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三菱が作った20万円台前半の“ホームシネマDLP機”「LVP-HC900J」レビュー:劇場がある暮らし――Theater Style(4/4 ページ)

» 2004年12月10日 23時07分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 ただし、sRGBモードではやや階調の繋がりが悪くなる部分も見受けられた。また、DLPが不得手な暗部の階調に出るザワザワとしたノイズもそれなりに目立つ(もっとも通常の6セグメント型単板DLPと比べて特に悪いというわけではない)。

photo 明るいところではさほど目立たないものの、暗部の階調表現ではやや粗さが目立つのは6セグメント単板DLPでは仕方のないところか

 レンズの解像力は十分で単板のためパネルズレによるボケた印象は皆無のため、パネル解像度は720pを下回る1024×576ピクセルながらも、想像するよりもずっと解像感は高い。さすがにハイビジョンを100インチ程度に投影すると720p液晶プロジェクターとの差は感じるが、数字ほどの違いはなく、もちろんDVDの映像ならば解像度の低さを感じることはない。透過型液晶のような画素間にある格子状の影がなく、明るいところでスッキリとしてザラつき感の少ない表現もDLPならではの魅力と言えるだろう。

固定設置のユーザーは条件を要チェック

 本機の弱点を冷却ファンの動作音以外にもう一つ挙げるとすれば、それは設置性だ。本機にはレンズシフト機能がなく、投射方向の迎え角は固定。キーストーン機能による台形補正を加えない場合、正位置ではレンズセンターよりもやや上に投影画面の下端が来る。

 16:9の100インチで投影する場合、レンズセンターとの高さの差は405ミリとなる。天吊設置などで逆さまにする場合は、画面上端との高さの差(画面の方が低くなる)が405ミリとなるわけだ。やや迎え角は大きめで、たとえば棚の上などに逆さまに置いて疑似天吊設置にする場合などは、スクリーンをかなり下の方にしなければならない。天吊設置の場合も、投影したいサイズと天井高、それに金具の高さなどをよく調べておこう。

 さほど補正角度が大きくなければ、特にDVD再生では解像度低下はさほど気にならないだろうが、あまり補正量が大きいと全体的な画質に影響が出てくる。完全に正対する位置に設置できなくとも、理想的な位置に近いところに置けるかどうかは重要だ。

 逆にテーブル置きで使うのであれば、大きめの迎え角はむしろ使いやすい。ただ、本機はさほど短焦点ではないため、自分よりも前にプロジェクターを置くと画面は必然的に小さくなる。たとえばスペック表によると、投射距離2.9メートルでは80インチが最大の投影サイズとなる。

 本機はコンパクトで片付けやすく、必要な時に取り出してテーブル置きで使うのに向いたデザインになっているが、レンズシフトと長めの焦点距離がそうした使い方をややスポイルしている。

 カラーブレーキングや暗部のノイズ感などを除けば、画質には文句のない本機だが、設置性や騒音などトータルのユーザー体験では売れ筋の透過型液晶プロジェクターにはかなわない。とにかく画質、とにかく色のバランスといった向きには素晴らしくコストパフォーマンスの高い製品だが、リビングで気軽に見るには設置性も重要だろう。重視するポイントを良く見定めて選びたい。

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