パケット定額で「機は熟した」〜スクエニ、本気の“iアプリ”投入

» 2004年07月01日 18時03分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 家庭用ゲームの名作シリーズ「ドラゴンクエスト」と「ファイナルファンタジー」を携帯電話向けに移植──。新生FOMAの切り札として発表されたこのニュースは、携帯電話ユーザーからの大きな注目を集めた(2003年9月の記事参照)。そんなスクウェア・エニックスが、また業界を騒がせる企画を投入しようとしている。

 スクウェア・エニックスモバイル事業部長の洞正浩氏(左)とモバイル事業部の田畑端マネージャー(右)

 スクウェア・エニックスは、3月1日から「ドラゴンクエストi」「ファイナルファンタジーi」の2サイトをオープンし、完全移植版のiアプリの配信を開始。アプリをダウンロードするには500円という料金が必要であるにもかかわらず「900iシリーズの普及台数から考えて、これほど高い普及率はあり得ないだろう」(スクウェア・エニックスモバイル事業部長の洞正浩氏)というほどの記録を出しているという。

 ただ現状、「ドラゴンクエストi」には、新たにカジノアプリが投入されているものの、「ファイナルファンタジーi」のゲームアプリは、完全移植版アプリのみ。着うた、着メロ、待ち受け画面などのコンテンツは定期的に新しいものを配信しているが、ゲームアプリの投入に関しては「未定」とされていた。

 満を持して同社が打ち出したのが、“FOMA向けオリジナルiアプリの投入”だ。第1弾としてリリースするのは、ファイナルファンタジーシリーズの中でも未だ人気が高い「ファイナルファンタジーVII」の外伝となる「BEFORE CRISIS -FINAL FANTASY VII-」(以下、BEFORE CRISIS)。「VII」の6年前から始まるこのゲームには「ネットワークアクションRPG」というスタイルが採用された。

 「おそらく前例がない」という“携帯ならでは”の仕組みが盛り込まれたオリジナルiアプリを、このタイミングで発表するのには理由があると洞氏は話す。

→「BEFORE CRISIS -FINAL FANTASY VII-」ゲーム内容紹介記事

本来やりたかったことができる環境が整った

 「本来の目的はここにあった。今の環境と端末のスペックの中では最良の答え」──。洞氏は、オリジナルのネットワークアクションRPGアプリの開発について、こう説明する。(ドラクエやFFの)完全移植版が動く端末があり、ユーザーが携帯でゲームをすることにも慣れてきた。FOMA900iシリーズの登場に合わせて500円を上限とする月額課金体系が整い、ユーザーが料金を気にすることなく遊べるパケット定額制が加わった今が、ケータイオリジナルのアプリを投入する好機だと見ている。

 スクウェア・エニックスが考えるオリジナルiアプリは、FFやドラクエの完全移植版すら「そこに至る切り札。“携帯でゲームする”ことを定着させ、次世代ケータイゲームに持っていく導火線の役割」と、過渡期の存在であるかのように言い切ってしまうものだ。

 「携帯でゲームをする──ということを意識したことのないユーザーがまだ多い中、スタンドアロンのゲームは入口として分かりやすい」(洞氏)。社会現象になった名作ゲームを携帯に移植することでゲームに慣れてもらい、次に“携帯ならでは”のゲームを楽しんでもらおうというのが同社の戦略だ。

 「ネットワークゲームは、意外と揃える道具が多かったり、知らない人とのコミュニケーションは怖いと思う人がいたりと敷居が高い。そこに対する市場を作っていくために、いろいろな手を打って、徐々に壁を取り払っていく」(洞氏)

 携帯ならではの仕組みをネットワークに取り入れるため、開発コストもかつてないレベルになると洞氏。「労力も時間もお金も、普通のゲームアプリの10倍はかかっている」という完全移植版を、さらに上回ると話す。

100円〜500円コースの組み合わせが功を奏す

 ゲーム内容だけでなく、開発コストも“かつてないレベル”に達するオリジナルアプリで、儲けを出せるのか──。洞氏は、完全移植アプリの課金体系がうまく回っていることから、こうした懸念はそれほどないと話す。

 「ドラゴンクエストi」と「ファイナルファンタジーi」の課金体系は、少々複雑ながらユニークものだ。料金コースは100円・200円・300円・400円・500円の5つが用意され、それぞれの料金に応じたポイントが付加される。例えば「500円コースは500FFポイント」といった具合だ。

 完全移植版のアプリをダウンロードするには500FFポイントが必要になるが、アプリをダウンロードしたあとに、着うたや待ち受けを落とすための必要最低限のポイントが得られる100円コースに変更することもできる。また各コースは併用も可能なため、料金体系は実質、すべてのコースを併用した場合の1500円から最低料金の100円までの幅広いものになる。

 「開発コストを考えると、500円でも出せない。数千円レベルの従量課金で提供したかった」という中での苦肉の策ともいえるが、アプリの話題性と柔軟な課金体系が功を奏して、「おそらくほかのコンテンツプロバイダから見れば、想像も付かない勢いで開発コストを回収できている」という。

 「あくまでも携帯電話をゲーム端末の1つとして捉えれば、例えば従量課金で7000〜8000円払ってもらって、DQなりFFなりのアプリを好きに落として遊べる──というのが理想。ただユーザーの意識レベルでいうと、例えば、1年に2本ゲームを買うユーザーが、1万5000円使うのには抵抗がないにもかかわらず、携帯で月額千何百円支払うのは敷居が高いと感じているという現状もある。500円なら、ぎりぎりで許容範囲。そうした仕組みの中で、いろいろな選択肢を用意しているのが現状」(洞氏)

定額制のインパクトは

 もう1つ大きな要素となるのが、パケット定額制の開始だ。「ユーザー側でお金勘定ができるインフラが整った。(ダウンロードにかかる通信料金を気にする必要がないため)どのゲームで遊ぶかに、向き合いやすくなる」(モバイル事業部の田畑端マネージャー)。

 また“携帯ならでは”の最大のポイントとなる、通信を生かしたゲームを作りやすくなったことも大きいと話す。ただ定額制だからといって、「PCのネットワークゲームをそのまま持ってくるようなことはしない」(洞氏)。

 コンソールの前に座ってじっくり取り組む家庭用ゲームと、持ち歩くことが前提で、いつどこで楽しむかを限定しない携帯ゲームは「明らかに別物」という考えだ。

 ネットワークを使ったどんな楽しみ方を提案するのかは、まだ明かされていないが、「駅に着くまでの短い時間でも楽しめるネットワークゲーム。ユーザー同士がコミュニケーションを図る手段も用意する」としている。

 いずれにしても重要なのは、「最初にコンテンツありき」の方針だと洞氏。「まず作りたいものが最初にあった。それを作るのには膨大なコストがかかるが、回収できる形が徐々にできつつある」。定額制や課金体系、端末スペック、ユーザーのゲームに対する意識など、さまざまな要素が絡み合って、ケータイゲームは次のステージに向かいつつあると話す。「そのペースは、予想していたよりも早い」(洞氏)。

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