ソフトバンク、当期損失1070億円〜情報漏洩の影響も

» 2004年05月10日 23時59分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 ソフトバンクは5月10日、2004年3月期の決算を発表した。今年2月にYahoo!BB顧客情報流出で世間を騒がせたが(2月24日の記事参照)、決算にもその影響がうかがえた。

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 同社の通期の連結業績は、売上高が5173億円で、548億円の営業損失を計上。経常損益ベースでは719億円の赤字で、当期純損失が1070億円となった。なお、2003年3月期の当期純損失は999億円だった(2003年5月9日の記事参照)。

顧客獲得コストをかけたが、加入者が伸びず

 情報漏洩後の変化が顕著だったのが、Yahoo!BBの契約加入者数の推移だ。2003年2月からの1年間、月間増加幅は一度も11万回線を下回らなかったにも関わらず、2004年3月、4月はいずれも7.3万回線増に留まった(4月9日の記事参照)。同社にとって痛いのは、2003年度第4四半期の顧客獲得コストを、直前の2四半期より多めに費やしていたことだ。

Photo 顧客獲得コストは、2003年度第4四半期で300億円近い金額を投入した

 ソフトバンクの孫正義社長は、テレビ広告の枠を取ったにも関わらず、情報漏洩後は放映を自粛したと話す。街頭で勧誘を行う“パラソル販売”も、完全な路上では活動を自粛した。「新規顧客獲得のためにアクセルを踏んだが、情報漏洩の事件があって少し空回りした」(孫氏)。

 四半期ごとの業績も悪化。下のスライドで分かるように、四半期ごとの営業損失は2002年度第4四半期をピークに減少傾向で、黒字化も見えつつあった(2月13日の記事参照)。しかし、2003年度第4四半期では赤字幅が拡大した。

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傷ついた信頼を回復するために

 いったん傷ついた企業の信用を、どのようにして回復するのか。孫氏は既に、個人情報保護強化のために「130項目の対策を打ち終わった」とアピールする。

 顧客情報は、“高セキュリティエリア”と位置付けられた場所でのみ取り扱われるようになった。高セキュリティエリアには空港さながらの金属探知機が設置され、外部記憶装置の持ち込みが制限される。また、監視カメラ、指紋認証なども駆使してセキュリティを高めている。

Photo 一般社員は、高セキュリティエリアに入ることができないという

 個人情報を扱う際、従来は顧客の名前を入力すればいつモデムを納品するかなどを参照できた。しかし事件後は、申し込み番号がなければ情報を参照できないようにするなどの措置をとった。

 「若干わずらわしく、効率も落ちる。しかし、そのシステムも現在ではうまく稼動し始めた」(同)。なお、同社はYahoo!BBユーザーへの500円相当の金券配布、および上記のシステム改変などに「総額で約40億円を費やした」という。

新卒を大量採用

 既に伝えられているように、新卒を3000人採用する(5月7日の記事参照)のも、ある意味では個人情報保護強化策といえる。やはり正社員の方が、企業を裏切るリスクが低いと判断されるからだ。ソフトバンクではたとえば「カスマターサポート職」に580名を採用し、派遣社員などにリプレースする考え。

 ただ、正社員比率が高まれば人的コストもかさむのではとの懸念もある。孫氏は、「1社員あたりの単価は、新卒が一番安い。コスト増にはならない」とコメント。正社員はオンザジョブで学ぶ意欲も高く、生産性がはるかに高いため、むしろ事業の効率化につながるとした。

目標は変わらず「600万」

 孫氏は、前回の決算で明かした「2005年9月末までにYahoo!BBユーザーを600万人獲得する」という目標を撤回する気はない。引き続き積極的に顧客獲得活動を実施し、目標達成に努めるという。

 同氏によれば、新規加入者数も「5月に入ってからは日時ベースでは事件前に回復してきている」。6月以降には復調するとの見込みを示した。

 孫氏はまた、今回の決算説明会で新たな数値ターゲットを設定。“本年度中に、連結営業損益を月次黒字化する”計画だ。

 「初めて、(損益で)明確なターゲットとして掲げさせてもらう。言い訳抜きで達成する」。実現には強い自信を持っている、とも付け加えた。

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