Qualcommの始める「携帯放送」、その優位性は

» 2005年07月26日 03時19分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 KDDIのBREWプラットフォーム開発で知られる米Qualcommが、携帯向け“放送事業”に進出しようとしている。世界各地で提供予定の無線コンテンツ配信サービス「MediaFLO」がそれだ。

 米国では700MHz帯の6MHz幅を使い、2006年末にサービス開始予定(6月4日の記事参照)。韓国や中国、インド、ブラジルでも技術試験を実施しており、日本でもサービスインを計画している。現在は日本の総務省に、どの帯域を使えるか打診している段階だ(2月9日の記事参照)。

 もっとも日本では、2006年にも携帯向け放送サービスとして「1セグメント放送」が始まるほか、衛星を利用したモバイル放送サービス「モバHO」もある(特集記事参照)。こうしたサービスと比較して、QualcommのMediaFLOはどこが優れているのか。同社MediaFLO担当のシニア・ディレクター、オマール・ジャベード氏に聞いた。

Photo Qualcommシニア・ディレクターのオマール氏

どこが長所なのか?

 MediaFLOの魅力の1つは、映像のクオリティだ。動画ファイルにもよるが、H.264のコーデックで350kbps程度、蓄積型放送では数Mバイト単位の映像を配信する。画面サイズはQVGAで、フレームレートは30fps。音声伝送には、auの「着うた」にも採用されたAAC+を採用する。

 実際に試作機のデモを見ると、本番前のため15fpsの映像だったが確かに高品質。MediaFLOはダウンロード配信にも対応しているため、ファイルによっては電波状態に影響されずこのままのクオリティを再現できる。

Photo 同社製試作機を使ってのデモ。スケジュールに沿って配信される映像を、選択して視聴する。画面はフルスクリーン表示も可能

 オマール氏はまた、MediaFLOは携帯向けに特化しているため低消費電力を実現するとコメント。日本の地上デジタル放送規格「ISDB-T」や欧州などのデジタル放送規格である「DVB-H」、それに韓国などで採用されている地上デジタル放送規格「T-DMB」や衛星デジタル放送規格「S-DMB」と比較しても、それは顕著だという。

 「(標準的なバッテリーでは)ISDB-Tの映像再生時間は不明だが、T-DMBは最長2時間、S-DMBも最長1.2時間。DVB-Hはデモ段階で、2時間となっている。一方MediaFLOは最大3.8時間。消費電力は毎時900ミリアンペアだ」

 S-DMBやDVB-Hが非対応の、QoS(伝送品質保証)にも対応している。さらにISDB-Tが非対応のダウンロード配信が可能で、チャンネル切り替えが1.5秒と比較的高速。こうした条件を兼ね備えるサービスとなると、MediaFLOしかないという。

 「もう1つ重要なのは、全国同一の周波数帯を利用したサービス展開ができること。ISDB-Tなどは、地域ごとに周波数が異なったりする。このため、MediaFLOでは基地局のコストが比較的少なくてすむ」

何が見られるのか?

 技術面で優れた点も多いMediaFLOだが、現時点ではサービスの具体像が見えてきていない。米国ではストリーミング映像が15〜20チャンネル、音声を最大10チャンネル、ダウンロードチャンネルが20から40程度とされているが、日本でどうなるかは不透明だ。

 「日本のコンテンツプロバイダに、まずは『こういう放送技術がある』と知ってもらうことが必要」(同氏)。知名度を上げることが先決との見方だ。

 それ以前に、そもそも帯域を獲得できるのかという問題もある。オマール氏は「まだ(帯域割当の)調査を始めた段階」と率直に話す。放送用の帯域が利用できるのか、またMediaFLOが“放送法”を適用される技術なのかどうかも、明確に決まってはいないようだ。

 携帯向け映像配信は、auのEZチャンネルなども含めて今後競争が激化すると見られる分野。オマール氏は「要素としては、さまざまなサービスと競合する可能性がある」と話す。ただMediaFLOは各技術を統合したものだコメント、映像配信市場のシェア獲得に向けて意欲をみせた。

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