7月から始まった素人集団のバーチャル株取引企画「誠倶楽部」。超ビギナーとダメ投資家が「持ち金100万円」「期間3カ月」の制限内で株を買い、運用してみるという特集連動企画だ(7月9日の記事参照)。
とうとう最終回を迎えた「誠倶楽部」メンバーは土肥義則、真野裕章、高橋暁子の3人。9月21日現在のトップは真野だった。前半戦こそ減らしてしまったものの、指南役から学んだことを素直に取り入れる優等生的な買い方で、先週とうとうトップに立った(9月25日の記事参照)。真野は、「好調な銘柄」として任天堂(7974)(7月23日の記事参照)、「株主優待日確定前の値上がり狙い」で買った吉野家ディー・アンド・シー(9861)(8月13日の記事参照)、「景気に関係なく強い」というブリヂストン(5108)(8月27日の記事参照)、「原油高」で上がると期待して新日本石油(5001)など堅調な銘柄を保有してきた。このまま逃げ切れるのか。
高橋は、モバゲータウンで知られるディー・エヌ・エー(2432)の株を保有し続け、3人の中で唯一持ち金100万円を突破した。その後再び持ち金の100万円にまで戻したが、楽天(4577)(9月10日の記事参照)、ソネットエンタテインメント(3789)(9月18日の記事参照)と続けて減らしてしまい、先週はとうとう2位に落ちた。先週手にした株は「ニコニコ動画」で知られるニワンゴを傘下に持つドワンゴ(3715)だ。開始時からIT銘柄にこだわって買い続けた最終結果は?
土肥は、株式取引経験と知識を生かしたチャレンジャーであり、ゴーイングマイウェイの買い方が特徴。「円高の時は輸出に頼りすぎていないところがいい」と購入した新日本製鐵(5401)、「原油の扱い高が大きい」三菱商事(8058)の上昇があったが、マンション開発業者のエルクリエイト(3247)を買い1週間で17%以上というマイナスが響いた。最後の株として、「上げ幅の大きい」リアルコム(3247)と東京ドーム(9681)を購入し、一発逆転を図る。メンバー中唯一の株式経験がある者として、意地を見せられるか。
誠倶楽部メンバー紹介
誠倶楽部の株取引は7〜9月の3カ月間行われた。今回は最終回ということで月ごとの相場の状況や、3人が学んだことを振り返ってみよう。
超ビギナーの3人が誠倶楽部で株取引を始めたのは7月。7月は、27日に米国株の急落により日経平均株価が一時500円を超える大幅な下落となった。この頃から相場は不安定な様相を呈し、同時に円高傾向が始まった。当初、ほとんど勘と希望的観測のみで株を購入していた3人だが、3回目からは指南役に登場してもらい、徐々に株についての知識を身につけていった。最初の指南役は、カブドットコム証券の臼田琢美氏。高橋はこの時期、持ち金100万円を超えた。
真野 開始から2回までのことは正直思い出したくないです。勘だけで買うのは絶対にダメですね。最初はニュースを聞いて「上がりそうだ」と思った銘柄を買っていました。でも、決算発表の時のニュースは大切ですが、そうでない時は細かなニュースはあまり意味がないんですよね。最初の2回は土肥さんがトップですが、これは知識の差ではないでしょうか(笑)。
高橋 臼田さんのお話は目からウロコでした。「業績がいい銘柄を買う」「上がっている銘柄を買う」のは鉄則だと感じましたね。これを聞いてディー・エヌ・エー(2432)を買ったおかげで、持ち金100万円を超えたのですから。この時期に私と真野さんが買ったディー・エヌ・エーと任天堂(7974)は、業績がいいという話題で、思った通り上がり続けました。まさに手放してはいけない、今が旬の“リア・ディゾン株”でしたね」
真野 最初は僕も任天堂の株は既に上がっていたので、もう上がらないだろうと思っていました。「今買うのは割高だ」と思っていましたが、臼田さんの話を聞き、思い切って買って正解でしたね。「チャートで過去の推移を見る」なんてこれまで思いもしなかったですが、今ではきちんと見てから買うようになっています。「決算発表時には注意をする」とか、色々な情報を仕入れる必要があるのを知りました。
土肥 「チャート全体が上がり傾向の時に、少しだけ下がった時の反発を狙え」というのが印象深かったですね。僕が買ったフルキャスト(4848)は全体に下がり調子だったので、多少の反発はあってもまた下がる傾向があった……。反発の狙いどころが間違っていたことに気がつきました。第4回には株取引を休んでいますが、厳しい相場だったため、正直その後も休みたかったくらいです(笑)。
