美しく、都合よく死ねるのはドラマか映画だけ夫婦で始める“エクストリームコミュニケーション”(3/3 ページ)

» 2011年04月23日 15時00分 公開
[シックス・アパート 中山順司,Business Media 誠]
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テーマ129:理想の死に方

 えー、では最後のテーマです。ずばり、理想の死に方を教えて。

 当然ながら、死因そのものよりも、いかに苦しまずに死ねるかが重要。願いは、自宅の畳の上で死ぬことかな。でも、これじゃあ「理想の死に場所」か。

 僕は「ピンピンコロリ」だったら、死因はなんでもいいです。前日まで元気だったのに、翌朝家族が起こしに行ったら冷たくなっていて、苦しんだ形跡もなく、安らかな死に顔で横たわっている……のが理想。

 ふむふむ、しかもピンピンコロリなら、必然的に死に場所は病院ではなく、自宅になる可能性が大だね。そりゃあ、私もピンピンコロリがいいけど、現代社会においては、ごく少数なんじゃないかしら? たいていは、何らかの闘病生活で苦しむよね?

 そうだね、ピンピンコロリはすごく恵まれた、幸運な死に方だと思う。こればかりは本人の努力ではどうにもしがたいね。

 ピンピンコロリの何がいいって、残された遺族に迷惑がかからないのがいい。医療費や介護といったさまざまな負担をかけなくてすむ。私としては、そこのポイントも高い。

 ただ、遺族が死に目に逢えないって辛さは残る。そこが唯一心残りではある。

 確かにその2つは両立しないな。でも、息を引き取る瞬間を家族に看取られるケースって、ものすごくまれなような気がしない? 少なくとも、私の経験でそういうのはなかった。

 そう言われてみると、僕もそう。「今夜がヤマだ」って言われて、最後のあいさつをしに病院に行っても、その場で亡くなることはなくて、たいていは数日後の深夜に電話でたたき起こされて亡くなったことを知る……というケースばかりだった。最後のあいさつすらできずに亡くなるケースの方が圧倒的に多いな。

 それに、いよいよって段階で病院に駆けつけても、たいてい本人に意識はないか、こっちをちゃんと認識できないくらいもうろうとしていることがほとんどだよね……。

 そうか……。つまり映画のように、ベッドに寝ている祖父の周りを成長した子供や孫の一族が取り囲んでいて、祖父が「愛しい皆の衆よ、さらばじゃ(ガクッ)」と息を引き取るというのは、現実的にほぼありえない話なような気がするね。そういう別れができれば、個人的には大満足だけど。

 うーん、そこまで美しく、都合よく死ねるのはドラマか映画だけでしょ。あ、でも安楽死ならばきちんと死に目にあうことはできそうな気がしてきた。

 そうだね。安楽死ならば、自分の死ぬ瞬間をコントロールできるはずだから、「さようなら」って伝える準備はできそうだ。

 考えるほど、死因も死に場所も、自分ではどうにもしがたいってことが分かってくるね。死に関して、自分でコントロールできることって、何があるんだろう。

 遺言かなあ。意識も気力もあって、「死ぬことなんて、当分ないさ」と言えるうちに、用意しておくことだろうね。確か、コクヨが遺言書キットを販売しているよ。

 書いている間、涙が止まらない気がする……。

 僕も……。でも、遺言書を書きあげることができたら、一皮むけるというか、人生観が変わりそうな気がしない?

 そうだね。それと自分の命や、生かされていることに対して感謝の気持ちがわき起こってくるんじゃないかしら。家族、周囲の人々、衣食住を支えてくれる社会インフラ、色んなものに対して……。

 今日も生きていられることに、感謝しないとね。

 うん、感謝です。


 そう言えば以前、お世話になっている生保の人に「自分の死後、家族に贈るレターの書式一式」(伴侶用、子供用など)をもらったことを思い出しました。泣きそうになってしまったので、まだ書いてはいませんが、そろそろ考えたほうがいいのかな……。


 悩みには、悩んでよいことと、悩んでも仕方のないことの2種類ありますね。悩むことで少しでも解決に近付いたり、なんらかのアクションのキッカケにつながるのであれば、悩む価値もあるのではないでしょうか。



No. 今回のテーマ
126 自殺って許される?
127 安楽死したい? 安楽死を頼まれたら?
128 死後の世界について
129 理想の死に方

 以上、「死」についてでした。

 これで、エクストリームコミュニケーションは終了です。最後は2週にわたって死をテーマに語り合ったわけですが、やはり精神的に疲労しました。まるで、心のフルマラソンをしたかのようにグッタリです。

 その反面、最も達成感を味わえたのも、「死」だったように思います。

 死について真剣に話すほど、無意識に気にしている面子、取るに足らないプライド、下らない見栄や虚栄心といった心にかぶせた仮面というか化粧といったものが、ボロボロとはがれ落ち、驚くほど自分の素がくっきりと見えてきました。

 ちなみにこのエクストリームコミュニケーション、話す前はノープラン。話しているうちに、今まで考えたこともなかった方向に多々話が進んでいきましたが、何の準備もせず、自然体で心の赴くままに話し合いました。

 「あ、自分って、死に対してこんな考え、恐れ、理想を持っていたんだ」と、話しながら気がついていくような、不思議な感覚でありました。話す相手を選ぶテーマですし、それなりの心構えとまとまった時間、静かな場所が必要ではありますが、話し合う前と後では、きっと何かが変わっていると思います。

 なお当初、150個のテーマを用意しましたが、実際に進めるうちにダブりがあったもの、抽象的すぎるものはカット。最終的には129個のエクストリームなコミュニケ―ションを行ってきました。この連載も、次回のまとめをもって最終回。連載期間中に夫婦で読んで、よかったと思える書籍やマンガをご紹介しつつ、総括&振り返りをしてみる予定です。


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著者紹介:中山順司(なかやま・じゅんじ)

 シックス・アパート株式会社 / スキナヒト製作所 所長。1971年生まれ。Covenant College(米国)卒業後、携帯電話キャリアでマーケティングと営業に携わり、2000年にネット業界に転身。旅行予約サイト(現楽天トラベル)で観光旅行コンテンツビジネスを立ち上げ、その後始めた個人ブログがキッカケで、ブログソフトウェアベンダーのシックス・アパートに(現職)。

 2010年12月、フツーの男女のフツーの出会いをプロデュースすることに特化した、世界一マジメな恋愛インキュベーション・プロジェクト「スキナヒト製作所(β)」を設立。


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