パケット定額制で、「携帯ゲーム業界」はどう変わるのだろうか?
6月1日、NTTドコモのパケット定額制「パケ・ホーダイ」が始まった。パケット利用料の使いすぎ――いわゆる“パケ死”の恐怖から開放されたユーザーは、これまで以上にパケット通信コンテンツを積極的に利用すると予想される。必然的に、携帯コンテンツプロバイダ(CP)側も変化に対応する必要があるだろう。
本特集「パケット定額制の衝撃/CPの思惑編」では、ドコモのパケ・ホーダイが与えるインパクトを、通信型アプリを手がけるCPに聞く。第1回で取り上げるのは、「魔法学園アヴィリオン」を運営するブイシンクだ。
魔法学園アヴィリオンは、MMOPRG(多人数参加型RPG)と呼ばれるタイプのゲームだ。ブイシンクの事業開発本部 R&Dグループのプロジェクトリーダー、システムエンジニアの川出陽一氏は、PCの世界で人気を集めるMMORPGが「今後は携帯でも支持されることは確実」と話す。
4月20日にβテストを開始しており、「1000人限定でということだったがすぐに人数が集まってしまった」。現在はβテスターの枠を3000人程度まで拡大。6月中に本サービスが開始される予定だ。
ユーザーはPC版MMORPGと同様、ゲームの世界で自分の分身となるキャラクターを育てる。各プレイヤーがキャラクターを通じて交流することで、ネットコミュニティが生まれるという仕組みになっている。
もっとも、ブロードバンド常時接続のPCゲームとは、設計が大きく異なる。基本的には、あまり通信をしなくてすむようになっている。つまり、パケ・ホーダイでなくてもゲームは楽しめる。
たとえば、ゲームをしてまず気付くのは「ほかのプレイヤーが動き回らない」こと。ゲームサーバには多くのプレイヤーがログオンしているが、「名前」が表示されているプレイヤーキャラクターに話しかけても、固定のセリフが表示されるだけだ。
実は、魔法学園アヴィリオンではユーザー同士のリアルタイムチャットは行わない。画面上には、近い時刻にログオンしたユーザーが見えているが、そのユーザーのステータスと事前に設定された“あいさつ”を確認できるだけ。ユーザーはこれらを参照した上で、気にいったキャラクターを仲間にして、供に冒険していくことになる。自分のローカル環境で「他人のキャラを借りて」冒険を行うわけだ。
もちろん、知らないうちに自分のキャラクターがほかのプレイヤーに借りられることもある。自分がプレイしているときに“もう1人の自分”がどこかで戦っていることもあり得るが、それは直接自分のプレイ環境に反映されない。
面白いのは、借りられて行った戦闘でも、経験値は自分に加算されること。これによって、キャラクターをレンタルされた影響が現れてくる。自分ではあまりプレイしていないのに、気が付いたら経験値がたまっていた……ということもある。
「通常のユーザーは、強いキャラクターを仲間にしたいもの。育て上げたキャラクターがあちこちで借りられて、さらに強くなるということもある」
ユーザー間のコミュニケーションツールとして、ゲーム内で送受信されるメールもある。これは、各キャラクターが保有する“自分の部屋”に届けられる。「あなたのキャラクターを借りてこんな冒険をしました、ありがとう……」といった会話が繰り広げられるわけだ。
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