知られざる、ロシアやタイの携帯電話事情

» 2004年12月21日 21時40分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 海外のコンテンツ市場が急速に拡大する中、海外進出を狙う日本のコンテンツプロバイダも多い。ギガフロップスは、こうした企業向けに海外携帯マーケットの市場分析を手がけている。同社の増澤貞昌社長がモバイル・コンテンツ・フォーラムのセミナーに登場、あまり語られることのない、ロシアやタイの携帯電話事情について話した。

文化レベルにインフラが追いついていない〜ロシア

 ドコモがiモードのライセンス供与を発表したばかりのロシア(12月17日の記事参照)は、増澤氏が注目する市場だ。

 大きなキャリアが3つ存在し、ドコモはその最大手「MTS」と提携する。いずれのキャリアも2.5世代のGPRS網を提供しているが、うち2社はGPRSサービスをプリペイド携帯ユーザーには提供していないという。「ロシアはプリペイドユーザーが多く、サービスの主流はPremium SMS」(増澤氏)。Premium SMSとは、MMSインフラではなくSMSのインフラを使ってコンテンツ配信するものだ。

 コンテンツのプロモーションは、コンテンツプロバイダが独自に発行するフリーペーパーがメイン。誌面にはロゴやJavaゲームなどの画面写真が並び、ユーザーはSMSを送ってこれらのコンテンツを入手する。「ゲームは2Dのものが主流」(同)

 メディアとの連携も始まっている。「テレビで曲が流れると、テロップに曲番号が表示される。ユーザーがSMSで曲番号を送信すると、ダウンロードしたい曲をリクエストできる」(同)

 SMSを使ったユニークなゲームもあると増澤氏。普通ならアプリ内にある迷路が紙のカード上に描かれ、SMSのやりとりで敵と戦ってゲームを進めるというものだ。「トランプほどの大きさの箱に、複数(5〜6枚)のカードが入っている。カードにはそれぞれ異なる世界観の迷路が描かれ、下のほうにはSMSのコマンドが記載されている。ユーザーはやりたい操作に対応したSMSを送信する」(同)

 「面が進むと、参加しているほかのプレーヤーとパーティを組める」など、ネットゲーム的要素も装備。ローテクながらかなり凝った作りで、文化レベルの高さが伺えたという。「あくまで個人的な感想だが、文化レベルにインフラが追いついていない印象。いいインフラが入ったら爆発するのではないか。このタイミングで参入するiモードはチャンスかもしれない」(同)

音声かSMSを使ったサービスなら参入もあり?〜タイ

 人口約6181万人、携帯電話の契約者は2300万人で人口の約4割。携帯電話は「AIS」「TAOrange」「DTAC」「Hutch」の4キャリアがあり、Hutchは昨年2月にCDMA2000 1xの3Gサービスを開始──。これがタイにおける携帯電話事情の大枠だ。

 増澤氏は、その国の携帯市場を読むには、まずその国の物価を知ることだと話す。タイでは、缶ジュース1本の値段が9バーツ(25.2円)、スターバックスのミディアムが90バーツ(252円)、大卒の初任給が7000バーツ(1万9600円)。携帯電話関連ではSMSの送信料2バーツ(5.6円)、着メロ10バーツ(28円)だ。

 販売される端末は、3万2900バーツ(9万2120円)の「P900」クラスから3900バーツ(1万920円)の「T100」クラスまでと幅広いが、よく売れているのは5000バーツ以下(1万4000円以下)の端末。「これを見ると、携帯電話は1カ月分の給料と同じくらい。日本に置き換えれば、PCを買うような感覚だろう」(同)

 携帯電話は市民生活に広く普及・浸透しているが、用途の主流は音声やSMSだ。「コンテンツを利用するには電話で申し込みをして、携帯電話から設定する必要がある。ユーザーにとって登録の手順が面倒」(同)

 参入を考えるコンテンツプロバイダにとっての大きな壁になるのは、キャリアの課金回収代行手数料の高さだ。「40%から50%と高い。支払い方式も(安定した収益につながる)月額課金はない」(同)。キャリアに手数料を差し引かれたところから、例えばキャラクターなどの版権料を支払ったりすれば、それほど大きな利益は期待できそうもないというのが増澤氏の見方だ。

 ただ、まったく参入できないのかといえば、そんなこともないようだ。「Hutchは3G展開にあたって大量のプロモーション予算を取っている。ユーザーが数十万というところをどう見るか」(同)。またSMSを使ったメディア連携が進んでいることから、ここにくい込むのも手だと話す。「クイズや投票をSMSで行うという使い方が増えている。トラフィックに応じてキャリアからキックバックをもらうスキームもあり、と聞いたことがある」(同)

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