孫社長とFTTH/TD-CDMAの“距離感”

» 2004年05月10日 21時13分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 このところ、「ソフトバンクが新規事業――特にFTTH――に参入するのでは」との推測が盛んだ。総務省が4月27日に同社の事業再構築計画の認定を取り消し、その理由として「既存のADSL事業のみならずブロードバンド・インフラ関連周辺事業への今後の進出可能性が新たに発生」(総務省のサイト参照)したためと言及したことも、周囲の憶測を加速させた。だが、実際のところはどうなのか。

 5月10日、ソフトバンクが開催した2004年3月期の決算説明会では、この話題に質問が集中した。これに対する孫正義社長の対応を聞いてみよう。

Photo ソフトバンクの孫正義社長

「テクノロジーの進化は否定しない」

 ADSLがいずれFTTHにとって代わられるのでは、との質問を受けた孫氏は、「依然として新規契約者数ではADSLの方が規模が大きい」と話しながらも、言葉を選びつつFTTHの可能性を否定しない。

 「テクノロジーは常に進化するもので、我々としてもそれをなんら否定しない。本当に光ファイバーが、ユーザーにとってADSLよりコスト効率がベターだと判断できる時が来たら、その時は、我々も対応する“心の準備”ができている。……もちろん、(心の準備だけでなく)それ以外の準備もやっていますが」

 一部報道では“今年夏頃にもマンション向けFTTHに参入”との話もあるが、孫氏は「FTTHサービスの開始時期、規模、価格、方法などはコメントするには時期尚早。噂に対してはコメントできない」と回答。詳細については一切口を閉ざした。

 少なくとも現状ではFTTHに参入していないが、この理由はなぜだろうか。孫氏は、「社内的な理由はあまりない」とコメントしている。

 社外的な理由として、市場の状況のほかに「ADSL参入の際にそうであったように」、制度面で新規参入障壁も存在すると孫氏。これに対して、継続的に規制緩和の働きかけをしているとした。

 FTTHサービスに参入すべきかどうか考える上で、1つのカギとなるのは“高速通信が不可欠なリッチアプリケーションのニーズはあるか”。この問いに、孫氏は自分のブロードバンド環境を引き合いに出して答える。

 「私の自宅の地下には12MbpsのADSLが、ベッドルームには100MbpsのFTTHがひいてある。会社には45MbpsのADSL環境があり、これらを毎日体験している。ただ、毎日さまざまなコンテンツにアクセスして試しているが、体感速度は変わらない。(動画コンテンツも)2MbpsあればDVDクオリティの映像が楽しめる」

 ただし、孫社長は「そうはいっても“時速250キロ”とメーターに書いてある車の方が、(実際にその速度で走る機会は少なくとも)乗っていて気分がいい、ということもあって、この点はバカにならない」とも話した。

TD-CDMAは「まずは許認可」

 モバイルブロードバンドを実現すると言われる、TD-CDMA(2月10日の記事参照)はどう考えているのか。孫社長は、「TD-CDMA、あるいはそのほかの手法を使ったIP携帯電話は、技術実験を着々と進行させている」と答える。

 もっともTD-CDMAを利用したサービスとなると、総務省が事業者に無線帯域を割り当てる“許認可事業”であり、「相手(総務省)がある話」(孫氏)。

 「総務省としても、いろんな申し込みにオープンかつフェアに許認可決定していかざるをえない。そのため(実験・サービス開始までの)プロセスに時間がかかり、不確実性もある」

 それ以上のことは今の段階で申し上げようがない、と締めくくった。

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