――全国の児童・生徒1人に1台のコンピュータと、高速ネットワークを整備する文部科学省が進めようとしているGIGA(ギガ)スクール構想に対して、ベネッセは「ミライシード」という商品を提供しています。どのように進展させようと思いますか。
GIGAスクール構想で、義務教育ではタブレット端末は98%配られています。ただ、先生方がこれを使ってどこまで個別学習を進めるのかは、先生の働き方改革もあり、結構大変だと思います。
そこで、ベネッセは有償ソフトの「ミライシード」という教材を提供するだけでなく、ICTサポータという支援員を派遣しています。ICTサポータとは学校でデジタル学習をうまく推進するための先生をサポートするスタッフです。この教材とICTサポータのセットで支援しています。これもデジタルプラス人の支援です。
誤解を恐れずに言えば、デジタル教育では、先生も慣れていない面もあるので学校による格差も、ある意味ではあると思います。少しでもそうした格差をなくしていきたいと思います。
「ミライシード」は自治体ごとに5年単位で提供していて、順調に伸びています。いまは授業対応型と学習ドリルの2つのソフトを提供していますが、どちらもシェアナンバーワンです。
――中間決算を終えて21年度の決算の見通しはどう見ていますか。出資して約20年になるベルリッツの構造改革が思うように進まず黒字化が遅れているようです。今後はどうする考えでしょうか。
中間決算時は順調に来ていて、通期の売上高4410億円、経常利益120億円という数字は達成できるとみています。コロナ禍により休校となった学校事業と塾・教室事業はかなり数字が痛みましたが、ほぼ19年並みに戻りつつあります。特に塾・教室はそれを上回るV字回復をしています。ただ、介護事業は入居率がまだ戻っていません。しかし、長い目で見ればそれほど心配はしていません。やはりコロナ次第です。
ベルリッツは、黒字化に向けてリストラもして筋肉質化しました。伝統的な場を使った英会話教室ですが、時代の流れに乗れないのが大きな課題でした。これを新しい商品「ベルリッツ2.0」を出してデジタル学習に変えようとしています。しかし、十分に収益を上げる事業にならなければ、違う判断をしなければなりません。いろいろな検討を進めています。
――「飛び級」するような優秀な子どもに対する個別指導もしています。こうした取り組みは今後どう展開する予定ですか。
ベネッセグループに入ってもらった東京大学を目指す受験専門塾「鉄緑会」では、東大理三入学者の6〜7割が「鉄緑会」の出身です。今後は中学生にも授業規模を広げようと思っています。
また、ハーバードなど海外の一流大学を目指すために完全個別指導をするベネッセコーポレーションの学習塾「ルートH」では、毎年ハーバードに入学する5、6人の高校生のうち3、4人は「ルートH」が輩出しています。こうした領域は大きく伸びる分野ではありませんが、希望がある以上は教育を支える会社としてしっかりやっていきたいと考えています。
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