3つ目は、やるべき仕事をサボる癖のある人に対処しなければならない場合。
サボる癖のある人は自分が興味のあることばかりしたり「自分にはもっと能力があるので、自分にふさわしい仕事はこれではない」などと思っていたりします。ですので、自分に任命権がある場合はその人を指導役とか監督役にしてしまいます。
やるべき仕事をサボっている人は無意識にいろいろな理由を考え出し、サボる自分を正当化しています。しかし、人がサボっているのを指摘しないといけない立場になると少し状況が変わってきます。「サボっていた自分」と、「他人に『サボるな』と言わなければならない自分」の間に葛藤が生じるのです。
すると、この葛藤をなんとか正そうとする働きが心理的に起こります。「サボる自分」と「『サボるな』と言う自分」のどちらに合わせるか、となるわけです。自己評価が高い場合には後者のほうが勝ちます。
そして、指導者役をこなしていくモチべーションが高くなるのでサボることがなくなっていきます。これは「認知的不協和」を利用した方法で、誰かに自発的に仕事をさせるために使える、巧みな方法の1つです。
認知的不協和とは、個人の持つある認知と他の認知との間に不一致や不調和が生じることを指します。その結果、不協和を解消したり低減しようとして行動や態度に変化が起こるのです。
最後は、自分に嫌がらせをしてくる相手をどう黙らせるかという場合です。
攻撃してきたり嫌がらせをしてきたりする人がいたら、あえてその人に直接、その嫌がらせの内容についてアドバイスを求めてみるのです。
「アドバイスをしてあげる」というのは、相手があなたに「投資する」ということです。投資をするとき、人間は報酬を期待します。つまり「アドバイスが役に立つ」ということを期待するのです。嫌がらせや攻撃を続けていると、アドバイスが役に立ちません。
また人間は、常に自分が正しい立場でいたいという欲求を持っています。脳には自分の行動を監視する回路があって、そこが自分の行動を「良くない」と判断すると不快感を覚えるようにできているのです。
ただし、嫌がらせをしている最中はその嫌がらせを正当化しています。その結果、不快感を感じなくなったり「むしろ正しいことをしている」とまで思い込んで快感を覚えることもあります。
しかし、あなたに対して一度アドバイスをしてしまうと「自分が授けた知恵を正解にしたい」という心理が働きますから、自然とあなたに対して嫌がらせをするモチベーションが下がっていくのです。
(次回は、「本から何でも吸収する」について)
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