米PolyFuelは4月12日、モバイル製品向けのDMFC(ダイレクトメタノール燃料電池)用の電解質膜で、新技術を開発したと発表した。フッ素系電解質膜の製造プロセスで、同社の炭化水素系膜を製造できる。
電解質膜とは、正極と負極の間にある絶縁体で、燃料電池のカギを握るとされる部品。燃料電池の実用化には電解質膜の性能向上が欠かせないとされており、電解質膜の性能が悪いと「メタノール・クロスオーバー」と呼ばれる問題が起こりやすい。これは、高濃度メタノールが化学反応なしに電解質膜を素通りしてしまうという問題だ(5月20日の記事参照)。
現在、市場で支配的なのは米Du Pontの開発した電解質膜「ナフィオン」とされるが、これはフッ素系膜。対してPolyFuelは炭化水素系膜の開発を進めており、「フッ素系膜よりメタノール内で安定するほか、メタノール・クロスオーバーも3分の1に抑えることができる」とアピールしている。
今回、発表された技術はこの膜の製造プロセスに関わるもの。従来、フッ素系膜は電解質膜と電極をサンドイッチ構造に組み立て、力を加えてクレジット・カード程度の厚みにまで圧縮する(ホットプレス)という製造工程をとっていた。このとき、フッ素系膜は比較的低温で軟化するが、炭化水素系膜は耐久性が高いため、同じ温度では軟化しないという問題があった。つまり、炭化水素系膜はフッ素系膜のように「ホットプレス」できなかった。
今回、PolyFuelは炭化水素系でありながら低温で軟化し、ホットプレス可能な膜を開発。具体的に何度で軟化するなどの詳細は明かさなかったが、フッ素系膜の製造プロセスで同社製品が製造可能になったという。
PolyFuelのビジネス開発担当副社長、リック・クーパー氏は「企業によっては、フッ素系膜を利用するための製造プロセスに数億ドルを投資している」と話す。こうした標準の製造プロセスを無駄にすることなく、PolyFuelの技術を採用できるのだと強調した。
2004年第1四半期に日本市場への進出を表明したPolyFuelだが(2004年5月20日の記事参照)、その後アジア企業との交渉を重ねている。同社が示した資料によると、2003年当時と比べて採用を検討する企業は大きく増えているという。
“アジア企業”の中に日本企業も含まれるかが気になるが、この問いにリック氏は「私のパスポート(の出入国スタンプ)を見れば、その答えは分かる」とコメントする。
「日本は、6週間に1度のペースで訪れている」。日本企業とも頻繁に交渉していることに、暗に言及した。
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