今も相場に大きな影響を与えている「サブプライムローン問題」という言葉が聞かれ始めたのがこの時期。ニュースでは毎日のようにこの言葉が流れ、相場は日を追うごとに厳しくなっていく。8月17日には前日比874円という大幅安を記録し、日経平均株価はとうとう1万5273円と1万6000円台を割り込んでしまった。
8月に登場した指南役はカブドットコム証券の臼田氏のほか、ジョインベスト証券の大竹のり子氏、マネックス証券の清水洋介氏の3人。第1四半期の決算発表があり、発表内容によって株価が上下することを知った。3人は、決算説明資料やチャートの見方、株主優待確定日などを着実に学んでいった。
土肥 サブプライムローン問題に振り回された月でしたね。8月17日の日経平均株価の大幅安もあったし、全体に下がり気味でつらい時期でした。指南役が現れる度に「更に厳しくなった」と毎週言われていた気がします。
真野 “株主優待確定日狙い”は当たってうれしかったです。指南役の言うことを参考にして買うと上がるものだなと思い始めたのがこの頃です。
高橋 指南役に話を聞いていなかったら、危険な“叶姉妹銘柄”を買っていたかもしれません。企業イメージだけで、その株を買ってはいけない、ということを考えさせられました。
また、日本の株式市場が海外の経済や円高の影響を受けるとは思いませんでしたね。海外の人たちが日本の株を買ったり、日本人が円キャリー取引※をしていて、それらが日本の株価に大きな影響を与えるとは知らなかったので驚きました。
月が変わってもサブプライムローン問題に端を発した世界同時株安は依然続き、9月の相場は上がったり下がったりを繰り返す不安定な様相を見せた。折からの原油高が株価に影響を与えた市場となった。指南役として登場したのはマネックス証券の清水氏のほか、松井証券の土信田雅之(どしだまさゆき)氏、トレーダーズ・アンド・カンパニー田中一実氏。「大幅な下落は過去と似た動きをする」こと、「株価に影響を与える3つのポイント」、「権利落ち日」などについて学んだ。
土肥 暴落時、株価が過去と同じような動きをするというのが興味深かったです。チャートの動きには、人の心理が反映されているのですね。清水さんは、「商社や鉄鋼が相場全体を引っ張り、その次に割安感がある建設や不動産が買われ、最後に時価総額が小さい小型株※が買われる」と言っていたのですが、予想通りの動きになったことに驚きました。
真野 「相場のシナリオを描くことが大切」というのも勉強になりました。行き当たりばったりではなく、どこまで上がるのか下がるのか、どこまで行ったら売ったり買ったりするのかを考えておくのは大切なんですね。
高橋 土信田さんの「企業の中身・将来性」「外部環境」「需要・テクニカル」という3つのポイントをまとめた図もとても分かりやすかったです。漠然と思っていたことがきれいにまとめられていて、なるほどと思わせられました。こんなに見るべきところがあるとは思いませんでした。
真野 多くの指南役の教えを請うてきましたが、それぞれが全然違うことを言っているのではなく、共通しているところがあるなと思いました。視点や切り口が違うだけで、それぞれに納得させられるものがありましたね。
土肥 指南役の話は全体に、投機(短期的に利ざやを得ようとする取引行為)ではなく投資(中長期的な保有のための取引行為)をしなさいということに尽きたと思います。業績を見て、決算書やIR※などの情報をできるだけ多く得るようにというのも共通していましたね。それに加えて外部要因にも注意しなければいけないこともよく分かりました。
3連休明け9月25日の日経平均は、9円高の1万6401円で取引を終えた。福田康夫新総裁が誕生した翌26日は、前日比34円高の1万6435円と、日経平均がプラスとなった。27日には前日の米国株が上昇したため、世界的な「金融市場の混乱は解消しつつある」との見方から、前日比396円高の1万6832円となった。28日は4営業日ぶりに下落し、前日終値比46円安の1万6785円で取引を終えた。
高橋 ドワンゴ 9万9100円×9株=89万1900円→10万9000円×9株=98万1000円
持ち金合計 91万7450円→100万6550円
先週比+8万9100円(+9.71%)
真野 新日本石油 1066円×800株=85万2800円→1067円×800株=85万3600円
持ち金合計 92万3200円→92万4000円
先週比+800円(+0.09%)
土肥 リアルコム 28万円×2株=56万円
→27万円×2株=54万円
東京ドーム(ミニ株) 599円×200株=11万9800円→620円×200株=12万4000円
持ち金合計 71万8200円→70万2400円
先週比−1万5800円(−2.20%)
持ち金100万円を超え、最後の最後にトップに立ったのは高橋だった。先週トップに立った真野は2番手。土肥はまたも減らし最下位となってしまった。
