トップビジネスパーソンはなぜ「走る」のかRe:Work !(4/4 ページ)

» 2013年01月18日 10時00分 公開
[三河賢文,Business Media 誠]
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スポーツがあったから、会社の“つらい時期”も乗り越えられた

 金子陽三さんは大学卒業後、証券会社にて金融機関の資金調達や事業法人のM&Aに従事。さらに米国ベンチャーキャピタルでの勤務を経て、2002年にアップステアーズを設立し代表取締役に就任した。2004年に同社をネットエイジキャピタルパートナーズ(現・ユナイテッド)へ売却した後、に2007年にはモーションビート(現・ユナイテッド)取締役兼執行役COO兼投資事業本部長に就任。2009年2月より同社代表執行役社長を経て2012年12月より同社代表取締役社長として活躍している。まさに多忙な毎日を送っている金子さんだが、空いた時間を見つけてはトレーニングを積み、大会へと挑戦を続けている。

金子陽三(かねこ・ようぞう)さん(36歳)

ユナイテッド(東証マザーズ上場)の代表取締役社長COO。国内外において、メディア事業、RTB広告事業を展開している。


――「走ろう」と思ったキッカケは?

 もともと友人の影響で2010年初旬からキックボクシングをしていました。それまで運動なんで興味もなかったのですが、少しずつ「運動って楽しいな」と感じ始めて。そんなとき、キックボクシングを楽しむ僕を見た別の知人に「そんなに運動が好きなら、トライアスロンやろうよ!」と誘いを受けたんです。

 そう、マラソンより先に、私はトライアスロンに挑戦したんです。トライアスロンに初めて挑戦したのは、2011年の石垣島トライアスロンでした。走る競技はそれが初めての経験です。

 挑戦したのは、オリンピック・ディスタンスと呼ぶ「スイム1.5キロ+バイク40キロ+ラン10キロ」の合計51.5キロ。この大会でトライアスロンの面白さにハマり、同年内に計4つのトライアスロン大会に出場しました。

 それからハーフマラソンを走り、ウルトラマラソンで100キロに挑戦。なぜか、フルマラソンはその後に走っています。

――どうやって、トレーニングの時間を確保しているのですか?

 トレーニングをするのは平日夜間や週末。仕事が長引くと0〜1時ごろに走ることもありますね。睡眠と同じように、走ることが習慣化しているんだと思います。

 走ることは楽しいですし、大会ではもちろんしっかりと走りたい。だからこそ、トレーニングも手は抜けません。ただ最近はなかなか走る時間が取れずにいるので、そうなると非常にもどかしいですね。

――なぜ「走る」んですか?

 キックボクシングを始めたころ、ちょうど仕事で会社の建て直しをする時期で、大きなリストラなど精神的に少し追い詰められていました。しかし仕事が大変だからこそ、スポーツで体も一緒に追い込んでしまうと、なんだかバランスが取れるんですよね。恐らくスポーツがなかったら、精神のバランスが取れなかったな……と思うシーンもあります。

 そういう意味で、走ることは仕事を含めた全体のバランスを取るのにも役立っているんだと思います。また走ることとビジネスは、共通点も多い。競合を含め、会社は持ち得るスピードとエネルギーを投下して取り組んでいます。それに対し、私も同じく取り組んでいかなければなりません。

 マラソンもトライアスロンも、持てる力を総動員して勝負する意味では同じなんですよ。だから、スムーズにハマれたんだと思います。ただ、走っている途中はしんどいですけどね(笑)。

 でもスタート前の高揚感やゴールしたときの達成感は、他からは得られないものです。どんなにつらいと感じても、この感覚を味わうとまた先へ進もうと思えるんです。それに走ることを始めたことで、仲間にも恵まれました。同じゴールに向かう仲間がいるのは、それだけで価値がありますよね。

 そもそも私は「できないことができるようになる」ことが大好きなんです。実際私は泳げなかったのですが、克服してトライアスロンを完走しました。

――何かメッセージをお願いします

 働くことや人生を楽しむポイントは、何でも良いから「はみ出してみる」ことだと思います。取りあえず、自分から「変える」「やる」こと。そうしないと、楽しみなんて見つからないんじゃないでしょうか。

 そして何かを始めたら、新しい景色が見えるまで突き詰めてみること。結果として自分には合わないと感じても、突き詰めることで得られるものはあるはずです。

 例えば私は、同じレストランへできるだけ行かないようにしています。すると必然的にいろんな場所の情報を調べられますし、新しいお店に行けば新しい発見が得られます。ささいな変化でも、これまでとは違った毎日になるんですよね。

 今後も走ることは続けますし、さらに想像を絶するようなレースにチャレンジしてみたいです。例えば、砂漠のレースなんか最高じゃないですか。目標を定めて本気で取り組めば、きっと何かが見えてきますよ。


 今回インタビューした3人は、私と同じくトライアスロンとマラソンに取り組む仲間だ。しかし競技に向けた思いやキッカケは、それぞれに異なる。そんな中でも、競技にチャレンジすることが仕事を含めさまざまな場面へプラスの相乗効果を与えていることは、全員から話を聞く中で伝わってきた。

 走ることに限らず、仕事以外にも熱中し、そして大事な何かを得られるものに挑戦すること。これは仕事を楽しみ、人生を充実させる上でとても大切なポイントなのではないだろうか。そのためには、まず何かに取り組んでみること。そうしなければ、自分にとって大切なものに巡り会える可能性は低い。

 私は先にも述べたように、今回紹介した小野さんとの出会いをキッカケに走り出した。最初はマラソンだけのつもりだったが、これまた人との出会いからトライアスロンに挑戦している。

 では、どのようにしてそのキッカケを得たのか。実は小野さんがゴビ砂漠のマラソンへチャレンジする際、その壮行会が行われていた。Twitterを通じてそのことを知った私は、「参加したい」と手を挙げてその場へ赴いた。そしてその想像を絶するチャレンジに心打たれ、再び走ることにしたのだ。これもまた、「自ら動いた」結果といえるのではないだろうか。

 今興味のあること。何かあるのなら、是非まずは取り組んでみてもらいたい。見つけられていないというなら、周囲の友人が熱中しているものに混ざってみる。もしくは、今回の連載を機に走り出してくれても良い。新しい一歩を、踏み出してみてはいかがだろうか。

著者紹介:三河賢文(みかわ・まさふみ)

 1983年岩手県生まれ、宮城県育ち。人材コンサルティング会社、Web関連会社での勤務を経て、2010年6月にナレッジ・リンクスとして独立。「時間の自由」を第一としたワークスタイルを実践中。多くのSOHOやフリーランスワーカーとパートナー関係を持ち、業務機会の提供を行っている。プライベートでは2人の子どもを持ち、マラソンやトライアスロンにも挑戦。ITやビジネス全般を中心とした執筆活動も行う。


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