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魅惑のオーディオアクセサリー麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/3 ページ)

» 2010年06月23日 10時00分 公開
[ 聞き手:芹澤隆徳,ITmedia]

スピーカーを変える 村田製作所の「ハーモニックエンハンサー」

麻倉氏: 次は村田製作所のハーモニックエンハンサー「ES105A Suono」(スオーノ)です。同社は圧電セラミックス振動板を使用したハイスピードのツィーターを5年ほど前から販売していますが、ES105Aはその最新モデル。手持ちのスピーカーにアドオンして使う、15k〜100kHzの超高域専用ユニットです。この手の製品は「スーパー・ツィーター」と呼ばれますが、同社はあえてそう言わず、「ハーモニックエンハンサー」と称しています。

photophoto 村田製作所のハーモニックエンハンサー「ES105A Suono」(スオーノ)

 私が最初に体験したのは、「レコード芸術」での取材でした。B&Wの中型機(801 III)に追加したところ、全体の透明感が増し、低音の量感や解像感もあがって驚きましたね。試しに今、聴いているのはハーモニック・エンハンサー入りのCDの音ですが、それにふたをして超高域を出ないようにしてみましょう。どうですか?

――これもすごく違いますね。ふたをすると鈍く、もったりとしますね

麻倉氏: このスピーカーはJBLの「K2・S9500」といって、世界で最高峰のものです。逆にいうなら、もともと非常に高い品質の音だったものが、ハーモニック・エンハンサーでさらに音質が向上したのですね。それが余りに効果的なものだから、使用をやめると、相対的に物足りなくなります。不思議なことに、高域だけでなく全帯域に渡って改善されています。まるで、メインのスピーカーの鳴り方そのものを変えているようです。

――話には聞いていましたが、実際に体感すると不思議です。どのような仕組みですか?

麻倉氏: 本来は人間の可聴域を超えた超音波の帯域だけを扱うユニットですが、ハーモニックエンハンサーの振幅は、普通のスピーカーよりも何千倍も早いのです。それが空気中での波形の傾きを急峻(きゅうしゅん)にしているのではないかと考えられます。特長的なのは、トランジェント特性に極めて優れ、音の立ち上がり/下がりの遅延が非常に少ないということ。このため、立ち上がり部に含まれる倍音成分や下がり部に含まれる空気感を生み出す情報が時間遅れなく再生され、全帯域を改善するとメーカーでは説明していますね。

 もう1つの特長は、心地よい音になること。脳科学者の山城先生の説を借りますと、人間の可聴帯域は2万Hzまで(年齢によって差はある)ですが、それ以上の音も体で聴いているそうです。耳からの情報と、体で感じた情報を頭の中で合成して良い音になり、α波(リラックス状態を示す脳波)が出る。つまり幸せな気分になります。

 オーディオって、説明しにくいことが多いですよね。でも、全帯域に渡って改善されていることは聴けば分かります。低域の剛性がすごく上がりましたからね。ハーモニックエンハンサーはペアで16万8000円ですが、システムトータルの価値を上げてくれるものです。「スピーカーは1つ240万円だったけど、これを追加したら980万円の音になった!」みたいな感じでしょうか。

 注意したいのは、合うスピーカーと合わないスピーカーがあることです。比較的合いやすいのはJBL製品や先ほどのB&W製品などです。つまり、オーソドックスな設計によるものです。が、もともと早い振動板を使っているスピーカーでは効果を感じにくい。つまり、金属振動板のツィーターやリボンツィーターなどを搭載しているもの。そうしたスピーカーを使用している方は、まず店頭で相談してみることをおすすめします。私はアバック新宿店でハーモニック・エンハンサーのイベントをしたことがありますが、そのとき使用したLINN(リン)のスピーカーとも相性は抜群でした。不思議なのは、10万Hzまで延びているパイオニア「S-3EX」でも効果が高かったことですが。

スリムなのにがっちり制震「Rigid Tower」

麻倉氏: 次は、アンダンテ・ラルゴの多段ラック“リジッドタワー”「Tower 503」です。同社は、元LINN社長の鈴木良氏が立ち上げた個人企業。LINNのアナログプレーヤー「LP12」を置くためだけに開発した“リジッドテーブル”が有名です。LP12のパフォーマンスを最大限に発揮させるため、軽量で堅牢、コンパクトという理想を追求した制震性の高いテーブルです。

photophoto アンダンテ・ラルゴの多段ラック“リジッドタワー”「Tower 503」

 リジッドテーブルはテーブル形状ですから機器は1台しか設置できません。しかし、検証ではアナログプレーヤーはもとより、CDプレーヤーやHDDプレーヤーを置いても音質的に良い結果が出ていましたので、多段ラック型を求める声が多かったのです。つまり、リジッドタワーはファン待望の新製品というわけです。

 リジッドタワーは、精密に組み立てられた制震設計とリジッド(固定フレーム)で安定感のあるラック。超超ジュラルミンで作られたフレームは、実際に音を聞きながら設計したというもので、低音に締まり感があり、量感も上がります。3段ラックの「Tower 503」(41万5800円)と5段ラックの「Tower 865」(49万9800円)をラインアップしています。うちでLINNの「CD12」で試しましたが、もともと優れた音のCD12から、あれほどの細部の情報が再生されたのは初めてでした。つまり機器の本当の実力を引き出す力が素晴らしい、そう思いました。

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