オリンパス事件をブロック図で解説すると?プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術

ここ最近世間を賑わせているオリンパスの不正会計事件。損失隠しをしたわけですが、その兆候はBS(貸借対照表)の中の怪しい動きにありました。今回はこの不正会計をレゴブロック的に考察してみたいと思います。

» 2011年11月16日 11時00分 公開
[永田豊志Business Media 誠]

 オリンパスの不正会計事件が話題となっています。おかげで海外から見たら「他の会社もやっとるんやないか!?」という疑問を持たれることになり、多くの日本企業からすればまったくはた迷惑な話です。今回はこの不正会計をレゴブロック的に考察してみたいと思います。

 米国ではエンロンやパワードコム、日本ではカネボウやライブドアなどの粉飾決算、売り上げ金の改ざん、証券取引法違反、架空取引の偽装などの事件が起こると、当局の締め付けが厳しくなります。そのせいで、内部統制、J-SOX(日本版SOX法)など社内監査に掛かる手間やコストが膨大なものとなります。

 話はそれてしまいましたが、オリンパスの事件では、バブル崩壊時の多額の損失を隠すためにほとんど価値のない会社を多額の買収金額で購入し、その後すぐに投資が失敗したとして特別損失を出しました。ちょうどリーマンショックの時期ですから、言い訳もしやすいのは幸運でした。

 損失を隠そうとすると、そのしわ寄せはどこに行くのでしょうか? それはBS(Balance Sheet:貸借対照表)の資産の部(左側)です。かならずBSのどこかに怪しい動きがあるはずです。オリンパスの場合は、これが「無形固定資産」でした(BS関連記事:時間がないならコレだけでも! 会計の勉強に図解思考)。

 BSの資産には、1年以内にお金に換えられる流動資産、すぐにお金にかえられない固定資産の2タイプがあります。流動資産は「現金」「売掛金」「棚卸資産」などがあります。固定資産には、工場や車などの「有形資産」、営業のれん代などの「無形資産」、対外への出資や貸付などの「投資」があります。このどこかが、肥大化するのです。

 不正会計でよくあるパターンは、ありもしない売り上げを見せる「架空計上」、必要以上に棚卸資産をつむ、などが常とう手段です。架空計上があると売掛金がやたらと増えたり棚卸資産が操作されている場合は、在庫の回転率がやたらと悪いなどの症状が出てきます。そうなると、BSの現金以外の資産にあやしい増加が見て取れます。

 オリンパスの場合は、それが730億円かけてほとんどその値打ちのない3つの会社を買ったプレミアム代金が営業のれん代として「無形固定資産」に大きく計上されているのが分かります(実際には、経営が悪化したという理由で買収の翌年にすぐ大幅減損しているため、その差額が粉飾に使われました。また、この買収には短期借入によって実行しています)。

オリンパスの会計をレゴブロック的にざっくり表したもの。視覚的に理解してもらうよう、あえて数字は省きます

企業の成績は主に利益

 利益は売り上げ―売り上げ原価です。利益を増やそうとすれば、売り上げを増やすか売り上げ原価を減らすほかありません。そのため、手元現金は増えてないが売り上げが増えたように見せる「売掛金の水増し」、売れないからコストとして償却しないといけない在庫を、まだ可能性があるとして「棚卸し資産の水増し」、オリンパスのように、普通では考えられない金額で企業や知財を購入したりするのです。しかし、それは絶対、BSの左側に「不審な動き」として出てきます。

 皆さんも、企業に投資するとき、取引するとき、あるいは就職するときに「BSの不審な動き」に目配りができるよう、注意して見てみてください。

集中連載『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』について

『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』 『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』(永田豊志・著、中経出版・刊、A5判/208頁、本体1500円)

 パワポの前に「図」で考える――。ベストセラー『頭がよくなる「図解思考」の技術』の第2弾となる本書は、プレゼンテーションの根幹とも言える「メッセージをどう作り、どのように伝えるのか」を図で整理する方法を解説しています。

 「見栄えのいいスライドを作ること」や「説得力のある話し方をすること」も当然大事ですが、プレゼンの目的(メッセージ)そのものが洗練されていなくては、聞き手の心には届かないからです。営業プレゼンテーションや講演に限らず、ちょっとした説明や商談、または報告などにも応用可能で、あらゆるビジネスシーンで活躍するはずです。


目次

  • 第1章:残念なプレゼンは、なぜ眠たくなるのか?…面白いプレゼンの秘密とは?
  • 第2章:考えがスッキリまとまる図解プロットの技術…自分の考えを整理する方法
  • 第3章:「合体ロボ作戦」でシナリオに磨きをかける…プレゼンの流れを作り出す
  • 第4章:魅力的なスライドラフを描いてみる…ハイクオリティなラフ描きの技術を公開
  • 第5章:図解プロットに挑戦!…実際に、考えをまとめ、シナリオを作り、ラフを描く
  • 第6章:魅力的なアイデアを作り出す10のテクニック…使えるアイデア発想法

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com

Twitterアカウント:@nagatameister


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