“使いやすさ”と“かっこよさ”の両立を目指す──「2画面携帯」が生まれるまでCEATEC JAPAN 2005

» 2005年10月07日 23時17分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 街中の公衆電話が減ってきたこともあり、携帯電話が生活必需品としての存在感をさらに強めている。今後は“年齢や性別、能力に依存しない使いやすさを備えた携帯電話”、いわゆるユニバーサルデザイン携帯電話の需要がこれまで以上に高まることが予想される。

 ユニバーサルデザインをうたう携帯電話は、これまでにもいくつか登場している。しかし特殊なユーザーインタフェースやボディデザインから、“一般ユーザーの機種変更候補”には、なかなかなり得なかった

 「どんな人にも使いやすくて、普通に持っていてかっこいい携帯電話を開発できないか」──こうした想いから生まれたのが、NTTドコモと三菱電機が共同開発している「2画面ユニバーサルデザイン携帯」(9月28日の記事参照)だ。

 CEATECに出展された「2画面ユニバーサルデザイン携帯」の試作機

 企画・開発を手掛けるNTTドコモ プロダクト部第三商品企画担当の吉田岳人氏と三菱電機モバイルターミナル製作所 開発部 先行技術企画担当課長の冨森健史氏に、端末の特徴と開発の意図を聞いた。

 NTTドコモ プロダクト部第三商品企画担当の吉田岳人氏(右)と三菱電機モバイルターミナル製作所 開発部 先行技術企画担当課長の冨森健史氏(左)

“普通のかっこいい携帯を使いたい”という声に応える

 端末開発に当たっては、ドコモがユーザービリティやユーザーのニーズの把握、三菱電機が技術面を担当。ドコモは、ユニバーサルデザイン携帯にどんな機能があるべきか、どんな問題があるのかを探るため、かなり早い段階から幅広いユーザー層に対してヒアリングを行ってきたという。

 「高齢の方や視覚や聴覚、四肢に障害がある方など、いろいろな方に“どんな携帯電話が欲しいのか”を聞いてみたところ、“普通の人が使っているような、折りたたみ型のかっこいい携帯が欲しい”という声が多かった」(吉田氏)

 こうした要望に応えるべく“スタイリッシュなユニバーサル携帯”というコンセプトを打ち出した。「障害者であることを感じさせない端末であると同時に、普通の人が機種変更の候補にする端末を作りたいと思った」(同)

 背面にはLEDのドットを配し、着信や時刻を表示できるようにした。ドット数が多いため多彩なアニメーション表現が可能。鏡面仕上げのボディを通してドットが光る様子はなかなかスタイリッシュ

 このコンセプトを受けて三菱電機側が「2画面携帯の中に、この端末のコンセプトやユーザーのニーズをどのような形で反映させればいいのか、どんなユーザーインタフェースが最適なのか」(冨森氏)を提案したという。

 最初のプロトタイプは、既存の端末の中にタッチパネルを入れたものだったと冨森氏。「ユーザビリティ調査を行い、実際にいろいろな人に使っていただいた。その評価を反映させたのが、今回のCEATECに参考出展したモデル」(冨森氏)

キーボード部分をカスタマイズできるメリット

 ユーザーインタフェース面では、ボタンの数や機能が固定されたキーボードではなくタッチパネルを採用することで、習熟度やニーズに合ったキーレイアウトを選べるようにした。

 「(操作に不慣れな人や障害を持つ人でも容易に使えるように)“3つのボタンでどんな操作もできるようにしよう”という点に特化しているのが特徴。ただし、ボタンが少ないとたどる階層が増えるため、一般ユーザーには操作が煩わしくなる。こうしたユーザー向けには6つボタンのメニューを用意するなど、カスタマイズ製を重視した」(冨森氏)

 液晶下部にある切り替えボタンを押すと、用途や習熟度を考慮して用意された7種のメニューから好きなメニューを選べる。タッチパネルディスプレイがダイヤルボタンやソフトキーの役割を果たすため、使いたい機能が表示されたボタンを押すだけで任意の機能にアクセスできる。フォーカス移動がなく、必要のないボタンも表示されないため直観的な操作が可能になるわけだ。

