コラム
» 2008年04月03日 10時00分 公開

シャッターの原理に触れたExaktaの修理-コデラ的-Slow-Life-

手に入れたExakta Varex IIbのシャッターは布製横走り方式。先幕の緩みを調整したが露光ムラがヒドい。さらに修理を続けると、シャッター幕のスピード調整で試行錯誤することに……。

[小寺信良,ITmedia]

 シャッター不良ということで購入したExakta。シャッター幕は、布製横走り方式である。この手のシャッターは、2枚の布で成り立っている。

 フィルムを巻き上げた状態で、フィルム面をカバーしているのが先幕。シャッターを押した瞬間、この幕が右から左に開く。布なので、左側の軸にバネの力で巻き取られていくわけである。このとき、フィルム面に光が当たって感光する。指定したシャッタースピードの時間が経過したのち、今度は後幕と呼ばれる次の幕が、同じく右から左に閉じる。


photo まずは「飛び出すゼンマイ」の洗礼を受ける

 布製シャッターの仕組みは、だいたいこんな感じだ。露光時間が長いと、いったんフィルム面が全開になるわけだが、高速シャッターの場合は先幕が巻き取られ始めたら、すぐに後幕がそれを追いかけて走り始めることになる。つまりフィルム面から見れば、細いスリットが右から左に走っていくことになるわけである。

 購入したExaktaは、先幕がたるんでいたので、巻き取り側を分解することにした。カバーを開けると、フィルム巻き上げレバーにテンションを与えるゼンマイバネが飛び出してくる。機構的にはすべて歯車で構成されているので、非常に分かりやすい。


photo 内部は歯車とピンだけで構成される分かりやすい設計

 先幕が緩んでいたのを修正すると、一通り動作するようになった。途中飾りねじの頭が折れるといったトラブルはあったが、別のねじで代用した。これは後日、ジャンクのExaktaを買って交換するとしよう。

 簡単な修理で済んだと喜んで撮影してみたら、絵の真ん中が暗かったり、絵の左側が暗かったりといった、露光ムラがヒドい。どうも先幕と後幕の速度が揃っていないために、フィルム面に均等に露光することができないようだ。

photophoto 真ん中が暗い(左) 左側が暗い(右)

シャッター幕のスピード調整


photo 幕を固定するリボンが取れかかっていた

 いつも同じムラができるわけではないところを見ると、先幕後幕どちらかの速度が一方的にズレているわけでもなさそうだ。そもそも最高で1/1000秒で動作するようなものを測定器もなしに調整できるのか、という疑問もあったが、何はともあれもう一度細かく中身を見ていくことにした。

 先幕の速度ムラと思われる原因は、巻き取りのテンションを強くかけ過ぎたために、巻き取られる側の軸に固定されている幕の先端が剥がれかかっていた、というものだった。さっそくユニット全部とズボッと取り出して、軸に接着し直す。


photo ついでに巻き取り軸側も接着し直した

 どれぐらい巻き取った状態で固定するのかは、なかなか難しい。あまり余裕を持たせると、フィルム巻き上げ時に後幕との間に隙間ができてしまうし、たくさん巻きすぎると、シャッターを切ったときに後幕に追い越されて隙間ができなくなってしまう。何度もトライしてみて、ようやく適切と思える位置を割り出した。

 後幕のスピードムラの原因は、なかなか分からなかった。何度テンションをかけ直しても、しばらくすると緩んでしまう。1時間ぐらいいろいろ試して、ようやく原因を見つけた。


photo 中軸が回らないようにするピンが曲がっていた

 巻き取り軸は中軸と外軸に分かれていて、その間にバネが入っていている。中軸を回らないように固定しておいて、外軸だけが回るわけである。実はその中軸を回らないようにボディに固定しているピンが曲がっていて、テンションに負けて1回転してしまうのだった。

 曲げたものを元に戻しても、一度曲がり癖が付いた金属は強度的にも弱い。そこで六角レンチの一番細いヤツの先端を切断して、代用することにした。これで回らないようにはなったが、スピード調整がきちんとできているのかは、肉眼では分からない。とりあえず先幕とだいたい同じぐらいのテンションをかけて、テスト撮影してみることにした。

photophoto 試してみたら、ちゃんとムラなく撮れるようになっていた(左) シャッタースピードを変えても、ムラは出ていない(右)

 かなり目分量な調整だったが、実際に撮影してみるとムラなく撮れていた。先幕後幕とも、バネに対していっぱいに近いテンションがかかるようにすれば、きちんと速度が出るようだ。このアナログ設計の確かさに、舌を巻いた。

小寺 信良

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映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。


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