ドコモのパナソニック モバイル製FOMA「P901iS」は(機種別記事一覧参照)、FeliCaのセキュリティ解除手段として、オムロンの顔認証技術を採用している(3月3日の記事参照)。
さまざまな技術がある中、顔認証を取り入れたのには理由がある──。こう話すのは、パナソニック モバイルコミュニケーションズで商品企画グループの主任を務める周防利克氏。どんな理由から採用に至ったのか、搭載にあたってどのような課題があったのかを、周防氏に聞いた。
「顔認証はインパクトが大きいため、注目が集まりがちだが、まず重要なのは、いかに簡単にセキュリティをかけられるか」だと周防氏。
901iSシリーズにはもともと、ドコモ共通のセキュリティ機能として「遠隔ロック」機能が搭載されている。しかしP901iSでは、さらに2つのセキュリティ機能を用意したという。
「遠隔ロックでは、端末が圏外の場所にあったり電源をオフにされた場合はロックがかけられない。さらにFeliCaのセキュリティを強固なものにするために、『タイマーロック』と『ワンタッチロック』を用意した」(周防氏)
タイマーロックは、端末を一定時間操作しなかった場合に自動的にロックがかかる機能。あらかじめ5分/60分/180分から選んで設定できる。「圏外の場所でも、一定時間がたてば端末はロックされる」(同)。ワンタッチロックは、ちょっと端末のそばから離れる──といった場合に便利な機能だ。「メニューキーの長押しでロックがかかる。深い階層までたどることなく、手軽にロックをかけられる」(同)
こうしたロック機能を解除するために搭載されたのが、「顔認証」だ。「セキュリティの解除は、セキュリティが高ければ高いほど使いにくくなるという矛盾がある。例えば単純に4ケタの暗証番号を8ケタにすればセキュリティは高まるが、その分覚えなければならない数字も増える。この相反するものを両立させる方法として出てきたのが顔認証」(周防氏)
たしかに顔認証なら、複雑なパスワードを覚える必要がない。「ロックの解除は、端末を開いて顔を写し、決定キーを押す──という流れ。顔認証にパスしたらあとは4ケタのパスワードを入れれば解除される。メールやWebを使うような、普通の端末操作と同じ流れでセキュリティ解除できるのがメリットの1つ」(同)
もう1つのメリットは、心理面から悪用を防げる点だと周防氏。「悪用しようとする人にとって、顔写真を撮られるのは心理的に抵抗がある。悪用しようと思って端末を開くと、自分の顔が画面に映り、写真を撮ってくださいと促される。悪事を働こうとする自分の顔が画面に映るのも、抑止効果につながる」(同)
なお現状では、「双子のユーザーもいらっしゃるし、暗い場所など認証しづらい環境もある」ことから、4ケタのパスワードと組み合わせて使うようになっている。
「顔認証」によるロック解除を行うには、あらかじめ自分の顔写真を何枚か登録しておく必要がある。登録可能な顔写真の枚数は最大10枚で、最低限3枚の写真を登録すれば、解除機能を利用できる。
より確実に認証させるためには、さまざまな環境下の顔を登録しておくといいと周防氏。「目など顔のパーツで認識しているので、髪型が違っても認識するが、メガネをかけている人は、外した顔も登録したほうが認識率は上がる。背景となる場所も、会社や自宅、外などさまざまな環境下で撮った写真を登録したほうが認識精度が高くなる」(同)
ただ、いくらさまざまな環境下で登録したほうがいいといっても、登録時にあちこちに行かなければならないのでは煩わしい。また、そもそも顔写真の登録は、最初の3枚は似た写真でも登録できるが、残りの7枚については似たような写真だと登録できない仕組みになっている。
「この点はちょっと工夫している」と周防氏。「本人なのに、周辺環境などの影響で認識されないような、“惜しい、もう少し”という場合には、写真を追加登録できるようにしている」
「どれくらい本人と似ているかを見ていて、ある条件を満たすと写真を追加登録できるようにしている。もちろん、あまりにかけ離れている場合は追加登録できない」
顔認証を使いながら、徐々にさまざまな環境下の写真を追加でき、写真が追加されれば認証精度も上がる──。なかなか便利な仕様が盛り込まれているのだ。
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