「小さくできた理由はワンチップ構成。コンパニオンチップは使わず、すべてMSM6100で動作させています」と元木氏。動画の録再生やアプリの高速動作を実現させるため、画像処理用のチップやSH-MobileなどのサブCPUを搭載する端末が多い中、メインCPUひとつですべてソフト処理させている。これがボディの小型化にも貢献した。
ただし、ソニー・エリクソン製端末独特のレスポンスの良さは失われていない。動画撮影もS/Mサイズが可能で待ち時間もそれほど長くない。再生はLサイズまで対応する。
A1402S独自の機能が赤外線通信だ。ドコモやボーダフォンも対応端末を出しているため、KDDIの出遅れ感は否めない。しかし、後発だけにチューニングは万全だ。
「パフォーマンスを重視した。他社のものを見ると、まだまだ高速化できる余地が大きい。A1402Sではほかより30%以上速い転送スピード。業界最速」だと、ソフトウェア周りを担当した設楽英彦氏は話す。
著作権保護されているものを除けば、送受信できるファイルに制限はなく、データフォルダ内のファイルならやりとりできる。1ファイル512Kバイトまで可能だ。
しかも“互換性”にも気を遣っている。同じ赤外線(IrDA)でも各社細かなデータフォーマットが異なるのが現状だが、A1402Sではドコモやボーダフォン端末ともアドレス帳のやり取りが可能。保証されているわけではないが、編集部でFOMA「N2102V」端末から全アドレス帳を赤外線送信したところ、A1402Sで受信して登録できた。唯一の違いは、画像の送受信だ。これはドコモがvNote形式を使いテキストエンコードしたデータをやり取りしているため。A1402Sでは「バイナリのままのOBEX通信」(設楽氏)で動画像をやり取りできる。
家電製品のリモコンとしては、IrDAのほかにコンシューマIRの送信機を搭載し、BREWアプリで機能を実現している。出荷状態ではテレビリモコンのみだが、同社メーカーサイトでDVDプレーヤーとVTRの設定データを配布する予定だ。
QRコード読み取りも、京セラ「A5502K」に続きBREW機能として搭載。マクロ切り替えスイッチは備えないため、付属のレンズを付けてコードを読み取ることになるが、動作は高速だ。また、ドコモ向けだけでなくボーダフォン向けのQRコードも読み取ってアドレス帳に登録できる。
早くからパネル交換によるカスタマイズを手がけてきたソニー・エリクソン。A1402Sは、その7世代目に当たる。名称も「着せ替えパネル」から「Style-upパネル」に。
その意図は「これまでは着ているのが正しい姿。今回は重ね着感覚」(クリエイティブプロデューサーの佐藤敏明氏)。
端末上部を覆うように透明なパネルをはめ込むことで、本体色を生かしながらアレンジを楽しめる。「デザインが違うだけじゃなく、違う世界観」を醸し出すため、ファーやヘアライン加工、革風、7色に輝くラインストーンなど、素材や質感にこだわったパネルを用意した。さらに単なるボディのデザイン変更に留まらず、メニュー画面やサブ液晶用の壁紙など、内部のグラフィックスも合わせてコーディネイトできるのは従来同様だ。
他社製端末でもドコモの「P900i」のようにパネルを交換できるものが登場するが(特集参照)、メニューまで変えられるところは、ソニー・エリクソンに一日の長がある。
A1402Sは、機能偏重の携帯電話の中で、ユーザーが心の奥で持っている“小さな携帯がほしい”という欲求にうまく応えた端末だろう。重要なのは、メガピクセルカメラやメモリカードスロットなど“なくてもいい”機能を省いて、大型QVGA液晶や押しやすい大きなボタンなど、外してはいけない点をしっかり押さえていることだ。
これまで女性向け……というと、丸みを帯びたデザインのものが多かったが、「ころころしたものよりも、エッジの利いたデザイン。かっこよさとかわいさという女性の憧れをイメージした」と元木氏。
「企画の元木さんが女性、ターゲットも女性中心。直接担当したデザイナーも女性。女性が“この世界観”を作り込んでいる」(佐藤氏)
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