そこで筆者は、発表会見の質疑応答で「今後IaaSとPaaSは融合、もしくはIaaSを取り込んだPaaSがクラウド基盤市場の主戦場になっていくとの見方がある。それに対してどのように見ているか」と問いてみた。
これに対し、IBMのもとでSoftLayerを率いるランス・クロスビーCEOは次のように語った。
「確かに、これからはIaaSとPaaSの境界がどんどん曖昧になっていくだろう。3〜4年後には、例えば“IPaaS(アイパース)”と呼ばれるようになっているかもしれない。ただ、IPaaSになっても、われわれはさまざまな選択肢を顧客に提供していかなければならないと考えている」
クロスビー氏はさらにこう続けた。
「そうした選択肢も踏まえ、SoftLayerは今後の企業向けクラウド基盤に求められる要件を拡充してきている。その戦略の1つが、データセンターの分散展開だ。IPaaSになれば、ITインフラだけでなくアプリケーションの開発・実行環境として利用するだけに、データの置き場所と合わせて、できるだけ近くのデータセンターを利用したいという顧客ニーズがいっそう高まる。SoftLayerはそうしたニーズを見越して、データセンターを各国、さらには各都市に分散して設けていこうと考えている。現状では今年内に世界40拠点となるところが、今後さらに分散展開し、それらを1つのAPIで利用できる柔軟なデータセンター群を構築していく計画だ」
このコメントには少々驚いた。「IPaaS」という言葉に象徴されるように、すでに今後のIaaSとPaaSの融合を見据えた戦略を描いているからだ。同氏はデータセンターの広域展開でキーになる分散技術についても、強い自信をのぞかせていた。
さらに筆者はもう1つ、「IaaSとPaaSが融合するならば、IaaSにおける業界業務プロファイルなど必要ないのではないか」とあえて聞いてみた。プロファイル部分はPaaSが包含するようになると考えたからだ。この点については、日本IBMの小池氏が次のように答えた。
「今回発表した業界業務プロファイルは、まずは現状としてSoftLayerを素早く有効活用していただけるように提供した。今後IaaSとPaaSが融合していく形になっても、このプロファイルを進化させていけば、顧客にとって必ず有効なソリューションになると確信している」
こちらも「進化」という言葉に、今後のIaaSとPaaSの融合を見据えた戦略が明確にあることを感じさせられた。
IBMは、PaaSにおいては「Bluemix」を強力に推進している。SoftLayerとBluemixはすでにセットサービスの1つとなっているが、今後さらにテクノロジーとビジネスの両面で融合が図られていくとみられる。パブリッククラウド基盤市場では少々出遅れた感もある同社だが、いよいよ本格的にアクセルを踏み込み始めたようだ。
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