「そんなことできるわけない」、それでも“ケータイらしさ”を貫いて完成した「IS03」:開発陣に聞く「IS03」(2/2 ページ)
「ソフトとハードの両方で技術者とここまでぶつかり合ったのは久々」というほど、IS03は隅々までこだわり抜いて開発された。「使いにくそう」というスマートフォンの障壁をなくすために注力したポイントとは。シャープに聞いた。
メールと文字入力をさらに使いやすく
ワンセグ、赤外線、おサイフケータイはもちろんだが、これまでのauケータイでも利用できたオムロンの歩数計を内蔵しているのも便利なポイントだ。この歩数計では「走行時の一歩」と「歩行時の一歩」を区別し、適切なエクササイズ量を割り出してくれる。端末を振るだけでは歩数がカウントされないので、より正確に計測できる。また、従来のauケータイでは1カ月分の歩数履歴しか残らないが、IS03では2年分の履歴が保存される。「歩数計は専用のマイコンを使っており、CPUはスリープさせたままカウントするので、低消費電力を維持したまま常時計測できます」(中田氏)
メールアプリは、IS01ではEZメール、Cメール、PCメールを1つのアプリに統合していたが、IS03ではケータイから乗り換えても違和感なく使えるよう、EZメールとCメールは「メール」アプリ、PCメールは「PCメール」アプリに分けている。「受信したCメールには『C』のアイコンが付くなど、使い勝手もケータイに近づけています。また、自分あてにテストメールを送れるよう、あて先にプロフィール(自分のメールアドレス)を引用できるようにしています」(中田氏)
日本語入力システムの「iWnn」は他社製品と共通の部分が多いが、シャープ独自の機能として、カーソルの移動回数と連動して変換候補を絞れる「ワイルドカード」や、誤入力の補正機能を備えた。補正機能では、例えば「あすた」と打って「補正」を選ぶと、「明日」が候補に現れるといった具合だ。
ちなみに、シャープケータイといえば、日本語入力システムでは「ケータイShoin」がおなじみだ。ケータイShoinにはT9のように「あ」行の言葉だけで変換できる「ワンタッチ変換」など便利な機能を備えており、スマートフォンへの搭載も期待されるが、今のところその予定はないという。「きめ細やかな機能は段階的に進め、まずは基本的な機能を充実させていきます」(中田氏)
隠れた便利機能として、ロック画面の状態でシャッターキーを長押しするとフォトライトが点灯し、音量調節キー(下)を長押しするとマナーモードの設定ができる。
IS01よりも“ケータイらしい使い勝手”を目指した一方で、省かれた機能もある。プリインストールされている「Documents To Go」は、IS01ではファイルの簡易編集やPDFの閲覧ができたが、IS03では「一般ユーザーを対象にしたため」(中田氏)、PDFの閲覧機能は省いている。PDFファイルはAndroid マーケットから「Adobe Reader」(無料)をインストールすれば閲覧できるが、知らないユーザーは戸惑うかもしれない。
もう1つサービス面で惜しいのが、グローバルパスポート(CDMA)に対応しているものの、「開発期間と本体サイズの問題」(中田氏)からGSMローミングには対応していないこと。IS01はそもそもグローバルパスポートに対応していなかったので、CDMAローミング可能になったことは進化点だが、003SHが3G+GSMローミングを利用できることを考えると、やや残念だ(SH-03CはW-CDMAのみ対応)。
OSアップデートは重要な課題
ここ最近は、AndroidのOSアップデートの話題を見聞きすることが増えた。 前モデルのIS01ではAndroid 2.1へのアップデートを行わないことが発表されて話題を集めたが、IS03は来春にAndroid 2.2へのアップデートを予定している。中田氏が「アップデートは大きな課題」と話すように、メーカーにとってもOSアップデートは重要事項だ。
ソフトバンクの003SHは発売当初からAndroid 2.2を採用しているが、IS03でも2.2を採用することは検討しなかったのだろうか。「IS03はAndroidの標準プラットフォームをなるべく生かした形で開発しています。完成度を上げるためには開発期間が必要なので、まずは2.1を採用しました。ケータイに慣れている方でも安心して使ってもらえるスマートフォンを早く出すことを優先しました」と中田氏は話す。「アップデートの予定は初めから考慮していた」とのことなので、UIも含め、2.2でどこまでバージョンアップするのか期待したい。
シャープはAQUOSケータイやAndroidベースの「点心」OSを採用したスマートフォンを中国に投入するなど、海外展開も積極的に行っている。IS03も海外に投入することが期待されるが、高橋氏は「IS03をベースにしたモデルを海外で出す可能性はありますが、日本仕様のワンセグやFeliCaの扱いをどうするかを決めなければなりません」と慎重な姿勢。世界でGALAXY Sを発売しているSamsung電子は、韓国向けには携帯向けデジタルテレビ放送の「T-DMB」を搭載しているが、日本向けにはT-DMBを省いたものを開発している。であればシャープも……と思うのは安直かもしれないが、日本以外の国にローカライズされたIS03も見てみたい。
