スマートフォン時代の新生KDDIは「マルチデバイス」「マルチネットワーク」を目指す――KDDI 田中社長に聞く:新春インタビュー(3/3 ページ)
2010年前半は厳しい戦いを強いられたKDDI。しかし、2010年12月に小野寺正氏から田中孝司氏へと社長が代わり、スマートフォンを中心とした商品ラインアップをそろえる戦略へと大きくかじを切った。2011年、KDDIはどう戦っていくのか。新社長の田中氏に聞いた。
法人向けのスマートフォンとモジュールのビジネス
―― コンシューマー市場でのスマートフォンは盛り上がってきていますが、一方で、法人市場ではフィーチャーフォンがいまだ主流です。KDDIは今年、法人市場にどのように取り組まれるのでしょうか。
田中氏 僕はコンシューマー市場よりも法人市場の方が、スマートフォンの可能性は大きいと考えています。これまでもKDDIではフィーチャーフォンでの法人向けモバイルソリューションの開発を行ってきたのですけれども、ここでの展開はむしろ(電話機ではなく)IT機器のスマートフォンやタブレット端末の方がやりやすい。
―― 電話ではなく、ITソリューションとして訴求していくということですか。
田中氏 ええ。法人向けの電話サービスとしてはこれまでも「ビジネスコールダイレクト」などを展開し、企業の内線ソリューションを取り込んできています。しかし、今後はデータ通信分野をもっと開拓していかなければなりません。そこでは企業の情報サービスのクライアントとしてスマートフォンを位置づけることで、新たな展開が広がっていくと考えています。
―― その場合、KDDIとしての差別化ポイントや競争優位性をどのように打ち出すのでしょうか。法人向けのPC導入のように、価格以外での差別化が難しくなりませんか。
田中氏 法人向けスマートフォンでの差別化ポイントは、「よいユーザーインタフェース」と「ビックパイプ(インフラ回線の太さ)」だと考えています。あとは法人向けの「クラウドサービス」になるでしょう。
―― 法人向けではもう1つ「通信モジュール」の分野も今後が注目されていますが、こちらの取り組みはいかがでしょうか。
田中氏 通信モジュール市場は今まさに開拓期で、KDDIでもB2BからB2B2Cまでさまざまなものを展開しています。
その中で、僕が通信モジュール市場で有望な分野だと考えているのが「センサー」です。例えば、監視カメラや家電などもある種のセンサーなわけですね。これらのセンサーに通信モジュールが入り、多様な情報をクラウドサービスにアップロードする。そうすることでクラウドの可能性がさらに広がるのではないかと考えています。
―― センサーネットワークですね。
田中氏 そうです。センサーはもっと広く捉えた方がいいと思います。例えば、自動販売機に通信モジュールを搭載するのでも、販売管理やキャッシュレス決済のために使うだけでなく、自販機に搭載した各種センサーから情報を収集してクラウドに送る。そして、クラウド側で集まってきたセンサー情報を加工することで、今後さらなる飛躍が望めるのではないかと考えています。
―― そういったセンサー情報を収集・加工するプラットフォームやクラウドサービスを、KDDI自らがやっていくということでしょうか。
田中氏 いいえ。そこは我々だけでなく、さまざまなパートナーと一緒にやっていく世界だと思っています。もちろん、インフラやサーバをお貸しするという点では、KDDIは豊富な設備を持っていますのでそれを活用していけます。しかし、集めたセンサー情報から付加価値を作るという部分は、パートナーと協力し合う形になるでしょう。一歩一歩、事業化を考えていきたいですね。
おもしろい時代をシェアしていきたい
―― 2011年はモバイルIT業界にとって、どのような位置づけの年になるのでしょうか。
田中氏 今年のテーマは「変化」だと思っています。今までモバイルIT業界で当たり前だと考えられていた物事が、がらりと変わっていくでしょう。
その上で、重要なキーワードになるのが、「マルチデバイス」と「マルチネットワーク」です。これが今までのビジネスモデルの幅を広げていく。縦割りから、マルチですべてを考えることが大切になっていくでしょう。そして、2012年から振り返った時には、あとからその変化に気づかされるような年になるでしょう。
KDDIとしては、この変化を先頭でリードしていく。そういうキャリアにしたいというのが、(社長である)私の想いです。
―― その先陣を、IS seriesをはじめとするスマートフォンが担っているわけですね。
田中氏 IS seriesはまさに「始まり」ですね。ここをスタート地点にして、我々KDDIが、マルチデバイス・マルチネットワークの時代を切り開き、それらをお客さまが使うマルチユースの世界を作っていきたい。そして、これから面白い時代を、皆さまとシェア(共有)していきたい。これからのKDDIは、オープンな姿勢で、多くの価値を多くのお客さまやステークホルダーの皆さまとシェアしていく会社になっていきます。
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