青色申告って何? 個人事業主の賢い節税を考える:大増税時代(3/3 ページ)
今回は個人事業主であれば知っておきたい青色申告と白色申告の話。現在白色申告をしている人や今後独立を考えている人は青色申告による節税を理解しよう。
コラム:サラリーマンと個人事業主はどっちがお得
本連載の第4回「確定申告シーズン到来――サラリーマンと個人事業主の税の違いを考える」で、同じ所得のサラリーマンと個人事業主の税金は大差がないと書いた。個人事業主の立場では給与所得控除のあるサラリーマンをうらやましいと思うが、税金の制度の差ではないが、税金の恩恵という側面を感じることはある。
筆者はサラリーマン生活を送っていた1980年代後半にPCに興味を持ち、1995年にPC周辺機器メーカーに転職をした。現在までに何台もPCを購入している。レース写真を撮り始めたのは30年ほど前でカメラ、レンズ、チケット、交通費とかなりの金額を趣味に費やしてきた。
サラリーマン時代は全て自腹だった。個人事業主も自腹で買うのだが、仕事と趣味が近い場合は税金の恩恵を受けられる。PCはもちろん、撮影仕事やデジカメのレビューもしているので、カメラ関係の出費は基本的に経費となる。もうかり具合によるが、20〜30%が税金として戻ってくるのは個人事業主の特権だと思っている。
小規模企業共済で年間最大84万円の節税
個人事業主ならではの節税方法は他にもある。代表的なのは小規模企業共済だ。小規模企業共済は経営者の退職金制度と呼ばれるもので、月額1000円から7万円を掛金として納めると、その年に納めた全額が控除の対象となる。
満額の7万円なら12カ月で84万円となるので節税効果は高い。掛けたお金は歳をとって廃業するときに一括や分割で受け取れる。イメージとしては年金や定期預金といった感じだ。税制の優遇があるので金利の低い預金よりはメリットは大きい。
小規模企業共済にはちょっとした裏技もある。普通に考えれば7万円×12カ月=84万円が限度額だが、浮き沈みの激しい仕事をしている人ならもうかった年にもっと多くの掛金を納め、控除額を増やせる。
筆者は12月の年払いで掛金を納めている。12月から翌年の11月までを年末にまとめて納めた場合、納めた金額が控除の対象となるので翌年分の掛金が全てその年(前年)の控除の対象となる。ようするにその年のもうかり具合によって掛金をコントロールできるように年末の年払いを選択したわけだ。
例えば今年はもうかっていないので手元に現金もないから年払いの掛金を1000円にしたとしよう。でも1月には大きな仕事が決まっていて来年は確実にもうかるなら、年明けに増額の申請をして7万円に変更すれば増額した差額の6万9000円を納められる。1月から11月まで6万9000円を納め、12月に年払いで84万円を納めれば、159万9000円の掛金を納めることになるので、かなり大きな節税が可能だ。
実際には12月まで貧乏で1月から裕福になることはそれほどないと思うが、年の途中でゆとりができれば増額による節税効果はそれなりにあるだろう。
小規模企業共済と並んで節税対策となるのが国民年金基金。もともと個人事業主が納める国民年金は少額で、将来受け取る年金も少なくなる。その国民年金に任意で上乗せができるのが、国民年金基金だ。国民年金基金も納めた全額が控除の対象となるので、もうかっているなら手元にあるお金を将来の年金として納めることで節税となる。
関連記事
- 特集「大増税時代」
- 増税は消費税だけじゃない。大増税時代の税金を理解しよう
消費税率の引き上げをはじめ、増税の話題は今や定番となっている。そもそも自分はどんな税金をいくら払っているか? 重要な所得税や確定申告のことが理解できるように、税金の基本を解説する。 - 年末調整を理解すると増税が実感できる
ちょっと遅くなってしまったが、年末調整の時期である。筆者もサラリーマン時代に年末調整の紙に記入・提出したが、その間はほぼ意味不明だったが独立して自分で確定申告をするようになり、必要に迫られて税金の知識を得て、今さらではあるが年末調整の意味を知った。年末調整の書き方と意味を知ることで税金の基礎的な部分を理解してほしい。 - 65万円の控除を青色申告で得る“超”具体的な方法(フリーソフト編)
65万円の青色申告を得るため、今回はフリーソフトを使ってみる。果たして結果は……。 - 65万円の控除を青色申告で得る“超”具体的な方法(e-Tax編)
いよいよ最終回を迎えた短期連載「イチから分かる確定申告」。最後はe-Tax編です。 - 65万円の控除を青色申告で得る“超”具体的な方法(やよいの青色申告編)
いよいよ連載も佳境。今回は、簿記などの知識のない人が青色申告特別控除の65万円をゲットする方法を考えていこう。まずは「やよいの青色申告」を使って実際に入力してみる。 - サラリーマンも個人事業主も――節税するならここがポイント
税金は「収入の多い人はたくさん納めている」「家族がいると控除が増えて減る」という構図が見えてきた。ではどうすれば効率的に「節税」できるのだろうか。考えてみよう。 - 子ども手当は増税だった――源泉徴収票の見方、教えます
一家の大黒柱の通信簿――。それが「源泉徴収票」である。1年間にどれくらい稼いだか、いくら納税したかを記している。この源泉徴収票を細かく見ると、分かることがあるのである。ぜひ手元の源泉徴収票をご覧いただきたい。 - 普段は縁のない税金を分かりやすく説明する
【短期集中連載】いよいよ今週から確定申告が始まった。個人事業主の人は避けて通れないかなり重めの作業が強いられる時期だ。サラリーマンにとって普段は縁のない税金だが、独立したら途端に自分の問題になる。そんな人に向けて、基本的なお話から初めて確定申告を行う人に向けて税金の話や確定申告の手順などを説明する。 - 国民統一番号制って必要なんじゃない
国民ひとりひとりに番号を与え、個人情報を管理しやすくする国民統一番号制。「国家による国民管理につながる」として反対する人も多いですが、ちきりんさんはそのデメリットより行政上、財政上の合理化メリットなどの方がはるかに大きいと主張します。 - 「消費税は低所得者に厳しい」ってウソだと思う
所得が多い人も少ない人も同じ税率であるため、「年収から見た負担率が低所得者ほど高くなる」と言われる消費税。しかしちきりんさんは、財政危機の今、法人税率や所得税率を上げるより、消費税率を上げる方が低所得者には有利と主張します。 - 年収別にみる、増税による負担額
民主党政策調査会に税制調査会を新設するなど、“増税シフト”を着々と固めている野田佳彦政権。増税になれば、サラリーマン家庭の負担増は避けられない。そこで第一生命経済研究所とFPに増税後の金額を試算してもらった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.