MSとも提携“柔軟”路線を打ち出すNokia3GSM World Congress 2005

» 2005年02月15日 21時32分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 フィンランドのNokiaは2月14日、仏カンヌで開幕中の「3GSM World Congress 2005」で3G端末など新端末3機種を発表した。また米Microsoftとの提携も発表、3Gの本格化に向け独立路線にこだわらない“柔軟”路線を打ち出した。

 日本・韓国で先に離陸した3Gだが、欧州でも2004年末に最大手の英Vodafoneが音声サービスを開始するなど、各社が相次いでサービスを開始している。この日、Nokiaのネットワークス取締役副社長兼ジェネラル・マネージャーのサイモン・ベレスフォード ワイリー氏は、「2005年に3Gサービス加入者は7000万人に達する」と述べ、今年が3Gの離陸の年になるとの予測を示した。

 モバイルブロードバンド実現に一歩近づく3Gでは、リッチコンテンツなどデータ通信に期待が集まっている。通信バブルが崩壊する前からキーワードだった“統合”が、今度こそ実現のタイミングを迎えたというのがNokiaの見解だ。同社マルチメディア取締役副社長兼ジェネラルマネージャーのアンシ・ヴァンヨキ氏は「Nokia 6680」を「そのコンセプトを具現化した初の製品」と紹介した。

同社マルチメディア取締役副社長兼ジェネラルマネージャー、ヴァンヨキ氏。米Motorolaが米Apple Computerと提携するなど、音楽はカメラに次ぐ新しいトレンド。「大きな可能性」と述べる

ビデオシェアリングを備えるNokia 6680

 同社が“イメージングスマートフォン”とうたう6680は、背面には1.3メガピクセルカメラとフラッシュを、前面にはVGAカメラを搭載した。同社にとっては4番目となる3G端末で、W-CDMAのほか、EDGE、GSM900/1800/1900をサポート。OSはSymbian OS Series 60。

 最大の特徴は“ビデオシェアリング”だ。技術的には、3GPPのIP Multimedia Subsystem(IMS)をベースとするもので、通話中にビデオ通話に切り替えたり、録画した動画を相手に送り、同じ画像を閲覧しながらの会話が楽しめる。音楽再生プレイヤー「RealPlayer」も搭載、電子メール、同期化、プッシュツートークなど、ビジネス向け機能も強化した。

 今年4月に出荷予定で、推定価格は500ユーロ(約6万8000円)程度。

 「Nokia 6681」は6680の2.5G版で、EDGE、GSM 900/1800/1900用の端末。ビデオ通話のサポートがないため、背面にのみ1.3メガピクセルカメラを搭載した。主として中国市場向け。米国市場向けには「Nokia 6682」を用意する。

「Nokia 6680」。スライドするとカメラが現れる(左)。ビデオシェアリングのデモ。通話中にカメラをスライドすると、ビデオシェアリングが開始できる。左の端末が撮影した動画を右の端末に送っているところ(右)

 3つ目の新製品は折りたたみ式、VGAカメラ内蔵のGSM端末「Nokia 6101」。同社製品としては珍しく、アンテナを外部に出したデザインだ。FMラジオ、プッシュツートーク、IMや電子メールなどベーシックな機能をサポートしたローエンド〜ミッドレンジ向けの端末。推定価格は250ユーロ(約3万4000円)で、今年前半に出荷を開始する。

 同製品はNokiaにとって、ノキアのモバイルフォン事業部としては初めてのカスタマイズモデルとなる。この日同社は中国のChina Mobile Communicationsが同端末をカスタマイズし、「Nokia 6102」として中国市場で提供することも発表した。端末にChina Mobile Commnicationsのロゴを搭載し、ユーザーインターフェイスやポータルがカスタマイズされた形で出荷される。

「Nokia 6101」のカスタマイズ版「Nokia 6202」。今年第2四半期にChina Mobile Communicationより発売開始予定

 日本ではオペレータが端末の仕様を用意することは当たり前だが、欧州など日本以外の地域では、伝統的に端末メーカーのブランド力のほうが強かった。

 だが、英Vodafoneが2002年、「Vodafone live!」ローンチにあたり、シャープなどアジアの端末メーカーによるカスタマイズモデルを提供(2月10日の記事参照)。これが成功を収めたことから、欧州でもカスタマイズは新しいトレンドとなっている。

 これまでNokiaは共同ブランディングとしてロゴ入り端末を提供してきたが、ソフトウェアからカスタマイズする“柔軟な”対応を取るのは同端末が初めてとなる。

 Nokiaのモバイル・フォン取締役副社長兼ジェネラルマネージャーのオリ・ペッカ・カラスブオ氏は、「顧客、オペレータ、双方のニーズに耳を傾けることも(製品ポートフォリオやブランドと並び)重要と考える」と述べ、差別化というオペレータのニーズに応じるためにカスタマイズ戦略を一新したと説明した。「オペレータ、顧客、そしてNokiaにとってWin-Win-Winになる」とカラスブオ氏。今後、Series 40とSeries 60でカスタマイズニーズに応じる予定だという。

さまざまな機能で、他社と提携・協業

 柔軟化は、対オペレータのみの戦略ではない。携帯電話の利用が音声通話以外に広がる中、ほかの機能に関して同社は積極的に他社と提携、協業していく。この日は、音楽とエンタープライズの2つの分野でMicrosoftとの提携を発表した(2月15日の記事参照)

 音楽では、米Loudeyeと共同で、オペレータがブランディングできるモバイル音楽配信サービスを提供する(2004年8月10日の記事参照)。それにあたり、これまでRealNetworksと提携していたNokiaだが、Nokia端末で新たにWindows Mediaをサポート、携帯電話とWindows XP搭載PCの間で音楽の購入、ダウンロード、再生がシームレスに実現する。なおLoudeyeと共同で提供する音楽ダウンロードサービスは、Open Mobile Alliance(OMA)のDRMとAAC方式をベースとするため、Windows Media方式との間で変換が生じることになる。

「Nokia 6680」で音楽を購入(左)。再生画面例。実際には、オペレータがカスタマイズする(右)
PCでの画面例

 エンタープライズ分野では、電子メール機能の強化にあたり、Microsoftの「Exchange Server ActiveSync」をライセンス取得する。これにより、Series 60/Series 80のビジネス向けNokia端末からExchange Serverに直接アクセスし、メールやスケジュール、PIM情報を取得できるようになる。電子メールが理由でMicrosoftベースのスマートフォンを選ぶビジネスユーザーの取り込みを狙う。

 エンタープライズはNokiaの重点取り組み分野となっており、エンタープライズ・ソリューションズ上級副社長兼ジェネラルマネージャーのメアリー・マクドウェル氏は「電子メールのニーズが高い」と現状を説明する。なお、同期のための標準規格「SyncML」も引き続きサポートするという。

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