AppleがHTCに対して起こした特許訴訟は、Googleが真の標的だと考えられている。GoogleはオープンソースであるAndroidを「所有」していないから、端末メーカーを訴えたのではないか。
GoogleのAndroidソフトを搭載した端末を標的にした特許訴訟で、AppleがなぜHTCを狙い撃ちにしたのか。最も有力な説は、HTCがAndroid端末の製造を担っているからというものだ。
この訴訟の真のターゲットはAndroidだと言っていいだろう。Androidが、iPhoneに挑むスマートフォンの血液だとすれば、端末そのものは体だ。体がなければ血液は流れない。そんなところだ。
おかしなことに、今回の件ではHTCが体を所有しているが、Googleは実際にはその体を流れる血液を所有していない。Androidはオープンソースだ。ということは、Googleの存在は哲学的、形而上学的に言うならば、たぶん精神的なものだろう。
わたしがこの点に注目したのは、モバイル機器メーカーに関する訴訟を数多く見ているGartnerのアナリスト、ケン・デュレイニー氏の話がきっかけだった。彼は3月3日に、わたしに次のように語った。
この訴訟が結局はGoogleへの攻撃であるということには同意せざるを得ない。だがHTCを訴えたのは、実装の問題によるのかもしれない。Googleが実際にはAndroidを「所有」していないからだろう。Androidは、オープンソースプロジェクトを管理するOpen Handset Allianceの管理下にある、とらえどころのない環境だ。だから端末に載るまでは、攻撃のターゲットがない。Googleを訴えても意味はない。彼らはAndroidを管理していないのだから。Androidの機能を選ぶのは端末メーカーだ。
だからAppleは米国際貿易委員会とデラウェア連邦地裁の訴訟で、HTCに法の鉄槌を振り下ろしたのだ。Apple対HTCの訴訟の法的な問題については、New York Timesがいい分析記事を書いている。
デュレイニー氏は、この訴訟は長引くだろうと話している。訴訟の争点になっているのは、マルチタッチ技術特許など約20件の特許だ。マルチタッチはiPhoneが草分けだが、Nexus OneなどのHTC製デバイスでも採用されている。
デュレイニー氏は、確かに分かっているのは以下のことだけだと言う(カッコ内はわたしのコメントだ)。
Googleはハードを作る気はない。Nexus Oneの機能と流通方法をしっかり管理できるように、自前で同端末の販売を始めただけだ。
GoogleはAndroidで、モバイルWebの領土を広げたい限りにおいてのみAppleに挑戦するつもりだ。
Appleが最高のスマートフォン技術を束縛していることを嫌がる人々が使いたがるであろうAndroid携帯をHTCが作れなくなるのかどうか、Appleが幾つかの点でもっと積極的にGoogleを追及してくるのかどうかは興味深い。
Googleは黙って見てはいないだろう。彼らは、自分たちはこの訴訟の関係者ではないが「Android OSと、その開発に協力するパートナーを支援する」と言っている。
これまでが本気の戦いでなかったとすれば、今、それが始まるのだ。
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