「900i」の5つの課題

» 2004年04月06日 01時53分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 ドコモが主力機として投入したFOMA 900iシリーズ。“いかに素晴らしい機能が搭載されているか”ばかりがアピールされてきたが、実際に利用しているユーザーの満足度満点とは言い難いようだ。

 900iユーザーに向けて行ったアンケートの結果から、敢えて900iの不満点にスポットを当てて、シリーズにほぼ共通の課題を洗い出してみよう。

課題1:レスポンスの悪さ

 多くのユーザーが不満点として挙げているのは、“動作が遅い”ことだ。機能についての評価だけでは見過ごされることが多いが、特にF900iとN900iユーザーは操作に対するレスポンスに悪さに不満を持っている。

  • 「カメラ画像の保存がすごく遅い」(F900iユーザー)
  • 「動作が遅く、ボタンを押してから一呼吸おいてから動くのは気に入らない」(F900iユーザー)
  • 「カメラ回りのレスポンスというか、操作から保存、閲覧までの一連にもたつきを感じます」(N900iユーザー)
  • 「すべての処理が遅い。メール送信などボタンを押して2、3秒くらい固まっている」(N900iユーザー)

 なかでも50xシリーズから乗り換えたユーザーは、大幅にキーレスポンスが悪くなったと感じている。とりわけN900iは、特定のシーンでレスポンスが非常に悪くなる。電源ボタンを押しても待受画面に戻るまで数秒かかる──のは、誰もが気になるところだ。

 P900i/SH900iは、F900i/N900iに比べればレスポンスはいい。P900iは、「P505iS」などのムーバから乗り換えたユーザーの中には反応の遅さを指摘する人もいるが、ほとんどのユーザーに受け入れられるレベルだ。それでも、終話ボタンを押して待受に戻るときは1秒程度は待たされる。

 SH900iはSH50xと遜色のない速度で動作するが、新規に盛り込まれた機能──特にデコメールに対応したメール周りは待たされる感がある。アドレスなどを入力して[クリア]ボタンで戻るときは、ほかの動作が瞬時なだけに待ち時間が気になる。

 今回のアンケートで印象的だったのは、多くのユーザーがキーレスポンスについてコメントしていることだ。「遅い」というユーザーから「機敏」というユーザーまで、アクティブなユーザーほど操作感はユーザーの評価に直結している。

課題2:ソフトベースの変更〜あてが外れたP900iユーザー

 「P900i」では、ソフトウェアベースがNECと共通になったこと(2月17日の記事参照)に不満が集中している。

  • 「PDCからのPユーザーなので、Pのソフトに戻ってほしい」(P900iユーザー)
  • 「Nソフトになってとても使いにくくなった。慣れの問題もあるが、それだけではないと思う」(P900iユーザー)

 ほかの機種でも、50xシリーズから機能が削られてしまったことに不満の声が挙がった。N900iでは、PDCでは搭載されていた音声認識機能やタイマー機能がないなど、削除された機能にとまどうユーザーも。

  • 「PDCにあったタイマー機能がなくなっている。けっこう便利だったので、当然搭載されているものと思っていたら、FOMAにはなくなっていた」(F900iユーザー)

課題3:送信100K、受信10Kのメール

 第3世代携帯電話の具体的なメリットは、大幅に自由度の増したメールシステムだろう。FOMAでは100Kバイトまでのファイル添付が可能。VGAサイズの画像や15秒程度の動画「iモーション」も送信できるなど、これまでのiモードメールに比べて機能が拡張された。

 しかしチクハグなのは、受信は10000バイト(約10Kバイト)に制限されていることだ(2003年10月の記事参照)。CIFサイズ(iショットL)の静止画は約46Kバイト(P900i)。PDCの50xならばそのまま送信できるが、900iの場合は送れる場合と送れない場合がある。

 PC宛、あるいは他キャリアの携帯宛ならそのまま送信可能。しかしiモード(PDC)宛やFOMA宛の場合、「添付のファイルはiモードには送信できません」とエラーが出る。せっかくメガピクセルや2Mピクセルのカメラが付き、メールシステムも3Gなのに、壁紙サイズ(QVGA)の画像さえうまくやりとりできないのがFOMAの現状だ。

