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「お部屋の中が暑くなってる。冷房するよ」、シャープが「ココロエンジン」を白物家電に展開ココロ配りの家電に

» 2013年07月09日 20時45分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 シャープは7月9日、ロボット掃除機「COCOROBO」のために開発したインタフェース技術「ココロエンジン」を同社の白物家電に展開すると発表した。エアコンやプラズマクラスター空気清浄機、オーブンレンジ「ヘルシオ」などに8月から順次採用する。

「ココロエンジン」を搭載する家電製品(左)。同社商品革新センターの阪本実雄センター長(右)

 シャープは、白物家電分野で「既存カテゴリーの枠を超えた商品を創出する」ため、2013年4月に健康・環境システム事業本部内に「商品革新センター」を新設。複数の商品ジャンルにわたる横断的なコンセプト展開を目指しており、その最初の成果が「ココロエンジン」を活用する白物家電群になる。商品革新センターの阪本実雄センター長)は、「従来の家電はユーザーからの一方的な指示で忠実かつ確実に動作することが存在価値だった。他方、多くの付加価値を持つモデルでも、その機能が十分に生かされているとは言いがたい。ユーザーに製品が持つ付加価値を伝え切れていないことが課題だ」と話す。

 同社が昨年夏に発売した「COCOROBO」は、音声認識機能でユーザーの意図を汲み取り、声によるコミュニケーションで自らの持つ付加価値を生かすという。「例えば、時計機能なら単純に時間を伝えるのではなく、時間に応じた“あいさつ”で知らせる。衝撃センサーの情報は、壁にぶつかったときに“イテテ”という言葉で伝える」(同氏)。親しみやすい言葉の中にさりげなく情報を付加することで、家電が持つ機能をシンプルに表現することに成功したという。

 また機器の状態や利用履歴で「気分」が変わり、話す言葉が変化するといった要素も持っている。同社が「RX-V100」(COCOROBOの上位機種)ユーザーを対象に行ったアンケートでは、65%の人が言葉を話すことで「親しみがわく」と回答したという。

「製品が持つ付加価値を伝え切れていない」と阪本氏(左)。RX-V100ユーザーの評価(右)

 もちろん、エアコンや調理家電にロボット掃除機のようなセンサー類や処理能力の高いプロセッサを搭載することは難しい。このためココロエンジンも音声認識や「気分」といった要素は省き、機器の状況やメンテナンス情報など動作に関する部分と、ユーザーに働きかける(ココロを配る)ことに的を絞った。

 例えば、空気清浄機が「お水ほしいなぁ」と“おねだり”したら、加湿機能の水タンクが空に近いということ。また、「イオン出てるよ」と見えないプラズマクラスターイオンの放出状況を知らせたり、しばらく使われないと「忘れられてるのかなぁ?」と利用状況を報告したりもする。

発表会で実際にデモンストレーションを行った空気清浄機とオーブンレンジ(左)。シャープのロードマップ(右)

 家事をする人に対するココロ配りも忘れない。オーブンレンジは調理中で忙しいユーザーに「もう少しで余熱が終わりますよ」と知らせ、洗濯機は「お洗濯、お疲れ様です」と家事をする人をねぎらう。

 より積極的にユーザーに働きかけることもある。例えば冷蔵庫に食材を詰め込みすぎていたら、「賞味期限の近い食材はありませんか?」と詰め込みや節電に関する注意を喚起。エアコンは、人の存在を検知しているのに室温が極端に高いと、「お部屋の中が暑くなってる。冷房するよ」と言って運転を始める。「今年のエアコンには熱中症対策のために監視機能を付けているが、ココロエンジンはさらに積極的に働きかけ、安全性を高める」(同氏)。

 一方、世の中には「音声ガイダンス」搭載の家電も多く存在するが、ココロエンジンはその枠には収まらないという。「従来の音声ガイダンスでは初歩的な内容を繰り返すだけで、使い方をマスターすれば不要になる。ココロエンジンでは、時間の経過によって内容を少しずつ変えていく」(同氏)。ただし、クラウド対応によるアップデートなどではなく、当面はスタンドアロンで動く見通しだ。

 シャープでは今後、高付加価値製品ラインへの「ココロエンジン」搭載を進め、搭載製品には専用のマークを付けて認知を高める方針。発表会に展示された製品ジャンルのうち、第1弾を8月に正式リリースする。

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