高橋 トップが取れて嬉しいです! 終盤2週続けてかなり減らしていたので、正直あきらめていました。
真野 とても悔しいです。出だしで失敗をしてしまったのが響きました。今から始めたら、絶対にトップを取れますよ(笑)。
土肥 株取引経験があるのに、このぶざまな結果は悔しいですね。株取引の難しさを、改めてこの企画で痛感しました。
高橋 私の場合は、週で10万円以上増えたこともあるし、7万円近く減ったこともありました。サブプライムローン問題や為替など外部要因が株価に大きく影響したのには驚きました。
真野 この企画が始める前、「株取引は怖い」というイメージがありました。ですが、業績が堅調な銘柄を買っていけば、僕でも運用ができるんだなとも感じましたね。
土肥 真野君は段々いい買い方をするようになりましたね。1番成長したんじゃないでしょうか。僕は、せっかく勉強したので、今後は土信田さんの3つのポイントの図を見て分析しながら買っていきたいと思います。次こそは失敗しません。
真野 大竹さんの話で、「生活費の半年分くらいを預貯金にして、それ以外は投資に回すといい」という話があったので、僕もお金を貯めて堅調に投資をしてみたいと思います。
高橋 ニュースを通じて、それが株価に与える影響が分かるようになりました。次はぜひリアルで取引してみたいと思います。
さてここで、「手数料と税金」の話をしてみよう。誠倶楽部はバーチャル取引ということもあり、手数料も税金も考慮しないルールになっていた。しかし、実際に株を売買する場合には手数料が必要だし、税金もかかってくる。誠倶楽部がバーチャルではなく、実際に証券会社で売買したとすると、以下のようになる。
高橋の結果は100万6550円だったが、ここから手数料1万6310円と税金1万2600円を差し引くと、97万7640円と100万円を割ってしまう。真野は92万4000円から手数料1万2600円と税金5680円を引くと90万5720円。土肥は70万2400円から手数料1万3650円と税金2080円を引くと、68万6670円という結果となる。
今回は、松井証券の手数料を参考にした。松井証券の場合、1日の売・買を合わせた約定代金合計により手数料が決定する「ボックスレート制」(範囲料率制)となっている。つまり、1日の約定代金合計が一定範囲なら、何回取引しても定額料金となる。また、利益が出た場合はその利益に対して10%の所得税がかかることになっている。
松井証券手数料(ボックスレート)
1日の約定代金合計金額 → 手数料(税込)
10万円まで→0円
30万円まで→315円
50万円まで→525円
100万円まで→1050円
200万円まで→2100円
100万円増えるごとに1050円加算
1億円超→10万5000円(上限)
誠倶楽部は週単位の売買をする短期運用型の企画だったため、3人は短期間で株を売買していた。しかし、中長期間に株を保有する個人投資家も多いはずだ。そこでもし、誠倶楽部のメンバーが、最初に買った銘柄を持ち続けた場合はどうなったのかをシミュレーションしてみた。
高橋はミクシィを95万3000円(7月9日)で買っている。9月28日のミクシィの株価は100万円。この日まで保有していたとすれば所持金は104万6550円。3カ月間売買した結果(100万6550円)より、ミクシィ株を保有していた方が収益を上げられていたことになる。
土肥が最初に買ったのは、フルキャストとテレビ東京。フルキャストは16万2000円(同)で購入したものの、9月28日の売値は7万3000円と大幅に下落した。一方、200株買ったテレビ東京4090円(同)を9月28日に4310円で売ったとすると、持ち金の結果は94万8500円。3カ月間売買した成績(70万2400円)と比較すると、保有しておけば24万円6100円の損失を防ぐことができたわけだ。
真野はファーストリテイリングを8400円(同)で100株買ったものの、9月28日の売値は6630円。また、235円(同)で500株買った関西汽船も、9月28日の売値は169円なので、持ち金合計は78万7900円。3カ月間売買の結果は92万4000円だったことから、結果的にこの2銘柄を売っておいて良かったといえる。
超ビギナーとダメ投資家の集まりだった誠倶楽部の3人も、3カ月を経て成長したようです。また機会があれば、どこかでお会いしましょう! この企画全体についてのご意見・ご感想はこちらから。また記事へのトラックバックもお待ちしています。
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