私ははじめに、教授たちが求める学生像について考えました。「教授はどんな学生に来てほしいと思っているか」についてです。もちろん学生には賢さを求めているでしょう。また、自分の言うことを素直によく聞くこと。そしておそらく、努力家で信頼関係を持てそうな人間であることも大切なポイントでしょう。
このように考えたとき、私は高価で派手な衣服や靴、ブランド物は逆効果だと思いました。できるだけ清楚で賢そうであるという印象を持ってもらうために、なるべくシンプルで清潔感のある服装や髪型を心がけ、メイクもごくひかえめにしました。
また、私が受験したのは理系の大学院です。実験を頻繁に行う研究室では爪を伸ばしていることが特に嫌われますから、爪はきれいに切ってマニキュアなどは塗りませんでした。
そのおかげで、院試は無事に突破できました。試験には筆記試験もあったので、見た目だけでの合格というわけではなかったでしょう。しかし、先生に与える印象は悪くないようだという感触、またそのことによる安心感や自信のようなものが試験当日にはあったので、面接試験でも落ち着いて話すことができたのだと思っています。
とはいえ、私は気を抜くとこうした清潔感のあるスタイルを忘れてしまい、ほとんど別人のようになってしまうこともしょっちゅうありました。「オンとオフの差が激しいね」と、友だちに言われることもしばしばです。場面によってあまりにも雰囲気が違ったせいか、何度か会ったことのある知人に「よろしくお願いします」と名刺を渡されたことも……。
しかし裏を返せば、服装や髪型、メイクなどを変えるだけで、まったく違う人のようになれるということでもあるのです。
「後背(ハロー)効果」という心理効果があるのを知っていますか? 外見や経歴が性格などの内面的な要素と直接関係があるわけではないのに、その人の評価に意外なほど影響を与えてしまうという心理効果です。「見た目が良いだけで、性格が良い、あるいは頭がいいと思われる」「学歴がきちんとしているだけで、人間性がきちんとしている印象を与える」などです。
さらに、アメリカの心理学者のレオナルド・ビックマンは「身なりの違いがどのような反応の違いを生むか」に関する興味深い実験結果を報告しています。
まず、電話ボックス内のよく見える位置に10セントコインを置いておきます。そして、誰かがボックスに入ってしばらくした後に「10セントコインが置いてなかったか?」と尋ねるのです。
これに対して、ちゃんとした受け答えをしてコインを渡してくれた人の割合は、こちらの服装がきちんとしたものであった場合は8割弱。逆に、汚らしい身なりであった場合は3割強と、大きな差が見られたのです。つまり、外見がだらしないと思われるとナメた態度をとられやすくなるのです。
いかがでしょうか? 人は他人を評価するとき、こんなにも見た目を重視しているのです。「私は実力で勝負するから見た目は関係ないの」と考えているあなたも、同じ実力の人がいたら見た目が少しでも良いほうが得なのです。
整形手術を勧めているわけではありませんし、絶世の美女や超イケメンになる必要はありません。ほんの少しでいいので、自分がなるべくよく見える髪型や服装を研究してみてください。また、自分ができるだけ魅力的に見える顔も練習してみてください。できれば笑顔がいいと思います。
そこに注意してみるだけで印象をかなり変えることができます。そして徐々に、周りの人が好感を持って接してくれることを実感できるのではないかと思います。
(次回は、「食べ物で脳をチューンナップする」について)
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