 試作機では7種類のメニューが用意され、切り替えボタンを押すたびに切り替わるようになっていた。選んだメニューは保持され、次回に使う際に同じものが起動する


 一般的なユーザーにも機種変更の候補として選んでもらえるように、7種のメニューのほかに通常の携帯電話と同じインタフェースも用意した。ただしディスプレイサイズの関係上、テンキーとソフトキーは切り替えて使う。手書きの文字入力機能も備え、ひらがなやカタカナ、英数字、漢字を認識。試したところ、「藤」のような細かい文字も認識した

“ユーザーが不安にならない”ユーザビリティを

 使い勝手の面でも、“ユーザーが不安にならない”ような工夫が盛り込まれた。1つは「3つボタンメニュー」の操作時のインタフェースに「『戻る』ボタンを入れている」点だ。

 「ユニバーサルデザインの7原則の1つに、『Tolerance for Error』がある。エラーに対する耐性という意味で、操作を間違えたときに元の状態に戻せるのが優しさという考え方。(3つボタンのインタフェースでは)操作を間違えても、「戻る」ボタンを押せば必ず前の状態に復帰でき、それが使う上での安心感につながる」(吉田氏)

 メール作成の流れ。大きな「戻る」ボタンが表示される


 通話操作の流れ。その時々に必要なボタンしか表示されないため、操作に迷わない

 もう1つは、要所要所に操作時のステータスが表示される点。「今、自分がどういう状態に置かれているのかを認知できないという障害を持つ方もいる。操作フローを表示することで、次に何をすればいいのかを伝えられる」(吉田氏)。こうしたステータス表示はWebでのショッピングや航空券の発券などの際にも表示されるもので、携帯に不慣れな初心者ユーザーにも便利な機能だ。

 上の画面にステータスや操作フロー、下の画面にボタンが表示される


 写真閲覧はタッチパネルが活きるところ。見たい写真にタッチすると上の画面に拡大表示される


タッチパネルの固定観点を変える“クリック感”

 タッチパネルは、クリック感がないという先入観で見られがちだと冨森氏。そのため2画面携帯のタッチパネルには専用の振動デバイスを入れ、画面に触れるとボタンを押したような反応が返る仕組みを組み込んだ。

 「できるだけ押した部分だけが振動するよう細かなチューニングを重ねている。構造面のいろいろなノウハウがないと、ここまで振動しない」(冨森氏)

 「来場者に実際試してもらったところ、これまでのタッチパネルのイメージを覆してくれるくらいの反応を見せていただいている。タッチパネルのデメリットを解消できるという手応えを感じている」(吉田氏)

今までと違う顔を持つ携帯

 CEATECへの出展は、来場者に実際に試してもらい、感想や意見を聞くという狙いがあった。吉田氏、冨森氏ともに製品化に向けた大きな手応えを感じられたという。

 「携帯電話は、機能競争が激化した時代を経てデザインに落ち着いてきて、だいたいできることはやり尽くした感があった。そんな中でこの携帯は、2つのディスプレイという全く新しい顔を持っている。端末を開いたときの顔が今まで見たことのないものなので、そこに大変興味を持っていただいている。タッチパネルについても、文字が大きくて操作しやすいというところで『実際にいつ出るのか』と聞く方がほとんど」(吉田氏)

 「背面にイルミネーションを入れることで、聴覚障害者の方にも使っていただけるし、一般ユーザーの方にも興味を持っていただける。久々に新しさを感じていただける携帯電話なのでは」(冨森氏)

 ユニバーサルデザインを標榜している以上、できるだけ多くの人に使ってもらえる携帯に仕上げたいと吉田氏。「3つボタンで携帯電話に慣れるところから始めて、最終的には普通の携帯電話と同じようなインタフェースで使いこなせるまでに、徐々に操作の経験を高められる。幅広く使っていただけるインタフェースが備わっていると自負している」(吉田氏)

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