 この容量問題は、900iのデコメールでも問題を引き起こす。デコメールに対して返信する際に、相手のメールを引用するとすぐに10Kバイトの容量をオーバーしてしまうのだ。メールの本文中に画像を貼り込めるのがデコメールの面白さの1つだが、その画像も本文と合わせて10Kバイト以下でなくてはならない(2月9日の記事参照)。

 au端末では送受信100Kバイト、1X WIN端末では150Kバイト、ボーダフォンの3G端末が200Kバイトという緩い制限の中では、FOMAの受信10Kバイトはあまりにも厳しく見える。

課題4:「着モーション」は音声着信のみ

 多くのユーザーから寄せられたのが、着モーション(着うた)をメール着信時に鳴らせないことだ。これは謎の仕様でもある。

  • 「着モーションも電話の着信のみ。メールのときに使えないと意味がないと思う」(N900iユーザー)
  • 「着モーションをメールの着信に設定できない点が残念」(P900iユーザー)

課題5:「着モーション」容量

 従来から、機種ごとにメモリ管理方法が異なり、“あと何Kバイト空いているのか”が分かりにくかったドコモ端末。900iシリーズでも、それは変わっていない。

 特に問題となるのが、着メロに比べて容量の大きな着モーションの保存件数だ。900i向けの一般的な着うたは150Kバイト程度。機種にもよるが、10本〜20本程度しか保存できない。

F900i P900i N900i SH900i
イメージ 約1000枚 1435Kバイト 2000Kバイト 約90枚
iモーション 100本 50本(3380Kバイト) 100本(3165Kバイト) 100本(1.5Mバイト程度)
メロディ 500曲 22〜162曲(800Kバイト) 22〜162曲(800Kバイト) 100曲
F900iは、静止画・動画・着メロでメモリを共用している。合計メモリは約9Mバイト。各機種ともドコモは容量を数字で公開していない。上表の容量はITmedia調べ
  • 「本体保存容量が思ったよりも少ない。コンテンツが肥大化しているので、もっと本体だけで容量を増やしてほしかった」(P900iユーザー)

 KDDIやボーダフォンの各端末は、用途を分けることなくメモリを共用していることが多い。そのため、着うた用のメモリが足りなくなったら、撮影した静止画をメモリカードに逃がす──といった使い方もできる。F900iを除く900iは、静止画を削除しても着うた用に使える容量は増えない。

まだ残された課題

 F900i/N900i/P900iのウリの一つが、複数の機能を切り替えて使えるマルチタスク機能だ。メール作成中に、機能を切り替えてカメラを起動したり、iアプリのゲームをやっている最中に、機能を切り替えてメールの返事を書いたり……ということが簡単に行える。ほとんどのユーザーにとってマルチタスクの評価は高いが、iモードとiアプリを同時に使いたかったという声もあった。

 またデザインを評価しながらも、カスタムジャケットが品不足なのも問題。パナソニックの通販サイト「パナセンス」では、未だに入荷待ちが続いている。

  • 「デザイン面重視で買ったのに、カスタムジャケットが在庫がなくてほしいものが購入できない」(P900iユーザー)

 900iが数々の魅力を備えた端末であることは確かだ。特に数々の名作ゲームをそろえたiアプリのゲームは、「さすがはiモード」。多くのユーザーが、ドラクエ・FFがあるだけで十分満足だと話している。

 これまでFOMAの課題であるとされてきた、電池の持ち/カバーエリアも確実に改善されてきたようで、ユーザーからの不満もほとんどなかった。

 ただし逆にいえば、基本性能がやっと他機種と比較検討できるレベルに到達したということでもある。「ドコモが言う『究極携帯=やれる事はすべてやった』とはドコモ視点での話で、ユーザー視点ではまだまだ」。ユーザーのこの言葉には、900iの課題のすべてが凝縮されているのではないだろうか。

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