明かされた詳細なPSPの仕様(2/2 ページ)

» 2004年04月09日 19時00分 公開
[トライゼット西川善司,ITmedia]
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仕様その4「PSPのグラフィック性能はPS2相当かそれ以上」

 PSPのグラフィックスポテンシャルは、PS1よりも大幅に向上したものになると言われている。GPUに相当するユニットは浮動小数点実数演算機能に完全に対応したものになるなど、固定小数点実数ベースだったPS1とは世代が完全に異なることになる。PS2相当といっても良く、場合によってはPS2の上を行く局面も多いという。基本的なとらえ方としては「PS2クラスのゲームが携帯スタイルで楽しめる」ということでいいだろう。

PSPのGPUは、少ない頂点でなめらかな曲面表現を可能にする高次曲面パッチに対応する。カクカク状態の少ない頂点数のポリゴンモデルでもこのように滑らかな丸みを帯びた表示で画面に出力できるのだ
3Dキャラクターを別の異なる形状へ変身させるモーフィング機能もサポートされる

仕様その5「ゲームだけでなく映像コンテンツを楽しめる」

 「PSPはゲーム機ではなく総合携帯エンターテインメント機器である」というアピールは、今までも繰り返されてきた。映像コンテンツはPSPに内蔵される専用のメディアエンジンプロセッサによって再生される。映像コンテンツを格納するメディアとしてはDVDテクノロジーを活用したPSP専用の小型ディスク「UMD」(Universal Media Disc)、あるいはメモリースティックのどちらかになる。

仕様その6「PSPは携帯ゲーム機初の7.1chサラウンド出力に対応」

 PSP本体から高品位なステレオ音声が出力されるという。オーディオをメインで楽しむ使い方も想定して、ゲーム機レベルを超えたS/N比を実現するようだ。

 また、7.1chサラウンド出力にも対応する予定になっているが、当然、これは外部音声出力機器を接続した利用した状態での話と思われる。映像は外部出力させないが音声は許可する、というわけだ。

ソニーはバーチャルサラウンドに対応したヘッドフォン製品にも力を入れている。写真は5.1ch対応のコードレスサラウンドヘッドホン「MDR-DS3000」。もしかするとヘッドフォンを使ったバーチャルサラウンド出力に対応してくるかも?

仕様その7「PSPは携帯ゲーム機初のディスクベースでのソフトウェアを供給」

 PSPの主たる記録媒体はUMDと呼ばれるDVDテクノロジーベースの小型ディスクだ。直径は6センチでUDFフォーマットを採用。容量は1.8Gバイト、読み出しレートは11Mbpsとなる見込みだ。

 携帯機器で回転メディアを採用するときに問題となるのが、振動による読み込みエラーだ。長年MDをやってきたソニーとしては、このあたりのトラブル対処にぬかりはなく、ディスクメディアは耐衝撃構造を採用したカートリッジを採用し、また読み出し機構にはエラーレートが高まった時に対応するために読み出しバッファ(キャッシュ)を組み合わせている。

 PSP向けに供給されるコンテンツはゲームだけでなく、音楽や映像ソフトも計画さている。こうした新メディアへのコンテンツ提供で必ず出てくるのが著作権保護関連の話題だ。これについても、SCEは強力なコピープロテクション機能を設定していると説明している。また、UMDの書き込みドライブやブランクUMDの製造市販の予定はなく、不正コピーを物理的に排除する方針だ。

2003年E3のプレスカンファレンスでPSP専用のディスクメディアである「UMD」を公開したSCE代表取締役 社長 兼 CEOの久夛良木 健氏

仕様その8「メモリースティックは1スロットのみ」

 PSPはメモリースティックを一つだけ備える。メモリースティックは前述したように映像音声コンテンツの再生が可能であるのはもちろん、ゲームデータの保存にも活用される。容量は初期出荷時点で1Gバイト版のメモリースティックでの動作を保証する。

 なお、データ伝送作度は1.8Gバイト/秒となる。

PSPの「いいニュース」と「悪いニュース」

 ここまで見てきたように、PSPは「携帯ゲーム機」という括りを超えたスペックを備えており、実際ソニーはPSPを映像も楽曲もゲームもなんでもこなせる「新世紀ウォークマン」として市場に投入する。

 PSP向けゲーム、映像、音楽などのセルソフトはUMDで提供されるが、今回のセッションでメモリースティックからのコンテンツ再生がサポートされることが明らかとなったので、自分で所有しているコンテンツをPSPで持ち出して楽しめることも出来そうで一安心だ。

 さて、いくらPSPが「ただの携帯ゲーム機でない」といっても、裏を返せば「携帯ゲーム機として成り立ってくれないと、カッコがつかない」ということでもある。やはりゲームコンテンツは重要なのだ。では、PSPにはゲームが潤沢に登場してくるのだろうか。

 これに関してSCEAは「いいニュース」と「悪いニュース」の両方を語った。

 いいニュースは「PSPの性能がPS2に肉迫しているため、一つのゲームタイトルが、PS2とPSP向け開発プロジェクトを共有して進められる」というもの。

 開発したAIや物理エンジン、グラフィックスなどは最低限の手間でPS2からPSPへ落とし込むことが出来る。PS2版とPSP版で同じタイトルがリリースされて、ゲームデータも共有して、家でも屋外でも同じゲームを継続してプレイする、なんていうプレイスタイルも実現するだろう。開発プロジェクトを複数プラットフォームで共有できれば開発コストを抑えることにもつながる。

 そして、悪いニュースはいいニュースの全く逆の見方によるもの。PSPは高機能で、かつそのパフォーマンスはPS2に近いため、PSPのゲームに対するユーザーの期待は大きくなり、これまでの携帯ゲーム機用ゲームのコンテンツ密度ではユーザーが納得しなくなる、というものだ。

 となれば、ゲーム進行をより奥深く遊び甲斐のあるものにしなければならず、サウンド制作やグラフィックス制作にも熟練したアーティストの起用を余儀なくされる。結果、PSPのゲーム開発はこれまでの携帯ゲーム機とは比べものにならないほどに開発コストがかかってくる、という予想が成り立つ。

 かつてXboxの初期ソフトがPCゲームの移植版が多かったように、PSPの離陸直後のゲームタイトルは、もしかするとこの先例に沿ったものになるかもしれない。つまり、開発コストを回収し終えたPS2ゲームの旧タイトルをPSPへ移植してくるゲームスタジオが最初は多いかもしれないということだ。

 今年のE3ではPSPの試作実機が公開され、秋の東京ゲームショーではPSP発売同時ゲームタイトルが明らかになり、今年末には実際に日本で発売となる。

 PS3登場前にソニーが打ち上げるビッグイベントとなる新世代ウォークマンPSPの離陸。期待と不安の中をどう飛び立つかが注目される。

2004年、PSPにまつわる予定。とりあえず試作実機が公開されるE3に視線が集まる
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