NECの携帯電話端末事業が厳しい。同社が10月28日発表した2004年4−9月期連結中間決算で、端末出荷台数・売り上げ高とも大幅減となったことを明らかにした。国内市場の縮小に歯止めがかからない上、海外3G事業の不振が追い打ちをかけている。打開策として他社プラットフォームの採用に踏み切る上、Linuxなどの技術開発も強化。同社の下期は「来年の再起」に向けた我慢の時期になりそうだ。
全体の売り上げ高は2兆3031億円(前年同期比0.9%増)、営業利益は593億円(同2.3%増)、純利益は251億円(同62.6%増)だった。
「前年下期から続く国内市場の縮小の影響をストレートに受けた」──都内で開かれた決算発表会で、中村勉常務は携帯端末事業の不振の原因をこう説明した。
携帯電話関連を含むネットワークソリューション事業の売り上げは8998億円で前年同期比6%増。パケット定額制によるキャリアの設備投資拡大を受けて携帯インフラ事業が好調だったが、要の携帯端末事業が低迷し、足を引っ張った。同事業の売り上げ高は3095億円。前年同期と比べ約480億円減(13%減)となり、約100億円の赤字に転落した。
原因の第一は端末出荷数の減少だ。当初は前年同期の770万台とほぼ同じ水準を見込んでいたが、結果的には約22%減の600万台にとどまった。全体の6割を占める国内向けが特に厳しく、前年同期から4割の大幅減だ。
NECの推定によると、端末納入先のNTTドコモとボーダフォンを合わせた市場規模は9カ月連続で落ち込み、2003年度上期の4分の3程度に縮小した。「他社PDC端末が在庫調整に入り、NECへの発注量も減った。WCDMAへの切り替えがもっと早いと思っていたが、上期はブレイクしなかった」(中村常務)。2社向けシェアでトップの地位は堅持したものの、シェア自体は従来の約3割強から2割減った。
下期も好転は見込めず、通期の出荷台数は期初予想の前年(1550万台)比2割増から一転、同1割弱の減となる見通しだ。
ただし、国内事業は減益とはいえ黒字は確保している。問題は海外事業と、NEC自身の“甘さ”にもある。
海外事業の減益要因として同社が挙げたのは「3Gプラットフォームの安定化の遅れ」。これを具体的に言い直すと、「3Gを他社に先駆けて進めてきたが、後から他社端末が発売されてみると、消費電力などで見劣りがする」(中村常務)ということになる。
この商品力の低下を補うため、多額の販売対策費用を注ぎ込まざるを得ず、大幅なコスト増を招く──という悪循環に陥った上、GSMからの切り替えも思い通りには進まず、ここでも見込み違いが生じた。
開発プロセスと投資の効率化も課題だ。中村常務は「事業を一気に拡大すべく、大きな開発投資をしたが、ここにマネジメント的に甘さがあった」と費用に見合う結果が出ていないことを認める。「やっていることに間違いはない。その中身を是正していくということ」(中村常務)。
対策として、海外向け3G端末開発を抜本的に見直す。端末プラットフォーム(チップセット&OS)について自前主義を転換し、来年度以降、他社プラットフォームを採用した製品を投入。市場ニーズやセグメントに合わせて柔軟に対応し、開発コストの削減も図るねらいだ。近く具体的に発表する。
また新技術への対応を急ぐ。特にLinux開発をさらに加速させ、端末プラットフォームの共通化によるソフト資産の水平展開や、開発期間の大幅短縮を見込む。Linuxの採用でソフトの自由度も増し、端末の高付加価値化にもつながる。「開発規模の急拡大に対応する抜本的な手段」(中村常務)としてLinuxに賭ける。
開発プロセスの改革も推進。9月に「モバイルソフトウェア事業本部」を新設し、ソフトの機能別開発体制や効率的なプロジェクト管理などを確立する。端末開発の方向性についても「折り畳み端末を最初に開発したメーカーとして、『市場が急な変化をのぞまないのでは』と開発が保守化していた。今後は“フォロワー”として見直す」(中村常務)。
下期は、来年度以降の再起に向けた準備期間と位置付け、戦略的なコスト増を覚悟する。「ざっくり言って1年間遅れてしまった。次の1年で挽回したい」(中村常務)。
「端末出荷台数の増加は海外がポイント」(中村常務)という同社のグローバル戦略の核は中国2.5G端末だ(関連記事参照)。上期は10機種を発売。目標出荷台数の70万台は達成し、計画通りに進んでいると強調した。今後は「N900」(関連記事参照)のようなハイエンド端末に加え、ミッドレンジの事業拡大のめどもついたとしている。
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