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新規格「HDR10+」がコンシューマーにもたらすもの――パナソニック、小塚氏に聞く(2/2 ページ)

» 2017年09月08日 11時57分 公開
[山本敦ITmedia]
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アップデートによるHDR10+対応は2017年末から

 冒頭で触れたように、HDR10+ LLCによる技術ライセンスプログラムの本格始動は来年初のCES以降のタイミングになりそうだが、パナソニックは自社のプレミアム4Kテレビの「4K PRO」シリーズをファームウェア更新によって2017年内にHDR10+対応としていくロードマップをIFAで公開した。サムスンもプレスカンファレンスの中で、QLEDを含む2017年モデルの4Kテレビをファームウェア更新によってHDR10+対応とすることを表明した。

 パナソニックはBDレコーダーやBDプレーヤーのHDR10+対応については詳細を発表していないが、小塚氏は再生機器についてはテレビよりも負担の少ない形でアップデートが可能になると述べている。テレビとプレーヤー機器をつなぐケーブルについては、HDMI2.0aに対応しているHDMIケーブルであれば買い替える必要なくダイレクト・メタデータの伝送が行えるという。

パナソニックのブースでは暗室を使ってHDR10とHDR10+の映像比較を行っていた

 テレビなどハードウェアのメーカーにとっては、HDR10+を実装してしまうと、テレビにとって大切な“画作り”を工夫する余地がなくなってしまうのではという懸念があるかもしれない。「そこは共通となる部分のほかに、各社独自の画作りが生かせる領域を確保している」と、HDR10+が差別化要素の妨げになるものではないという所は小塚氏が特に強調したポイントだ。

HDR10+がコンシューマーにもたらす良い効果とは

 HDR10+の始動はつまり、一般のコンシューマーにとって画質の良いHDR対応テレビの選択肢がさらにコスパの良い製品にまで広がるという歓迎すべき出来事と受け止めて良さそうだ。ロゴマークが発行されれば「高品位なHDR対応テレビ」もすぐに見分ることができるし、買い物の際に便利な指標にもなる。

 さらにHDR10+はHDR10との下位互換も確保できているので、HDR10+のコンテンツが登場しても、既に広く普及しているHDR10対応製品で問題なく見られることも覚えておきたい。コンテンツ側では今後、製作環境のHDR10+対応が急ピッチで進められる予定だ。UHD Blu-ray Discについては、現在規格の中にオプションとしてHDR10+を追加する方向でBDAの方にリクエストが上げられているという。

サムスンのブースにもHDR10+の先進性を紹介するデモ展示が置かれていた

 小塚氏はHDR10+を立ち上げた3社に代わって、その技術規格が「他のHDR技術と競合することを狙ったもので全くはない」と強調した。HDR10との互換性を保ちながら、例えば一つのテレビがHDR10+とドルビービジョンの両方に対応することはメーカーの企画意図と作り込み次第で自由に選べる現状に変わりはないという。

 HDR10+に関連するアナウンスはIFAが開催されたタイミングとほぼ同時期だったことから、ドイツでもHDR10+に対する反響は大きく、小塚氏も手応えを感じていたようだ。2018年の幕開け頃には参加パートナーも増え、安心して手頃な価格で購入できる高品位なHDR対応機器やコンテンツを、一般のコンシューマーが迷わず選べる環境が作られていることを大いに期待したい。

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