IS03で順調なスタートを切り、春モデルとして小型の「IS05」も発表されているが、今後のモデルにも期待が集まる。次の発表は夏モデル……となると、防水性能の実装も予想される。「今後は市場の要望とKDDIさんの戦略を考える必要があります」と中田氏は言葉を選ぶが、「Androidなので、まずタッチパネルは必須。そこで快適に操作をするために液晶画面を大きくすると、どうしてもサイズが増すので、どこまで薄くコンパクトにできるかは課題の1つです」と話す。「Androidを生かした新しい使い方、タブレットのような端末もありかもしれません」
「ソフトとハードの両方でここまでぶつかり合ったのは久々」と中田氏が話すように、IS03では目標とするサイズの実現と、ケータイらしく使えるソフトウェアの実装にこだわり抜いた。IS03を手に取れば、そんなシャープの技術の粋を感じられるはずだ。
関連キーワード
IS series | メール | au 2010年秋冬モデル | IS03 | Android | シャープ | アプリケーション | IS01 | 歩数計 | CDMA | 便利 | 入力技術 | PDF | ローミング | スマートフォン | GALAPAGOS 003SH | Android 2.2 | au | グローバルパスポート | GSM | 日本語入力 | ワンセグ | Adobe Reader | Android 2.1 | Galaxy S | 海外展開 | IS05 | KDDI | ローカライズ | マイコン | オムロン | おサイフケータイ | 省電力 | LYNX 3D SH-03C | T-DMB | タッチパネル | ユーザーインタフェース | W-CDMA
関連記事
27万人が購入宣言:日本人向けに作ったことがハマった――アキバヨドバシで「IS03」解禁セレモニー
感無量――。KDDIの田中孝司氏がそう第一声を発したように、まさに満を持しての発売となったauのスマートフォン「IS03」。ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaでの発売セレモニーで、田中氏はあらためて意気込みを語った。KDDI、「IS03」「REGZA Phone IS04」のAndroid OSアップデートを明言
KDDIが「IS01」「IS03」「REGZA Phone IS04」のOSアップデート対応状況を公表した。「jibe」も使えない?:KDDI、IS01のOSバージョンアップは「実現不可能」
KDDIは、Androidスマートフォン「IS01」のOSバージョンアップは行わない方針であることを明かした。同社は「快適な操作性を実現できないと判断したため」と説明している。スマートフォンはデバイスで差別化、コンテンツは“GALAPAGOS”を訴求――シャープ
2010年度の冬春の商戦期に向けて、国内メーカー最多となる5台のスマートフォンを投入するシャープ。同社が目指すスマートフォン事業、そしてコンテンツプラットフォーム「GALAPAGOS」との関係とは。シャープの大畠氏が説明した。写真で解説する「IS03」(外観編)
KDDIが1台目用途を目指して投入するシャープ製のAndroid端末「IS03」は、フルタッチ型の正統派ともいえるスマートフォン。まずは外観の主なポイントを見ていこう。写真で解説する「IS03」(ソフトウェア編)
「おサイフケータイ対応」が大きなトピックのIS03だが、“auのAndroidスマートフォン”としては何が進化したのか。ホーム画面や基本機能のほか、au one ナビウォークやLISMOについても調べた。「IS03」ロードテスト:第1回 初期状態だともっさり? ならば……ホーム画面のUIを変えてみた
IS03のホーム画面には、Ocean Observationsが開発した独自のユーザーインタフェースを採用している。非常に工夫されているのだが、どうも動作がキビキビしているとは言い難い。そこで、ホーム画面のUIを変更してみた。「IS03」の“ここ”が知りたい:第1回 着信ランプの色数、メモリ液晶に表示できる情報は?――「IS03」
日本の独自機能を豊富に備えたauのシャープ製スマートフォン「IS03」。ケータイではおなじみの着信ランプはどこまで設定できるのだろうか。このほか、メモリ液晶やフォントなども調べた。料金やサービスの注意点は?:「IS03」を購入してきた
予約ができなかったので、発売日に「IS03」を入手するのは半ば諦めていたが、取材に訪れたヨドバシカメラ マルチメディアAkibaでまさかの当日販売分をゲット。さっそく購入リポートをお届けしよう。「IS03」発売――「毎月割」適用で実質2万7000円
auのAndroidスマートフォン「IS03」が発売された。都内量販店では、「毎月割」を適用した場合の実質負担額が2万7000円と案内されていた。FeliCa、ワンセグ対応のAndroidケータイ「IS03」、11月26日に発売
auがワンセグやFeliCa、赤外線通信などを搭載したシャープ製のAndroid端末「IS03」を11月26日に発売。日本市場のニーズに対応した“メインで使える1台”として訴求する。5インチ液晶搭載のシャープ製Android“スマートブック”――「IS01」
au初のAndroid端末として登場するのが、シャープ製の「IS01」だ。5インチの大型液晶やQWERTYキーボードを搭載し、ノートPCのように利用できる操作性を目指した。「au one ナビウォーク」や「セカイカメラ」など、auならではのAndroidアプリにも対応している。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.