世界で3万9000店舗を構えるサンドイッチ店「SUBWAY」。その日本展開を担当する日本サブウェイは、ソーシャルメディア上での顧客の声を事業展開に取り入れる“ソーシャルCRM”の仕組みを活用しているという。
「野菜たっぷり」「ヘルシー」が売りのサンドイッチを世界各国で販売するファストフードチェーン大手の米SUBWAY。その店舗数は3万9000を超え、マクドナルドの約3万4000店舗を上回り飲食業としては世界最多となっている(2013年5月現在)。
日本では1991年に、サントリーホールディングス子会社の日本サブウェイがフランチャイズ事業をスタート。同社の本部スタッフは50人ほどと少ないにもかかわらず、日本国内で現在444店のフランチャイズ店舗を展開している。
そんな日本サブウェイが力を入れているのが、ソーシャルメディア上の顧客の声を取り入れての事業展開だ。単なるキャンペーンの告知などにとどまらず、FacebookやTwitter上で顧客と直接コミュニケーションし、集めた意見を店舗や社内の担当者にフィードバックして改善につなげるといった“ソーシャルCRM”を実現しているという。その仕組みと狙いを、日本サブウェイの岩崎麻左子さん(マーケティング企画室 副室長)に聞いた。
同社が現在活用しているソーシャルメディアは、大きくFacebookとTwitterの2つ。それらのアカウントを、岩崎さんを含む2人の本部スタッフと外部委託企業で協力して運営している。
ソーシャルメディア上で同社に寄せられる顧客の声はさまざまだ。例えば、Twitterで同社のアカウント名「@subwayjp」と検索すると、「どこのお店でも野菜大盛りは可能でしょうか?」「○○店のパンがおいしかったです」など、多くの質問や意見が寄せられているのが見て取れる。
こうした顧客の声に対してなるべく早く返事するため、同社では社内にカテゴリごとのQ&Aを用意。アカウント担当者が回答できることはすぐに回答しているという。難しい場合は、社内の専門スタッフにメールで連絡して具体的な回答を寄せてもらい、それをソーシャルメディアの文脈に合うようアレンジして返信する――というフローを採用している。
一方、時には「客が並んでいるにも関わらず、サンドイッチの作成とレジ対応が1人の店員さんだけでした」など、ユーザーから店舗への不満やクレームが投稿されることも。こうした意見は社内の「VOC」(Voice Of Customer)と呼ばれる顧客対応専門の部署に集約し、営業スタッフを通じて店舗にフィードバック、改善を促しているという。
「例えば、Twitter上でお客様から『ジュースの一部が凍っていた』という指摘があったとします。もし特定の店舗に対して同じ指摘が多ければ、改善を促すよう店舗側に働きかけていきます。この場合ならジュースと一緒にスプーンを用意したり、店員向けのマニュアルを変えるなどといった対応ができるでしょう」(岩崎さん)
岩崎さんによると、同社では「ソーシャルメディア上でお客様から寄せられた不満の声は必ずVOCに伝え、営業スタッフを介して必ず店舗にフィードバックしている」という。顧客からの指摘内容に店舗名の記載がなかった場合は、直接メッセージを送って店舗名を教えてもらうなど、フィードバックのための対応を徹底しているという。
VOCはソーシャルメディアのほか、コールセンターやメールからの問い合わせも一元管理し、Excelシート上にカテゴリ別で蓄積している。そうして集めた情報を毎月の全社集会などで共有し、商品企画の強化などにもつなげているとのことだ。
日本サブウェイがソーシャルメディアに特に期待している点は、顧客からのネガティブな意見を集めることという。「店舗でお客様に声をかけるのは簡単ですが、なかなかネガティブな声を拾うのは難しい。不特定多数のお客様から意見をいただけるソーシャルメディアにはそうした機能を期待しています」と岩崎さんは話す。
「製品の不具合といった具体的なクレームが届く製造業などと異なり、われわれ飲食業はお客様が店舗で感じる心理的要素の重要性が大きくなります。したがって、店や店員の雰囲気も含めて“立体的”なお客様対応をする必要があるため、一面的ではない意見収集の場としてソーシャルメディアを活用しています」(岩崎さん)
岩崎さんによると、同社の国内店舗数は2010年からの2年半で約2倍に増加したという。「今後、1000店舗以上の展開を目指す上では、お客様の声をいかに取り込むかといった観点が一層カギになります。ネガティブな声をいかに拾い、いかに当社のファンになってもらうかという点について、今後も最重要視して取り組んでいきます」と岩崎さんは話している。
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