「お1人様3個までに限らせていただきます」の本当の意味とは?思うように人の心を動かす話し方(2/2 ページ)

» 2013年10月10日 11時00分 公開
[榎本博明Business Media 誠]
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本当に今しかないのか、冷静に考えることが大事

 本当にその期間中だけのサービスというものも少なくないが、キャンペーン中だから何でも得かというと、けっしてそんなことはない。

 毎週のように会場を変えて、

「5日間限りの……」

 と銘打って、1年中同じ物を同じ値段で売っているといったケースもあれば、キャンペーン中だけの価格というのに偽りはないが、キャンペーン以外の場で契約したという人の話を聞かないというケースもある。

 キャンペーンや特別セールのために、独自につくられた商品というのもある。そうした商品はキャンペーンや特別セール以外の場で売られることはないのだから、キャンペーン中の特別価格というのに偽りはない。だからといってお買い得かどうかは分からない。なにしろ通常価格などないのだから。

 キャンペーン中しか売らない商品を作るにあたって、売って損をするようなキャンペーン価格をはたしてつけるだろうか。ちょっと考えれば、答えはすぐ出るはずだ。

 「先着……」
 「本日だけの」
 「お1人様○○限り!」
 「キャンペーン中だけの……」

 このようなうたい文句の裏に流れるメッセージにつられないよう注意が必要だ。裏メッセージは偽りであろうと、買い手が勝手に言外の意味を汲み取るわけだから、売り手には何の罪もないことになる。

 「あわてて契約を結んだけど、全然得ではないではないか」

 と目くじらたててもあとのまつり。得だと勝手に思い込んでしまったのは自分なのだから、欲に目がくらんだほうが悪いということになる。

 金額のはる買い物や契約にあたっては「今しかない。この機を逃したら手に入らないかもしれない」などとあわてることなく、冷静に対処したいものである。


(次回は、押しつけがましくなく押しつける「両面提示法」について)

著者プロフィール:

榎本博明(えのもと・ひろあき)

心理学博士。1955年、東京生まれ。東京大学教育心理学科卒業。

東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現在、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした企業研修・教育講演等を数多く行うとともに、自己心理学を提唱し、自己と他者を軸としたコミュニケーションについての研究を行うなど、現代社会のもっとも近いところで活躍する心理学者である。

著書に、『「上から目線」の構造』『「すみません」の国』(日経プレミアシリーズ)、『「上から目線」の扱い方』(アスコム)、『「俺は聞いてない!」と怒りだす人たち』(朝日新書)、『心理学者に学ぶ気持ちを伝えあう技術』(創元社)など多数。


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