英国CSR plc(以下CSR)は、11月11日、IEEE 802.11b/g対応の携帯電話向け無線LANチップ「UniFi-1 Portable」を発表した。UniFi-1 PortableはCSPパッケージで5.8×6.4ミリと、世界最小クラス。
CSRは、Bluetoothチップメーカーの最大手。同社のBluetoothチップはNokia、Motorola、Samsungなどの携帯端末に多く採用されている。CSRがBluetooth以外の製品を作るのは初めてだ。
今回、初めてBluetooth以外のチップに進出した理由について、日本法人ジェネラルマネージャーの富永創樹氏「携帯電話にHDDが載る日が近づいている。携帯にWiFiを取り込む好機」と説明する。
たしかに、NokiaやMotorola、NECなどが無線LANを内蔵した携帯電話を発表するなど、無線LAN機能搭載端末が増えつつある。「HDDが携帯に搭載されれば、携帯電話はヘッドセットなど周辺機器につながる必要が出てくるだろう。音楽など大量のデータをやりとりするには、高速な通信でなくてはならない」(営業副社長、アジア担当のマシュー・フィリップス氏)
CSRは、携帯向けにBluetooth用チップを1チップ化して成功した会社だ。そのCSRが、“携帯向け通信チップ”として次に狙いを付けたのが無線LANチップ。Bluetoothで得たノウハウを生かし、UniFi-1 Portableも携帯電話に最適化されたチップになっている。
ノートPCに搭載されているような従来の無線LANチップでは、チップサイズや消費電力が大きすぎて、そのまま携帯電話には搭載できない。UniFi-1 Portableでは、RF回路やMAC(メディアアクセスコントローラ)など、アンテナ部分以外をほとんど1チップに集積。チップサイズをダイサイズと同じにできるCSP(Chip Scale Package)パッケージを採用し、超小型サイズを実現した。携帯本体から直接電圧やリファレンス周波数を供給できるので、発振器を外部に持つ必要がなく、外付け部品も最小に抑えられる。
1チップ化によって、コストも下がる。UniFi-1 Portableのチップ単体の価格は6ドル。外付けパーツを足しても、6.96ドルと7ドル以下だ。
低消費電力であることも大きなポイントだ。スタンバイ時の平均消費電力は200μW(従来チップの平均値は1mW)、距離10メートルでIEEE802.11aモードで受信した場合の平均消費電力は300mW(従来チップの平均値は1000mW)と、従来の無線LANチップに比べて、消費電力が非常に低く押さえられている。ダイレクトコンバージョン接続でアナログ回路の部分をできるだけ少なくすることで、低消費電力を実現した。
また携帯に組み込むため、ソフトウェアにも工夫が凝らされている。通常、PC用の無線LANチップではソフトウェアMACが使われ、PCのCPUが処理を行う。しかし組み込み用のCPUはPC用ほどパワーがないため、UniFi-1ではMACをハードウェアにしてチップ上に実装し、CPU負荷を削減している。
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