――事業の一つの柱、長い歴史のある「進研ゼミ」の生徒数が減っているようです。
子どもが学びでつまずかないように、毎月の教材と赤ペン先生によるモチベーションアップにより進研ゼミは成功してきました。実は物流システム、ITの顧客基盤システムにより丁寧に作りこまれたシステムでお客さまの満足度を上げてきたのです。
進研ゼミにはデジタルと紙の両方の講座があり、最近は事業モデルが変わってきて6〜7割がデジタル講座を選んでいます。デジタルになると、より個別性を追求できるので、子どもたちがどこでつまずいているかを、過去にさかのぼってしっかり見つけていかなければなりません。しかし、これだけではダメです。
デジタルは全てが解決できる道具ではありません。コロナ禍で学びに対する意欲が落ちています。2020年3月に実施した小中高校の一斉臨時休校のときは、学校側の準備ができないまま休校になりました。その後コロナ感染者が増減を繰り返す中で、学校行事が全て止まったため、子どもたちの成長につながる学校行事のリズムが作れなくなりました。
しかし、先生たちは学習指導要領に沿って教えなければならないので、子どもたちが理解できなくても進まざるを得ないところがありました。いまは、遅れを取り戻そうと先生がドライブをかけている状況なので宿題が多くなり、進研ゼミに取り組める時間的余裕がなくなっているのも、生徒数が減っている一つの理由だと思います。
――遅れている生徒への対応はどうしますか。
そのような生徒に対応するにはデジタルだけではなく、アナログの力が必要だと思います。どんな支援ができるかについては、進まない理由を分析することと、進め方については電話をかけてしっかり支援をしようとしています。これはデジタルではできません。
もう一つは、一人一人が何をやりたいかを考え伸ばしてあげる教育を日本は進めていかなければならないと思います。進研ゼミは基本的には教科書対応でやりますが、そこにない多様な学びを提供していきたいと考えています。
毎年、50万台のタブレットを配布しているので、これをプラットフォームにしてオンライン配信ができます。例えばプログラミングやダンスの講座、キャリアの相談など習い事授業を広げていこうと思います。「進研ゼミ=学校の教科対応」という概念、イメージを少し壊していこうと考えています。
――デジタル教育で競合も出てきています。他社にない優位性はどこにあると思いますか。
子どもへのこだわりと、モチベーションを向上させるコミュニケーションを大切にしている点に優位性があると思います。進研ゼミでは赤ペン先生に代表されるように、デジタルに加えて人による支援をしている点が違います。今度は、学校別に支援をしていこうとしています。
いま岡山県のほとんどの公立高校では競争倍率が1を切っている状況になって定員割れをしています。そうなると大学入試で推薦入学が増えて、ある意味、競争がない、受験がない高校生活を送ることになります。こうした生徒たちが学びの意欲を止めない方法を、日本の教育は考えなければならないと思います。
高校別に支援をする理由は、ほとんどの高校にベネッセのOB、OGがいるので、生徒とつながって生徒の悩みを聞いたりテストの支援をしたりして、デジタルの中にしっかりと人を登場させようとしています。そういうことはパイプラインがある当社だからできることなので、大切にしていきたいと思います。
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