NTTドコモは5月10日、2004年度の連結業績を発表した。営業収益は前年度比4.0%減の4兆8446億円、営業利益は28.9%減の7842億円。
PHS撤退に備えた減損損失603億円も計上している。数字は厳しいが、“具体的な成果が得られた年”とする。「具体的な成果」とは、解約率の大幅な低下、純増シェアの回復、ムーバからFOMAへの順調な移行などを指す。いずれもドコモにとっては重要な課題であり「減収減益の決算となるが、競争力の着実な向上を図ることができたと考えている」(NTTドコモ社長の中村維夫氏)
6月からは、現在24人いる取締役を約半数にし、執行役員制度を導入する。2005年度からは配当も増額、前期の2倍の年4000円とする方針だ。
解約率の低下は、中村社長就任時からの最大のテーマだ。解約率は、2004年度通期で1.01%と、前年度に比べ0.2ポイント改善されている。解約率を下げるために取った施策としては、各種割引、パケット定額制の導入などが挙げられる。
FOMAとムーバを合わせた携帯電話収入は、2004年度は4兆1323億円。前年度から1975億円、4.6ポイント減少している。利用者数そのものは増えているのに減収している主な原因は、家族割、無料通話分の2カ月繰り越しなどの各種割引だ。法人向けにも2004年7月から割引率を引き上げている。値下げが与えた影響は約1400億円だという。
値下げに伴い、ARPUも減少している。FOMAの総合ARPUは9650円(音声6380円+パケット3270円)で、ムーバの総合ARPUは6800円(音声5160円+iモード1640円)。FOMAのARPUが減少している理由として「中低利用者層のFOMAへの移行が進んだ」ことを挙げた。
「今は、3Gへのマイグレーション(移行)が進む時期という認識」と中村氏が述べたように、ムーバからFOMAへの移行は順調に進んでいる。FOMAは前年度比の3倍近い1150万1000契約となっている。
期 | 2004年度末 | 2003年度末 | 増減率 |
---|---|---|---|
FOMA | 1150万1000 | 304万5000 | 277.7% |
ムーバ | 3732万4000 | 4328万3000 | −13.8% |
3Gへの切り替え期ということで、端末経費や減価償却にコストがかさむのはやむを得ないという認識だ。「FOMAへのマイグレーションは、今期と来期がピークだろう。FOMAの値下げとマイグレーションの影響は、今期で大分収まるはず」と、来期への期待をのぞかせた。
2006年3月期の連結業績予想は、営業収益が0.8%減の4兆8050億円、営業利益が3.3%増の8100億円。
ドコモが現在、最も熱心に取り組んでいるのが、おサイフケータイに代表される“リアル連携ビジネス”。JR東日本のSuicaや、三井住友カードとの連携が決まっており、ドコモ自身もクレジットカード事業に乗り出す見込みだ。
しかし「AVトラフィック(テレビ電話など)やリアル連携からの増益には、まだしばらくかかりそう。とくにクレジット事業はこれから細部を詰める段階なので、来期の業績予想には入れていない」と中村氏は答えた。
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