくビジネスです。景気動向を問わず「勝ち続ける」のは、もちろん非常に難しい。状況を見て、損をしないビジネスに切り替えたり、勝負に出たりと、臨機応変に対応する必要があります。心得ておくべきは、好景気に乗ってうまくいっていたビジネスは環境が変わればゲームのルールも変わり、通用しなくなると言うことです。状況によって事業の形を変えられる、柔軟な組織をつくることが重要です。
ライブドアの事業を拡大していく中で、会社の認知度を上げるためのアイデアや、インターネットを普及させるためのビジネスを、お金をかけずに小さく、いくつも立ち上げました。その中から収益の上がるもの、効果の高いものだけを残していったのです。つまり、仕事は狙い撃ちできるものではなく、下手な鉄砲でも数を撃つしかない。
いくらリサーチや研究を重ねても、うまくいかない時はある。ビジネスを当てた人は、皆が「狙ってやった」といいます。それは嘘ではありませんが、同じように狙って外したアイデアの方が、はるかに多い。結局、当たったと言っても偶然の力は大きいですし、当時は外れたアイデアも、数年後に思わぬヒットになることもあります。ビジネスで成功するためには、とにかく思いつく限りのことをやってみるしかない。うまくいかなかったら早く見切りをつけて、次のアイデアを試す。トライ&エラーとその検証の繰り返しです。100のアイデアを試して、ようやく1、2個は当たるかもしれない。ビジネスというのは、そういう世界です。
1972年、福岡県生まれ。1991年、東京大学教養学部文科三類入学。1996年、東京大学在学中に資本金600万円で「有限会社オン・ザ・エッヂ」を設立。2002年、経営破綻した旧ライブドアから営業権を取得し、2004年、「株式会社ライブドア」に社名変更。同年6月、経営難に陥っていた大阪近鉄バファローズ(現・オリックスバファローズ)の買収を申し出たことにより、ライブドアとホリエモンの名前は一躍全国区に。2005年2月、ライブドアがニッポン放送の株主となり、フジテレビとの間でニッポン放送の経営権争奪戦が起こるが、4月には両者で和解。フジテレビはライブドアから1400億円でニッポン放送株を買い取った。2005年8月、広島六区から衆議院選挙に出馬し、亀井静香と一騎打ちになるも落選。2006年1月、証券取引法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕・起訴される。2007年3月、東京地裁で2年6カ月の実刑判決を受け、即日控訴。2008年7月、東京高裁は控訴を棄却。即日上告し、現在最高裁判決を待つ。現在、ロケット開発を手がけるSNS株式会社のファウンダー。
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