韓国における携帯電話番号制度改革の行方:ITソリューションフロンティア:海外便り

» 2004年07月13日 00時00分 公開
[文智園,野村総合研究所]

韓国の携帯電話市場と番号制度改革

 韓国の携帯電話市場は、1997〜1999年には5社が競合していたが、現在ではSKテレコム(SKT)、韓国通信フリーテル(KTF)、LGテレコム(LGT)の3社体制である。そして韓国ではこれまで、キャリア(通信事業者)によって識別番号が異なっており(SKT:011、KTF:016、LGT:019)、“Speed011”というブランドを浸透させることに成功したSKTは、2003年末現在で54.5%という第1位のシェアを有していた。

 このようなSKTの独占的な優位を阻むために、政府は以前から料金規制(KTF、LGTは申告制であるのに対してSKTは認可制)などを行ってきた。しかし、2003年には新規加入者から解約者を引いた純増加入者数のうち、SKTが依然として87%という大きなシェアを占め(http://www.ohmynews.com参照)、また売上高でも61.6%に達するなど、その独占的な地位に変化はなかった。

 2004年1月から開始された韓国の携帯電話番号制度改革は、番号を替えずにキャリアを替えられるMobile Number Portability(以後、MNP)と、010の統合番号導入という2つの柱からなっている。その背景には、識別番号とブランドの関係を断ち切ることで、SKTの独占的なシェア拡大を阻み、キャリア間の公正な競争を促すという政府の思惑があったのである。

番号制度改革のポイント

 番号制度改革には2つの大きなポイントがある。

 第一は、MNP制度の導入に時間差を設けたことである。具体的には、2004年1月〜6月の間は、SKTユーザーだけがMNPによって番号を維持したまま他のキャリアに移動することができる。2004年7月〜12月にはKTFユーザーもMNPを利用することが可能となり、2005年1月以後はすべてのユーザーがMNPを利用できるようになる。このように時期をずらすのは、同時に実施するとSKTへの加入者が増加してしまうとみられたためである。

 第二のポイントは、徐々に010統合番号へ移行させるという点である。2004年1月から、新規加入者はキャリアを問わず識別番号が010となった。これまでのキャリアを利用しながら識別番号を010に変更することもできる。これは言うまでなく、SKTを意識して番号ブランドを無力化することが狙いである。今後010ユーザーが全ユーザーの90%以上になった場合には、識別番号はすべて010に統合される予定である。

番号制度改革による利用者の動向

 MONEYTODAY紙によると、2004年3月末現在SKTのシェアは52.7%で、2003年末に比べて1.8ポイント減少した。したがって、番号制度改革はSKTの独占を阻むのにある程度の効果はあったと言える。

 しかしこれまでのところ、むしろ市場は010統合番号を中心に動いているようである。同じく同紙によれば、2004年第1四半期にMNPを利用してKTF、LGTに移動したSKTユーザーは70万人余であったのに対して、同期間の010新規加入者は3社で292万人余にも達している。これには次のような要因があると考えられる。

 第一は、MNPを利用する場合は端末を新たに買わなければならないことである。数十万ウォン(数万円)の端末価格はユーザーにとって負担である。

 第二は、3社が安い料金制など魅力的な商品を開発したこともあり、SKTユーザーだけでなくKTF、LGTユーザーもキャリアを移るようになったことである。時間差MNPのため、KTFユーザーは2004年6月まで、LGTユーザーは2004年12月までは、他のキャリアに移る際に010に変えなければならない。

 第三は、将来すべての番号が010で統合される見通しであるとともに、現在は010の番号プールが十分で、自分が希望する番号を選べることである。010を選択したユーザーのなかには、キャリアと端末を替えずに、良い番号を獲得するために識別番号だけ010に変更したケースも多いとみられている。

キャリア間の本格競争の時代へ

 番号制度改革は韓国のユーザーに、サービスによってキャリアを選べるチャンスを与えた。MNPの導入以前は、番号変更が障壁になってキャリアの固定化が生じ、結果として番号がブランド化されたため、各キャリアはブランド力の強化に力を費やし、ユーザーに実質的な利益を提供してこなかった。しかし現在、各社は競って安い料金、魅力的な端末、新しいサービスなどを市場に投入するようになった。たとえばKTF、LGTは長期契約割引や、カップル間では音声通話が無料となる無制限カップル料金、月決め金額(1万円程度)の無制限定額制などを打ち出し、SKTも類似の料金体系で対抗している。

 韓国の携帯電話市場では、番号制度改革をきっかけにようやく本格的な競争が始まった。今後は、010かMNPかという議論にかかわりなく、各キャリアが自社のサービスの差別化に力を注いでいくことになろう。

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