盗撮防止法はカメラ付き携帯に歯止めをかけるか(2/2 ページ)

» 2004年07月27日 17時36分 公開
[IDG Japan]
IDG
前のページへ 1|2       

 そうしている間にも、カメラ付き携帯の人気は高まり続けている。

 「ほとんどの人が携帯電話を持っており、買い換えの際には多くの人がカメラという楽しい新機能が付いたモデルを求めている」とEPICのローラント氏。

 IDCの携帯端末アナリスト、アレックス・スロウスビー氏によると、2003年の米国でのカメラ付き携帯の出荷台数は900万台弱。2004年には2700万台を超え、2008年には1億台に達する見通しという。

 Gartner Groupのアナリストは、2006年までには米国で販売される携帯電話の80%がカメラ付きになると予測している。

 米国はカメラ付き携帯の利用と、それに伴うプライバシー問題に関して比較的遅れている。カメラ付き携帯の普及がもたらすプライバシー侵害の問題については、世界中の人々や各国政府が検討しているところだ。こうしたデバイスは、盗撮者にとって夢のようなものだ。写真、さらにはビデオを「さりげなく」撮影し、それをすぐにメールで送ったり、インターネットにアップロードできるのだから。

 スポーツクラブのClub Oneや24-hour Fitness Worldwideなど一部の企業は既に、施設内でのカメラ付き携帯の使用を禁止している。シカゴ市では3月に、カメラ付き携帯による盗撮を違法とする条例が可決された。米国よりも1年ほど早くカメラ付き携帯が流行した日本では、人々がプライバシーを望む場所での使用を制限している。

 一部の州では電子盗撮とプライバシーに関する法律を施行しているが、次第にプライバシーに踏み込んでくる小さなカメラのレンズから人々を守る刑法は、まだ全米各地で進化の途上にある。

法改正につながった盗撮事件

 連邦レベルの盗撮防止法への道は、ルイジアナ州とワシントン州で起きた2つの事件から始まった。いずれの事件でも、ビデオ技術がプライバシーの侵害に利用された。

 1つ目の事件では、ルイジアナ州モンローに住むスーザン・ウィルソンとゲリー・ウィルソンの夫妻が、自宅の主寝室とバスルームに隣人が隠しカメラを設置したことに気付いた。同州当局が、隣人の行為は州法および連邦法の下では刑事犯罪にならないと判断したことに、ウィルソン夫妻は驚き、落胆した。夫妻は、隣人が地域のほかの住人も同じように盗撮していたことを知り、州議会に法律の改正を求めた。1999年7月12日、ルイジアナ州知事はビデオ盗撮を重罪とする法案に署名した。

 ワシントン州で2000年に起きた2番目の事件では、リチャード・ソレルズという男性がビデオカメラを密かに設置し、祭の間中アイスクリームスタンドで順番待ちをしている女性のスカートの中を盗撮していた。同州最高裁は、女性のスカートの中を盗撮するのは「最低な、非難されるべき行為」だが、実際には法に反していないとの判決を下した。同裁判所はソレルズと、ショッピングモールで女性のスカートの中を盗撮したとして起訴されたショーン・グラスの有罪判決を覆した。

 2002年に同州議会は、公共の場でプライバシーを侵害された人々に法的手段が与えられるよう法律を改正した。ちょうどその後で、初めてカメラ付き携帯で盗撮を行い、有罪判決を受けたとして知られるジャック・レ・ヴ被告が起訴された。

 2003年6月、ヴ被告(20歳)はシアトルの小売店Safewayで、隣で買い物をしていた女性のスカートの中を、カメラ付き携帯を使って密かに撮影しているのを目撃された。法廷文書によると、同被告は隣にいた女性の下着の写真を5枚撮影、後で警察に自分は下着フェチだと告白したという。

 改正後のワシントン州プライバシー法の下、同被告は起訴され、後に盗撮の罪を認めた。罰として60日間の懲役を科されたほか、性犯罪者の名簿に登録された。

公共の場でのプライバシー

 カメラ付き携帯の急激な人気の高まりは、州の刑法に(ソレルズやグラスのような)「公共の場」での盗撮者が罰を免れる可能性のある盲点を作り出している。

 ワシントン州、ルイジアナ州とは違って、ほとんどの州の刑法ではまだ、住民が公共の場にいる時のプライバシーを保護していない。州のプライバシー法は主に、公共の場ではなく、家の周りをうろつく「のぞき魔」を追及することを目的としている。

 オクスリー議員のVideo Voyeurism Prevention Actは、まさにそうした問題に対し、連邦刑法の改善措置を提供するものだと支持者は主張している。

 この法案は、独自の盗撮防止法を施行していない州や、カメラ技術の急速な普及により既存法の改正を迫られている州にとってモデルにもなると、同法案の起草者たちは話している。

 「これまでの州法は、公共の場所にいる女性のスカートの中を撮影するといった行為を禁じていなかった。この法案は、具体的にこの種の行為を対象としており、人々のプライバシーをさらに強固にするはずだ」(EPICのローレンス氏)

前のページへ 1|2       

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月26日 更新
  1. 楽天モバイルのスマホが乗っ取られる事案 同社が回線停止や楽天ID/パスワード変更などを呼びかけ (2024年04月23日)
  2. シャープ、5月8日にスマートフォンAQUOSの新製品を発表 (2024年04月24日)
  3. スマホを携帯キャリアで買うのは損? 本体のみをお得に買う方法を解説 (2024年04月24日)
  4. Vポイントの疑問に回答 Tポイントが使えなくなる? ID連携をしないとどうなる? (2024年04月23日)
  5. 通信品質で楽天モバイルの評価が急上昇 Opensignalのネットワーク体感調査で最多タイの1位 (2024年04月25日)
  6. 貼り付ければOK、配線不要の小型ドライブレコーダー発売 スマート感知センサーで自動録画 (2024年04月25日)
  7. ドコモ、「Xperia 10 V」を5万8850円に値下げ 「iPhone 15(128GB)」の4.4万円割引が復活 (2024年04月25日)
  8. 中古スマホが突然使えなくなる事象を解消できる? 総務省が「ネットワーク利用制限」を原則禁止する方向で調整 (2024年04月25日)
  9. スマートグラス「Rokid Max 2」発表 補正レンズなくても視度調節可能 タッチ操作のリモコン「Rokid Station 2」も (2024年04月25日)
  10. 「iPhone 15」シリーズの価格まとめ【2024年4月最新版】 ソフトバンクのiPhone 15(128GB)が“実質12円”、一括は楽天モバイルが最安 (2024年04月05日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年