ついにベールを脱いだ米MotorolaのiTunes携帯「ROKR」(ロッカー)(9月8日の記事参照)や英Sony Ericsson製のウォークマン携帯「W800i」(8月15日の記事参照)が注目を集めるなど、音楽携帯ブームが本格化している。やや出遅れた感が否めないNokiaは、この分野では米Microsoftを味方につけ新ブランド「Nseries」(5月10日の記事参照)の投入で対抗する。同社音楽部門担当副社長ヨナス・グスト氏に戦略を聞いた。
ITmedia 米Motorolaが米Apple Computerと組んだ「ROKR」(ロッカー)がついに発表されました。この端末についてどんな感想をお持ちですか?
グスト氏 Nokiaは自社端末を、1社のサービスプロバイダーと結びつけません。ここがMotorola/Appleとの大きな違いです。我々はMicrosoftと提携して展開しますが、PCでは「Windows Media Player」(WMP)を標準ツールとします。WMPでは、MSN Music以外にもさまざまな音楽サービスを利用できます。Nokiaユーザーは、特定のサービスから音楽を購入するのではなく、選択の自由があります。
たしかにAppleのiTunes Music Storeは米国で大きなシェアを持つトップブランドです。しかしデジタル音楽配信は裾野が広がり、さまざまなサービスが出てきています。音楽ストアだけではなく、ビジネスモデルも多様化してきました。例えばYahooの場合、一定の額を払えば好きなだけダウンロードできるという購入形式です。今後数カ月、数年で、さまざまなサービスやビジネスモデルが出てくることでしょう。
市場全体にとっては、MotorolaとAppleの発表はポジティブなサインです。顧客には選択肢が広がることを意味し、ユーザーの啓蒙、さらには市場拡大とつながるからです。
ITmedia モバイル向けのオンライン音楽配信はどのように推移するのでしょうか?
グスト氏 PCの世界で進行している音楽ダウンロードを置き換えるのではなく、補完するものとして進化するでしょう。携帯電話で音楽を購入するのと、PCの前で腰を据えて音楽を購入するのとでは、ユーザーのモチベーションが違います。モバイルの場合はより自発的で、たまたま耳に入った音楽を瞬間的に欲しいと思って購入することも考えられます。アジア市場では瞬時に音楽が買えるような音楽サービスも出てきていると聞きます。Nokiaが同期機能を重要視する理由もここにあるのです。
ITmedia 音楽携帯が通信オペレーターに与える影響は?
グスト氏 通信オペレーターは3タイプに分けられます。まず音楽をARPUを生むものとして位置付けているメガオペレーターがあります。Nokiaはこのような動きをサポートしており、オペレーターが提供する音楽サービスを端末に事前統合して提供している例もあります。
2つ目はブランド強化の要素として音楽を捉えているオペレーター。3つ目は、MotorolaおよびAppleと組んだCingularのように、ある特定の音楽サービスを利用するオペレーターです。いずれにせよどのオペレーターも、音楽は収益増加につながると見ています。
ITmedia 現在、音楽ファイルにはさまざまなフォーマットがあります。これがデジタル音楽業界全体にどんな影響をもたらすと思いますか?
グスト氏 コーデックとして、MP3、AAC、WMA、M4Aがあり、DRM(デジタル著作権管理)では、OMA DRM、RealPlay DRM、Microsoft DRM、さらにソニーのATRACなどがあります。ユーザーは同じコンテンツに重複して料金を払いたくないと思っているはずです。大切なことは、業界全体で取り組んで相互運用性を確保することです。Nokiaでは、これらフォーマットをできるだけ多くサポートします。
ITmedia NokiaはこれまでRealPlayerを搭載してきましたが、「N91」では、独自の音楽再生プレイヤーに変更しました。この背景を教えてください。
グスト氏 RealNetworksとの提携は継続しており、「N91」(4月28日の記事参照)では動画再生プレーヤーとして「RealPlayer」を搭載します。音楽再生プレーヤーはNokiaのソフトですが、もちろんSeries 60インタフェースの上に、ほかのアプリケーションをダウンロードすることもできます。
Nokia独自の再生プレーヤーが必要だった理由は2つあります。まず1つ目は、音楽携帯のユーザービリティが、ほかのメニュー構成と同じであるべきという考え方。“再生ボタンはどれか、上ボタンを押すとどうなるのか”など、Nokia端末で慣れ親しんだ操作で音楽機能を使えるようにするためです。2つ目の理由は、ほかの機能との統合。“音楽を写真と一緒に利用する、カレンダー機能に取り込む”といった用途に対応するためには、自社開発する必要がありました。
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